著者
李 瑾 周 霏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.896-901, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
18

多くの水害ハザードマップでは、紙面での表現が限定されているため、浸水想定区域内のみを示すケースが多い。しかし、浅い浸水想定区域でも、最大流速が速い場合は、避難が困難になる。住民が正確に避難判断を行うためには、最大浸水深、最大流速、浸水到達時間などの複数の情報を掲載することがよいが、すべての住民に高度な情報解釈能力が備わっているとは限らない。ハザードマップを判読する際に、正しい情報を読み取れにくいことから、誤解を招く可能性がある。本研究では、いすみ市ため池(名熊ダム)ハザードマップ作成を事例として、最大浸水深、最大流速、浸水到達時間を掲載しつつ、数値情報への理解が困難な場合でも、より現地に適した災害リスク情報を反映するバッファゾーンの設定を試みる。バッファーゾーンの設定は、簡易氾濫解析データをもとに、国土地理院で公開されている基盤地図情報を用いて、現地調査を行い、浸水想定区域が広がると思われるケース、浸水想定区域が広がらないと思われるケース、標高の観点から簡易氾濫解析データの精度の確認、浸水想定区域の浸水深を消去したケース、既往豪雨時の浸水実績の反映の5つの視点から、現地調査の結果から浸水想定区域の妥当性を判断した。