著者
三輪 宏
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌 (ISSN:21882851)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-44, 2012-09-15

日本の釣り人口は2009年のレジャー白書によると2008年で1120万人といわれている。その釣り人が使うオモリは鉛製であり大量の鉛製オモリが釣りの現場で使用され,失われているものも多い。しかし,失われた鉛製オモリの多くは回収される事なく海底に放置されている。レクリエーションである釣りによって水圏中に多量に放置された鉛製オモリは,生態系に影響を与える可能性が高い。鉛の毒性は非常に強く,鉛の摂取による急性鉛中毒は脳疾患となって現れ,また,非常に微量でも連続して摂取すると中枢神経などに慢性中毒をおこす事が明らかとなっている。そのため,大気中や土壌における鉛の排出や移動に関しては世界的に厳しい規制が定められている。しかしながら,我が国においてはこうした毒性の強い鉛に対する認識が不足しており,鉛の知識や理解を含めた水圏環境リテラシーを高めるための水圏環境教育プログラムの開発が急がれる。
著者
山田 大介 佐々木 剛
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌 (ISSN:21882851)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-64, 2011-03-15

日本の水産教育は,水産の担い手を対象とした職業人教育を中心に行われ,水産業界の発展に寄与してきた。しかし,現在,水産物の価格や消費の低迷,魚食文化の衰退等水産に関わる諸問題が起きている。このままでは水産技術者と一般市民の水産に対する理解の隔たりが広がり,水産の未来が危惧される。そこで,水圏環境教育,中でも,一般市民の水産の理解を目的とした水産のリテラシー教育の推進が必要である。本研究では,多様な利点をもつ海藻(コンブ)に着目し,教材の開発及び学習会を行い,学習の記録を通して得られた学習意識や学びの広がりを明らかにし,本プログラム内で行った4 つの海藻教材のアクティビティがもたらす水圏環境教育の有効性について考察した。学習会は平成22 年7 月から9 月にかけて,計3 回実施した。具体的には,1 回目として平成22 年7 月23 日(以下,プログラム1)・24 日(以下,プログラム2)において,江東区深川スポーツセンターとの産学連携による小学校1 年生(28 名)を対象とした「深川っ子わくわく体験隊」の一環として学習会を実施した。さらに,2 回目として平成22 年8 月8 日,三陸鉄道㈱,さんりくESD 閉伊川大学校が主催した「三陸鉄道・特別列車で行くさかなクンと海の科学を学ぼう!!」内で,小学校1-6 年生24 名(19 組)を対象にプログラム1 及び2 を実施した。3 回目として平成22 年9 月12 日,岩手県宮古市が主催した「森・川・海体験交流事業『川の体験活動』」内で,小学校1-6 年生20 名を対象にプログラム1 及び2 を行った。各学習会に参加した児童の会話・映像データ及び児童が記入した学習の記録を基に考察を行った。これらにより,プログラム内のアクティビティは,諸感覚を使うことで自然事象に対する感性の醸成を促し,水産物としてのコンブの認識を強め,表現力の育成,環境教育で育成したい能力と態度の養成に効果があると考えられた。また,コンブを用いた生態系を学ぶための教材としての可能性が示唆された。しかし,各アクティビティの関連性に課題が残り,学習会後の児童の自発的な取り組みを促すプログラム作りが必要である。このような学習会が幅広く継続的に実施されることで,持続可能な海洋の利用につながることを期待する。
著者
和木 美玲 佐々木 剛
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌 (ISSN:21882851)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.78-114, 2011-03-15

平成23 年度より施行される新しい小学校学習指導要領はPISA の結果等を受け,これからの理科の科目は,学習者が主体となり経験や体験に基づき問題に取り組むことを通して,科学的に考える力を養い,理科を学ぶことの意義や有用性を実感することが重要視されている。また,水圏環境教育学研究室では,地域の自然を活用した水圏環境教育に取り組んでおり,大森のふるさとの浜辺公園において体験活動とテキスト学習を複合したプログラムを行うことで,児童に地域自然への興味関心が高まり,環境への意識の芽生えが確認された。さらに,魚類図鑑作成のプログラムでは,魚類調査を通して地域の自然を学ぶ活動を通して,地域の市民が参加して生物を調査することには,環境啓発に重要な道徳教育ならびに自然科学教育の機会があることが確かめられた。このような結果をふまえ,本研究では,「地域の自然を調べまとめる「生きものカード」作りを通して,主体的な学びの意識と科学的な考え方の育成をはかる」ことを目的とした継続的な水圏環境教育プログラムを実施し,アンケート調査やワークシートの記述,及び会話による分析から,参加児童の科学的思考の変化を検証した。平成22 年5 月23 日から6 月13 日の1 ヶ月間毎週日曜日全4 回,名称を「ふるはま生きものクラブ」とし,大田区立大森海苔のふるさと館と協働して大森ふるさとの浜辺公園にて,近隣の小学校4 年生から6 年生を対象に水圏環境教育プログラムを実施した。実施にあたり,近隣の小学校6 校の協力により4 年生から6 年生にチラシを配布したところ,2 年生から6 年生まで13 名の参加児童を得た。ワークシートの記述やアンケート調査の結果から、参加児童が主体的に学ぼうとする様子や,本プログラムを通して次の探究心の芽生えが確認された。また、本プログラムが児童の次の探究心への土台づくりとなったことが推測された。今後は,科学的概念の定着の様子や学びのきっかけを得た児童が自ら定めた課題に取り組む様子について明らかにしていくとともに,地域の教育施設と連携した水圏環境教育プログラムの取り組みを持続的に行っていくことを課題とし研究を重ねていきたい。
著者
山田 大介 佐々木 剛 ヤマダ ダイスケ ササキ ツヨシ
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-64, 2011-03-15

日本の水産教育は,水産の担い手を対象とした職業人教育を中心に行われ,水産業界の発展に寄与してきた。しかし,現在,水産物の価格や消費の低迷,魚食文化の衰退等水産に関わる諸問題が起きている。このままでは水産技術者と一般市民の水産に対する理解の隔たりが広がり,水産の未来が危惧される。そこで,水圏環境教育,中でも,一般市民の水産の理解を目的とした水産のリテラシー教育の推進が必要である。本研究では,多様な利点をもつ海藻(コンブ)に着目し,教材の開発及び学習会を行い,学習の記録を通して得られた学習意識や学びの広がりを明らかにし,本プログラム内で行った4 つの海藻教材のアクティビティがもたらす水圏環境教育の有効性について考察した。学習会は平成22 年7 月から9 月にかけて,計3 回実施した。具体的には,1 回目として平成22 年7 月23 日(以下,プログラム1)・24 日(以下,プログラム2)において,江東区深川スポーツセンターとの産学連携による小学校1 年生(28 名)を対象とした「深川っ子わくわく体験隊」の一環として学習会を実施した。さらに,2 回目として平成22 年8 月8 日,三陸鉄道㈱,さんりくESD 閉伊川大学校が主催した「三陸鉄道・特別列車で行くさかなクンと海の科学を学ぼう!!」内で,小学校1-6 年生24 名(19 組)を対象にプログラム1 及び2 を実施した。3 回目として平成22 年9 月12 日,岩手県宮古市が主催した「森・川・海体験交流事業『川の体験活動』」内で,小学校1-6 年生20 名を対象にプログラム1 及び2 を行った。各学習会に参加した児童の会話・映像データ及び児童が記入した学習の記録を基に考察を行った。これらにより,プログラム内のアクティビティは,諸感覚を使うことで自然事象に対する感性の醸成を促し,水産物としてのコンブの認識を強め,表現力の育成,環境教育で育成したい能力と態度の養成に効果があると考えられた。また,コンブを用いた生態系を学ぶための教材としての可能性が示唆された。しかし,各アクティビティの関連性に課題が残り,学習会後の児童の自発的な取り組みを促すプログラム作りが必要である。このような学習会が幅広く継続的に実施されることで,持続可能な海洋の利用につながることを期待する。