著者
和木 美玲 佐々木 剛
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌 (ISSN:21882851)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.78-114, 2011-03-15

平成23 年度より施行される新しい小学校学習指導要領はPISA の結果等を受け,これからの理科の科目は,学習者が主体となり経験や体験に基づき問題に取り組むことを通して,科学的に考える力を養い,理科を学ぶことの意義や有用性を実感することが重要視されている。また,水圏環境教育学研究室では,地域の自然を活用した水圏環境教育に取り組んでおり,大森のふるさとの浜辺公園において体験活動とテキスト学習を複合したプログラムを行うことで,児童に地域自然への興味関心が高まり,環境への意識の芽生えが確認された。さらに,魚類図鑑作成のプログラムでは,魚類調査を通して地域の自然を学ぶ活動を通して,地域の市民が参加して生物を調査することには,環境啓発に重要な道徳教育ならびに自然科学教育の機会があることが確かめられた。このような結果をふまえ,本研究では,「地域の自然を調べまとめる「生きものカード」作りを通して,主体的な学びの意識と科学的な考え方の育成をはかる」ことを目的とした継続的な水圏環境教育プログラムを実施し,アンケート調査やワークシートの記述,及び会話による分析から,参加児童の科学的思考の変化を検証した。平成22 年5 月23 日から6 月13 日の1 ヶ月間毎週日曜日全4 回,名称を「ふるはま生きものクラブ」とし,大田区立大森海苔のふるさと館と協働して大森ふるさとの浜辺公園にて,近隣の小学校4 年生から6 年生を対象に水圏環境教育プログラムを実施した。実施にあたり,近隣の小学校6 校の協力により4 年生から6 年生にチラシを配布したところ,2 年生から6 年生まで13 名の参加児童を得た。ワークシートの記述やアンケート調査の結果から、参加児童が主体的に学ぼうとする様子や,本プログラムを通して次の探究心の芽生えが確認された。また、本プログラムが児童の次の探究心への土台づくりとなったことが推測された。今後は,科学的概念の定着の様子や学びのきっかけを得た児童が自ら定めた課題に取り組む様子について明らかにしていくとともに,地域の教育施設と連携した水圏環境教育プログラムの取り組みを持続的に行っていくことを課題とし研究を重ねていきたい。