著者
大竹 哲士 岸本 達也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.263-269, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
10

首都圏の鉄道駅のエスカレータでは、右側を歩き左側で立ち止まって利用することが一般的である。この研究は鉄道駅のエスカレータにおけるそのような歩行者流動の詳細を明らかにすることが目的である。観察調査を首都圏の乗降客数の多い8つの駅にて行った。分析の結果、通過人数が増えると歩行者が増えること、レベル差が大きいと歩行者が減ること、高速エスカレータ、併設して階段があるエスカレータでは歩行者が減る傾向があることがわかった。エスカレータの単位あたりの通過人数である流動係数を算出し、また全員が立ち止まって利用したと仮定したときの流動係数を算出して、その2つを比較した。その結果、多くのエスカレータで全員が立ち止まって利用したときのほうが運搬効率が良くなる可能性が高いことが判明した。
著者
石原 洋平 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.829-834, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
5

近年、わが国では公共交通が見直されつつあり、公共交通のさらなる利用を求める声も高まっている。公共交通の利用を促すためには利便性の向上が不可欠であるが、運行本数の増加などの施策を直ちに実行することは難しい。そこで、運行間隔や所要時間だけでなく出発時刻の偏りといった要素まで考慮して、現状のダイヤをできるだけ改善することが重要となる。本研究では、単独もしくは複数の系統を利用できる状況に注目し、先述の要素をすべて考慮できる指標である「期待所要時間」を用いて、都市内公共交通のダイヤを分析する。そして、分析から得られた知見に基づいて実際の都市内公共交通のダイヤを改善し、改善前後の期待所要時間を比較すると同時に、期待所要時間が増加した場合はその原因を明らかにする。
著者
松田 南 小谷 通泰 松中 亮治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.799-804, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
5

本研究では、わが国で初めての本格的な導入事例である富山市のLRTを対象に、利用者へのアンケート調査を実施し、交通行動への影響やまちづくりへの効果に対する利用者の評価意識を明らかにすることを試みた。この結果、LRTの利用者は、旧富山港線等からの移行者が最も多かったが車からの転換者もみられ、その選択理由として、待ち時間の短さ、駅へのアクセスのしやすさ、運行時間帯の長さ、乗降のしやすさ、乗り心地のよさなどが評価されていた。開業後、外出頻度を増加させた利用者がみられ、車を使えない利用者でその割合が大きく、また車の利用頻度を減らして、外出頻度を増やした利用者もみられた。こうした交通行動の変化は、高齢者、自由目的の外出で顕著であり、LRTの利便性、快適性の高さがその要因として寄与していた。さらに導入後のまちの変化としては、まちのシンボル化・バリアフリーの改善などの点で満足度が高く、大半が全体としてまちが良くなったと答えており、まちづくりへの効果を高く評価していた。さらにCVMにより、LRTの運行を維持・継続するための寄付への支払い意思額を尋ねた結果、運賃に加えて、一定金額の支払いに対し肯定的な意向が示された。
著者
鈴木 雄 日野 智
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.690-696, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
9

本研究では,地方都市中心市街地にある駐車場の無料時間について取り扱った.駐車開始からの駐車無料時間の長さによる中心市街地への訪問行動や,中心市街地での滞在特性について分析を行っている.分析のため,中心市街地の訪問者に対しての意識調査と,追跡調査を実施した.追跡調査の結果,駐車無料時間が30分から45分に延長されても,滞在時間や訪問店舗数が増えない結果となった.これは,駐車無料時間が延長されたことの周知不足と,駐車無料時間が15分しか延長されていないことが原因と考えられる.意識調査の結果,駐車場選択における駐車無料時間の効用値が最も高くなった.また,駐車無料時間が60分に拡大されると大幅に訪問意識が増える結果となった.これらのことから,中心市街地への訪問回数や滞在時間を増加させるためには,駐車無料時間延長の周知を増やすとともに,駐車無料時間の60分への延長を検討することが望ましいと考えられる.
著者
北崎 朋希
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.640-645, 2017

1998年、ニューヨーク市は歴史的建造物の保全活用を目的として、ミッドタウン特別地区シアター街区の容積移転制度の拡充と負担金制度の導入を行った。この容積移転制度の拡充によって、従来の手法では容積移転が困難な場所にあった劇場を中心に59.7万平方フィートの未利用容積が移転された。また、この負担金制度は、劇場から開発権を購入したデベロッパーから859万ドルを集めた。この資金は、劇場の保全を直接支援するのではなく、新規顧客の開拓や新たなミュージカルやストレートプレイの政策支援に活用されている。これは、シアター産業が安定的に成長することで、劇場所有者が施設の保全や活用に自然と注力するというサイクルを生み出すという考えに基づいている。
著者
阿部 憲太 姥浦 道生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.421-428, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
6

近年、風営法の届出を出していないが、外見上・用途上は所謂'ラブホテル'として認識される、いわゆる'疑似'ラブホテル等が発生してきている。これら擬似ラブホテル等を自治体が問題視する中で、ラブホテル建築規制条例(以下、条例)を定めることで擬似ラブホテル等を規制する動きが出てきた。本研究では、条例によるラブホテル等に対する立地規制に関する規制内容を把握すると共に、その立地規制の効果と課題を明らかにすることで、今後同様の立地規制を検討する際の有用な知見を得ることを目的としてる。研究の結果として、条例により条例ラブホテル等に対してどの程度立地規制をかけようとも、条例の適用外となる条例外ラブホテル等が発生し、結局はラブホテル等の需要がある、若しくは需要を生み出したいと事業者が考える場所にラブホテル等が立地してしまうという実態が明らかになった。一方、条例の対象施設として該当すればその立地のコントロールは可能であるので、条例ラブホテル等を適当に規定することが重要である。以上より、条例外ラブホテル等が発生する要因を明らかにすることが必要である。
著者
北畠 拓也 河西 奈緒 土肥 真人
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1089-1094, 2014

オーストラリアNSW州では、ホームレスの人々の「公共空間にいる権利」を保障するプロトコルが存在し、行政機関が部門横断的にこれに批准している。これは、2000年のシドニー五輪を契機に締結され、現在でも存続している。本研究では、このプロトコルの成立過程とともに、現在の、特にシドニー市周辺における現場レベルでの運用実態を明らかにすることを目的とする。文献調査および現地での行政機関、NGOへのインタビュー調査から、プロトコルの成立過程およびシドニー五輪における働き、現在の現場レベルでのホームレス支援団体・公共空間管理団体両者にとってのプロトコルの効果と影響が明らかとなり、ホームレス政策においてホームレスの人々の「公共空間にいる権利」を認めることの意義が見出された。
著者
齊藤 広子 中城 康彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.820-826, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
13

定期借地権マンションの立地、建物概要や借地契約・費用負担の実態、管理上の課題とそれへの対応実態などを明らかにした。定期借地権マンションは都市のコンパクト化や土地入手困難地域での立地、公的主体所有の土地の有効利用、さらに住戸面積のゆとりのあるマンションの供給に一定寄与している。しかしながら、供給時の設定された法的関係、それに対する対価の設定、維持管理計画においては根拠が不明確なものがあり、現行法においての課題がある。さらに、契約関係が明確になっていない、契約内容が承継されていない、解消に向かってのプロセスプランニングがない、底地の買取の対応策がないという問題がある。また、借地契約関係への管理組合・管理会社の関与が現行法では困難と考えられているが、実態では多くの関与があり、関与が求められている。こうした実態を踏まえ、今後の課題として管理組合・管理会社の借地契約関係の関与の立法的対応、利用期限のある建物の計画修繕や解体準備のあり方、底地の買取制度等を検討し、供給時から体制を整備することが都市部の土地の有効利用につながると考えられる。
著者
蓮香 文絵 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.973-978, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
7

本研究の目的は,山の見え方と校歌分布との関係を,学校からの山の見え方の数学的な分析により把握することである.校歌には,地域の自然環境が多く謳われ,特に,高い山や形容が特異な山は地域のシンボルとして地域の文化に根付いている.本研究では,山の見え方と山が最も高く見える範囲を示すモデルを設定する.そして近い山よりも,高く見える山を校歌に謳うことを示す.
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-6, 1992-10-25 (Released:2019-12-01)
参考文献数
13

THIS PAPER ELUCIDATES THE CHARACTERISTIC OF THE TOWN NAME IN SEOUL UNDER JAPANESE RULE IN COMPARISON WITH THAT IN PYONGYANG AND TAIPEI. THE AUTHOR POINTS OUT SOME“SUCCESSION” THROUGH THREE STAGES(LEE DYNASTY ERA, JAPANESE COLONIAL ERA AND INDEPENDENT ERA) WITH ANALYZING CHANGES OF THE TOWN NAME, RELATION BETWEEN THE TOWN NAMES IN EACH STAGES AND PHYSICAL DISTRIBUTION.
著者
吉城 秀治 辰巳 浩 堤 香代子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.753-760, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
7

我が国における路線バスは、はじめて利用する路線やそもそも普段からバスの利用に慣れていない方にとってはしばしば使いにくい公共交通機関となってしまっている。その原因の一つとして、バスの乗り方にはローカル性が存在することが考えられる。さらに、バスの利用に関する基本的な情報をはじめこの多様化した乗り方については必ずしも十分に案内されているとは言い難い状況にあるなど、公共交通機関として、誰にでも利用しやすくわかりやすいバス利用環境の創出が求められている。そこで本研究では、全国のバス事業者を対象にアンケート調査を実施することで全国のバスの乗り方の状況について把握し、さらに路線バスの乗り方並びに案内内容と地域性の関係を明らかにした。
著者
八尾 修司 山口 敬太 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1152-1159, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
46

本研究は,総合大阪都市計画(1928)における公園系統計画の成立過程について,関与した主体の動向に着目し明らかにするものである.大阪市区改正設計(1919)の認可後,大阪府都市計画課により,さまざまな種類の公園を公園道路により連絡させる公園系統計画が,都市計画放射路線とあわせて考案された.これは,大阪府兼都市計画大阪地方委員会技師であった大屋霊城が,公園道路のネットワーク機能の重要性に着目し,郊外の大公園と都市中心部を大道路により結ぶ「放射分散式公園系統」という考えを反映したものであった.ここで考案された公園計画案は,関東大震災後,避難路としての機能を付加した道路公園の整備という拡張点がみられたが,財政状況から多くが成案には至らなかった.第二次市域拡張(1925)後には,府が大公園の開設,市が主に市内小公園の経営にあたるという「府市共同」の体制がとられ,市域拡張部分の公園計画は大阪府都市計画課案が引き継がれることで,総合大阪都市計画公園計画として成立した.
著者
金森 有子 有賀 敏典 松橋 啓介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1017-1024, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
12
被引用文献数
4

現在,日本全国で空き家率の増加が大きな社会問題となっている.本研究では,空き家率の増加につながる社会的要因を重回帰分析により明らかにするとともに,それに基づき2035年までの空き家率を推移を推計した.推計の際には,自治体レベルで容易に利用可能であるデータを用いることで,自治体別の空き家率の推計が可能になることを意識した.推計の結果,住宅の着工と滅失のバランスが現状ペースのまま続いた場合,2035年には日本全国の空き家率が約20%に達し,都道府県別の空き家率が広がることが明らかになった.また,着工と滅失のバランスを見直し,各都道府県が2023年には余剰着工率が0となるようにした場合でも,2035年には全国の空き家率は13%程度となり,依然として山梨県では空き家率が16%近くになることが推計された.
著者
小嶋 一樹 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1313-1319, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
11

近年、地上設置型太陽光パネルの設置行為を条例に明文化し立地や意匠形態の適正化を図る自治体が増えている。本研究ではこれら116の条例を対象に、立地規制および景観保全への有効性を明らかにすることを目的に当該自治体へのアンケート調査を実施した。その結果、土地用途や都市計画法上の区分に関係なく多くの自治体が「眺望景観への影響」、「立地場所」を地上設置型太陽光パネル設置の課題点として挙げた。条例の運用効果では、60.7%の自治体が立地状況の把握が可能になった点を挙げたが、立地規制・誘導は24.6%と比較的低い。また、景観保全への効果は、設備の規模が大きいほど効果の認識は薄れる傾向にある。修景策のうち、隣地や道路からのセットバック距離やフェンスの種類・色彩、植栽といった付加的な修景策の順守度合と景観保全効果への評価が高い自治体の多くは、行政の内部資料としての指導手引きや専門家との協議制度を保有していた。そのため、景観保全には行政による景観の目標像や修景策の提示、専門家の派遣による技術的支援が有効であると考えられる。立地規制については、上位法の整備を望む回答が40.5%の自治体から聞かれ、上位法の整備の検討も必要と考えられる。
著者
西成 典久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.241-246, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
14

本論文では、都市計画思想としての“広場”に着目する。 1969年新宿西口広場は人々が集まり互いに交歓し、社会にむけて情報発信する場となった。これは、計画側にとって予期しえない出来事であった。警察が西口広場を西口通路と名称変更することで、結果的に人々の行為を規制した。これら一連の出来事が当時の新聞紙面を賑わした。これら西口広場での人々の行為や議論を分析することで、当時の都市における“広場”について以下3つの側面が浮き彫りとなった。 1)「西口広場」という名称を「西口通路」と変更することは、西口駅前は通行のための空間である、という単一機能を明示し管理することであった。名称変更がかえって、機能を明確に捉えきれないという“広場”の側面を照射したことになる。 2)公園との対比において、“広場”は不特定多数の人々が離合集散する(交通の結節点)という側面が照射された。当時はそれが駅前にあって公園にはない性質であることが浮き彫りとなった。 3)日比谷公園での集会の失敗を通じて、“広場”が施設化され管理された既成の空間ではなく、集まった人々の自発的な行為によってはじめて意味を持つという側面が浮き彫りとなった。
著者
乾 康代
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.507-512, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は,1954年に始まる原子力政策の黎明期につくられた原子炉立地審査指針や東海村を対象とした整備計画について分析した。主な結果は以下のとおりである。1)東海原子力発電所は,統一基準のない時期に,個別審査により,米軍射爆場隣接地という立地上の問題を残して1959年に設置許可された。2)1964年に作成された原子炉立地審査指針は、原子炉周辺の人口抑制条件を求めたものの,設置審査目的を超えてその実現手段は示せなかった。3)1959年,原子力委員長となった中曽根康弘は原子力都市計画法を構想したが,法成立には至らず,その後,代わって,原子力委員会部会が,原子炉をグリーンベルトと人口抑制の2地区で取り囲む3重構成を示す答申を出した(1964年)。4)しかし,翌1965年,答申を受けて茨城県が作成した地帯整備基本計画では,グリンベルトは一部のみの採用,人口抑制の2地区は採用されず,東海村の都市計画は不完全な形で出発することとなった。
著者
伊藤 亮 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1041-1046, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
13

第二次世界大戦において、全国各地で空襲による市街地火災延焼防止のため、建物を除却し空地を確保する建物疎開が行われた。全国279都市で実施され、61万戸除却された。各都市における建物疎開の実態を扱ったものとして、大都市である名古屋、京都、広島を扱った研究や地方都市である長崎市や旧徳山市を対象としたものは確認できる。その中で、横浜市の建物疎開の実態は明らかになっていない。そこで本研究は、第二次世界大戦時の横浜における防空計画を示した上で、建物疎開の実態を解明することを目的とする。そして現在、建物疎開跡地がどのように利用されているか把握する基礎とする。調査の結果、神奈川県立公文書館に建物疎開の実態を収録した文書が保管されていることが判明した。その文書を解読した結果、建物疎開として1944年2月から11回376箇所が指定され、除却面積は173ha、21,603戸に及んだことがわかった。そして建物疎開跡地は現在、道路として利用されているものが多く、磯子区の掘割川周辺には「疎開道路」と呼ばれる5つの道路が存在し、また現在の鶴見区の汐入公園は建物疎開跡地を活用したことが読み取れた。
著者
嘉名 光市 増井 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.685-690, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
24

本研究では船場センタービル建設における、事業手法検討段階で提示された数多くの基本構想(案)に着目し、その検討に至る経緯、および複数提示された案について、その内容を比較し、各案の考え方を示す。さらに、中層ビル案に決定した後の、建物の配置検討を行った実施計画(案)の変遷を把握し、船場センタービルの計画思想を明らかにすることを目的とする。基本構想(案)の段階では幹線道路を建設するにあたって、近代的なビルを建設する高層ビル案、中層ビル案に対し、既成市街地にはできるだけ手をつけずに幹線道路を通すトンネル案も存在した。また道路法の改正を必要としない平面街路案も存在した。これらの案は、通過交通を排除するという計画思想が共通していた。また、案の多くが再開発により市街地を刷新する計画思想であった。しかし、実施計画(案)の段階では、筋の連続性をできる限り残すための変更がなされ、隣接市街地との関係について一定程度の配慮する計画思想があった。具体的には、変更によって筋の連続性が保たれたこと、東西方向沿道に歩廊を設置したことが挙げられる。
著者
外山 友里絵 中村 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.343-348, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
15

本研究は、BRT(Bus Rapid Transit)を開発途上国大中都市に導入する際の課題を明らかにすることを目的とする。幹線輸送としての需要がありながらも、財源不足などの理由により軌道系を導入することが困難な開発途上国大都市において、専用道路を走行するバスをベースとした新しい交通システムであるBRTは注目に値する選択肢である。1974年に導入されたクリチバ市以降、近年では多くの都市で導入が進んできているが、計画段階の事例も少なくない。先行事例及び調査研究事例のレビューに基づき、クリチバ市、ボゴタ市、ジャカルタ市の3事例の分析が必要十分との判断のもと、現地調査に基づき比較分析を行った。結果として、専用道路や駅などの基盤施設の丁寧な設計が欠かせないこと、速達性、定時性、輸送能力などの指標の向上には、十分な基盤施設整備のもとでの運用面における工夫の導入が不可欠なこと、運用面での工夫等において情報通信技術が果しえる役割は大きく、費用効果をもたらす可能性があること、システムの性能向上に、人材教育面での投資が有用なこと、などが考察された。
著者
宋 俊煥 山崎 嵩拓 泉山 塁威
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1289-1296, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
17

全国の都市公園が更新期を迎える中、人口減少等に伴う自治体の財政難が深刻化している。そのため、コストを抑えながら再整備・維持管理に取組むことが重要であり、近年では民間事業者の参入が積極的に進められている。特に2011年の都市再生特別措置法改正による「都市利便増進協定」、2017年の都市公園法改正による「公募設置管理制度(Park-PFI制度)」を通じ、民間事業者が収益施設の設置管理を通じてパークマネジメントに関与する事例の増加が想定される。そこで本研究では、「設置管理許可制度」を用いた都市公園内収益施設を対象とし、パークマネジメントにおける設置管理事業者の関与実態を明らかにすることを目的としている。各自治体へのアンケート・インタビュー調査を基に設置管理事業者の導入による公園維持管理負担の低減効果を整理した上で、公園のマネジメント体制を主体間所有関係(4パターン)、維持管理体制(7パターン)、利活用体制(7パターン)に整理した。更に指定管理者と連携団体の有無に応じて調査対象施設を分析した結果、4つの分類別にマネジメント体制が異なり、それにより求められる設置管理事業者の役割が変化することを明らかにした。