著者
呉 軍
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.11-20, 1999-09-30 (Released:2018-05-08)

本研究の目的は,学校体育研究同志会の球技研究史の考察を通して,一般的に適用するスポーツ素材の教材化の方法を検討することと関連する課題を確認することである。同志会の研究上の出来事より,その研究史を4段階に分け,それぞれの段階の教材化についての「解決したい問題」,「特徴」,「具体的教材例」の考察を行った。その結果,以下の点が明らかになった:第一に,すべての子どもに視点を置き,子どもの発達状況,関心,意欲を出発点として,基礎技術及び指導の系統を考えていること。第二に,教えたい内容を確実に子どもに習得させるために,子どもの発達状況や学習の現状を考えると不都合と考えられる要素を制限し,再構成するという視点が貫ぬかれている。第三に,スポーツの共通的技術要素を取り出し,新しい球技を創造するという視点が内包されている。第四に,グループ学習を通じて,技術指導と民主的集団づくりを統一するという課題を一貫して追求する視点である。それでも,「戦略・戦術」を中核とする教科内容と捉える授業実践において,教師は,球技の「戦略・戦術」とはどういうものか,どのように提示するか,また,「戦略・戦術」を実行するための運動技能をいかに習得するかが課題として残っていると思われる。