著者
和久 大介 穴田 美佳 小川 博 安藤 元一 佐々木 剛 Waku Daisuke Mika Anada Hiroshi Ogawa Motokazu Ando Takeshi Sasaki
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.144-150,

ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)はユーラシア大陸に広く分布する中型食肉目である。本種には11の亜種がおり,欧州亜種L. l. lutra,東南アジア亜種L. l. barang,中国亜種L. l. chinensis などが国内外の動物園や水族館で飼育されている。欧州の動物園や水族館にはA-line(L. l. lutra)とB-line(L. l. lutraとL. l. barangが交雑した可能性がある系統)という2つのlineが存在し,日本の動物園や水族館にも導入されている。本来は同じ亜種内で繁殖がおこなわれるが,日本では本種の個体数が少ないためA-lineとB-lineで繁殖がおこなわれている。実際にB-lineが東南アジア亜種の遺伝子を持っているか評価がおこなわれ,B-lineとA-lineの間に違いがあることが示された。ただし先行研究では,解析配列が307bpと短いことが問題として上げられる。本研究ではミトコンドリア(mt)DNA Cytochrome bの全長配列(1140bp)をA-line,B-line各1個体,中国亜種2個体から決定し,先行研究で決定されたB-lineの配列を含む4配列を加えて配列比較,系統解析をおこなった。その結果,A-line,B-lineそれぞれが特徴的な変異サイトを示し,系統解析では先行研究と同じようにB-lineは中国亜種とクレイドを形成し,A-lineは欧州亜種独自のクレイドを形成した。よって解析したB-lineのmtDNAは東南アジア亜種に由来する可能性がある。2015年現在,日本のB-line個体は全て本研究で解析したB-lineの子や孫である。亜種間交雑が示唆された国内のB-lineは,本種の繁殖・維持に活用できるが,A-lineや中国亜種の系統維持に活用することはできない。
著者
八木 孝司 佐々木 剛 尾本 惠市
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.137-147, 2006-03-20
参考文献数
31

日本を含む東アジアに主に分布するカラスアゲハ亜属各種の系統関係をミトコンドリアDNAのND5遺伝子部分配列によって解析した.その結果,カラスアゲハ亜属は2つのグループに大きく分かれることがわかった.第一のグループにはカラスアゲハ,クジャクアゲハ,ミンドロカラスアゲハ,タイワンカラスアゲハが含まれる.第二のグループにはミヤマカラスアゲハ,シナカラスアゲハ,タカネクジャクアゲハ,オオクジャクアゲハ,ホッポアゲハ,ルリモンアゲハ,カルナルリモンアゲハが含まれる.各グループの種間には斑紋の共通性があるわけではなく,グループ間にいくつかの斑紋が似た種の組み合わせが存在する.たとえば中国四川省のガラスアゲバとミヤマカラスアゲハ,北インドのクジャクアゲハとルリモンアゲハなどである.このことは2グループの分岐後にグループ間の種どうしで翅の斑紋の収斂が起こったと考えられ,平行進化の一例といえるかもしれない.各地度のガラスアゲバは4つのグループに大さく分かれることがわかった.すなわち第一はトカラ列島以北の日本列島・サハリン・朝鮮半島度,第二は奄美大島・徳之島・沖縄島産,第三は八重山諸島度,第四は中国大陸南部・台湾諸島産である.これら4グループのDNA配列の違いは,各々が種であるとしても妥当なほど大きい.また,カラスアゲハ原名亜種とクジャクアゲハのDNA配列,ミヤマカラスアゲハとシナカラスアゲハのDNA配列は同じかほとんど違いがなく,これらはそれぞれ同一種であることを強く示唆する.ネッタイモンキアゲハは幼虫と蛹の形態からカラスアゲハ亜属と分類されることがあったが,シロオビアゲハ亜属とすべきであることがわかった.
著者
加藤 顕 石井 弘明 榎木 勉 大澤 晃 小林 達明 梅木 清 佐々木 剛 松英 恵吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.168-181, 2014-06-01 (Released:2014-09-17)
参考文献数
176
被引用文献数
10 5

近年のレーザーリモートセンシング技術(LiDAR)の発展により,近距離レーザーを用いた森林構造の詳細なデータを迅速かつ正確に取得できるようになった。これまでは航空機レーザーによる研究が圧倒的に多かったが,地上・車載型の近距離レーザーセンサーが身近に利用可能となり,森林構造計測に利用され始めている。航空機レーザーデータから林分レベルでの平均樹高,単木の梢端,樹冠範囲,樹冠単位での単木判別,成層構造,経年的樹高成長を把握できる。一方,地上レーザーを用いることで,幹を主体とした現存量や正確な立木密度が把握できるようになった。これまで手が届かなく測定不可能であった樹冠を森林の内部から測定でき,人的測定誤差の少ない客観的なデータを取得できる。レーザーデータは森林の光・水環境の推定,森林動態の予測,森林保全などといった生態学的研究に応用されてきた。今後は,生理機能の定量化,森林動態の広域・長期モニタリング,森林保全における環境評価手法など,様々な分野での利用拡大が期待される。樹木の形状や林分の現存量を正確に計測できるだけでなく,様々な生態現象を数値的に把握できるようになることを大いに期待したい。
著者
佐々木 剛二
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.148-148, 2010

本発表では、ブラジルの人類学者エドゥアルド・ヴィヴェイロス=デ=カストロの略歴、及びその仕事の概要を紹介した後、彼の理論の核心となっている「ペルスペクティヴィズモ(perspectivismo)」の考え方について詳しく論じることによって、その思想的背景や理論的射程に言及し、関心を持つ日本語話者の研究者たちの議論の発展に資することを目指す。
著者
佐々木 剛 丹羽 英之 朝波 史香 鎌田 磨人
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1

徳島県の海岸マツ林において,小型無人航空機(UAV) から取得した画像をもとに Structure from Motion(SfM)を用いて林冠高モデルを作成し,マツ林の持続的管理にとって重要な林床の光環境を表す指数の推定を試みた。現地調査で取得した全天写真から求めた開空度が,UAVデータから高い精度で推定された。特に,開空度が30 %を超えるプロットの多くではサイズの大きなギャップが抽出され,マツの生育に適した明るい場所が抽出可能であることが示唆された。
著者
伏見 千宙 多田 雄一郎 増淵 達夫 松木 崇 菅野 千敬 岡田 拓郎 佐々木 剛史 丹羽 一友 町田 智正 三浦 弘規 後藤 俊行 黒坂 正生 鎌田 信悦 小高 利絵 矢郷 香
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.232-236, 2016-12-15 (Released:2016-12-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

当科にて救済手術を施行した口腔扁平上皮癌深部再発症例27例の検討を行った。救済手術後の1年生存率は75%,2年生存率は61%であった。無病生存期間は中央値10.9か月(2.6か月~61.3か月)であった。予後不良因子は術後病理断端陽性・近接および,原発巣亜部位が舌・口腔底・頰粘膜であった。原発巣再々発部位は,後方および副咽頭間隙が88%を占めており,後方の安全域の設定,副咽頭間隙郭清も考慮すべきと考えられた。
著者
佐々木 剛 谷村 厚子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.34-42, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
36

日本における入院精神障害者に対する早期作業療法の既存の研究結果を要約し,今後の研究や実践の示唆を得るためにスコーピングレビューを実施した.データベース検索とハンドサーチにて早期作業療法に関する事例研究,介入研究計14論文を抽出し分析した.早期作業療法では精神症状,作業遂行,認知機能の評価の利用が多く,認知心理機能,健康管理能力,日常生活活動,社会生活適応能力の改善を目的に介入が実施されていた.主な成果として精神症状や認知機能,機能的自立度および動機付けの改善が示された.一方で,集団プログラムの目的が不明確な報告が多いこと,作業に関する成果報告が乏しいことも明らかとなり,今後の課題と考えられた.
著者
佐々木 剛
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

注意欠如多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;ADHD)は、多動・衝動性および不注意を基本症状として、種々の生物学的要因(ドパミン仮説を例に挙げれば、背外側前頭前野皮質―尾状核―淡蒼球-視床と続く神経回路の障害)を基盤に、養育に関連した心理的要因や環境要因、さらに行動統制を要求される現在の生活環境などが複雑に絡み合って症状を呈するものと理解されている。治療としては認知行動療法を中心とする心理社会的な治療・支援の提供と、不注意や多動性・衝動性の改善を目的とする薬物療法が主として行われている。近年、チペピジンヒベンズ酸塩などのGタンパク質共役型内向き整流性K+(GIRK)チャネル活性化電流抑制が神経興奮の制御に重要であることが示唆されており、その作用を持つ薬剤がADHDの新たな治療薬として期待されている。本臨床試験の主要目的は、80名の小児思春期ADHD患者(6歳から17歳)を対象として、チペピジンヒベンズ酸塩またはプラセボを4週間投与した際の臨床症状への有効性および忍容性を比較検討するものである。プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較による探索的臨床試験であり、主要評価項目は、実薬群とプラセボ群における投与前から 投与4週間後のADHD-RS合計得点の変化量であり、副次的評価項目は、ADHD-RSの下位尺度の合計得点の変化量、DN-CAS各得点の変化量、CGIの変化量、血中バイオマーカーの変化量である。平成29年度は、3名が臨床試験同意・実施し合計20名の進捗となった。
著者
山田 大介 佐々木 剛
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌 (ISSN:21882851)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-64, 2011-03-15

日本の水産教育は,水産の担い手を対象とした職業人教育を中心に行われ,水産業界の発展に寄与してきた。しかし,現在,水産物の価格や消費の低迷,魚食文化の衰退等水産に関わる諸問題が起きている。このままでは水産技術者と一般市民の水産に対する理解の隔たりが広がり,水産の未来が危惧される。そこで,水圏環境教育,中でも,一般市民の水産の理解を目的とした水産のリテラシー教育の推進が必要である。本研究では,多様な利点をもつ海藻(コンブ)に着目し,教材の開発及び学習会を行い,学習の記録を通して得られた学習意識や学びの広がりを明らかにし,本プログラム内で行った4 つの海藻教材のアクティビティがもたらす水圏環境教育の有効性について考察した。学習会は平成22 年7 月から9 月にかけて,計3 回実施した。具体的には,1 回目として平成22 年7 月23 日(以下,プログラム1)・24 日(以下,プログラム2)において,江東区深川スポーツセンターとの産学連携による小学校1 年生(28 名)を対象とした「深川っ子わくわく体験隊」の一環として学習会を実施した。さらに,2 回目として平成22 年8 月8 日,三陸鉄道㈱,さんりくESD 閉伊川大学校が主催した「三陸鉄道・特別列車で行くさかなクンと海の科学を学ぼう!!」内で,小学校1-6 年生24 名(19 組)を対象にプログラム1 及び2 を実施した。3 回目として平成22 年9 月12 日,岩手県宮古市が主催した「森・川・海体験交流事業『川の体験活動』」内で,小学校1-6 年生20 名を対象にプログラム1 及び2 を行った。各学習会に参加した児童の会話・映像データ及び児童が記入した学習の記録を基に考察を行った。これらにより,プログラム内のアクティビティは,諸感覚を使うことで自然事象に対する感性の醸成を促し,水産物としてのコンブの認識を強め,表現力の育成,環境教育で育成したい能力と態度の養成に効果があると考えられた。また,コンブを用いた生態系を学ぶための教材としての可能性が示唆された。しかし,各アクティビティの関連性に課題が残り,学習会後の児童の自発的な取り組みを促すプログラム作りが必要である。このような学習会が幅広く継続的に実施されることで,持続可能な海洋の利用につながることを期待する。
著者
佐々木 剛 和久井 諒 和久 大介 米澤 隆弘 姉崎 智子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.49-56, 2013-09-20

日本国内でツキノワグマ(Ursus thibetanus)は本州,四国に生息し,現在5地域の個体群が絶滅の恐れのある地域集団とされている。群馬県でもツキノワグマが生息しているが,その捕獲頭数を定めた群馬県ツキノワグマ適正管理計画は,地域集団の構成を考慮しないまま実施されており,このままでは絶滅を招く危険性をはらんでいる。このことから,ツキノワグマの適切な保全を考慮した農林業被害等の防止対策を実施することが,希少野生動物とともに暮らす地域にとって重要な課題といえる。そこで本研究は群馬県ツキノワグマの遺伝的多様性を明らかにするため,群馬県で捕獲されたツキノワグマ30個体のミトコンドリアDNA D-loop領域706bpの配列を決定し,ハプロタイプ分析を行った。その結果,群馬県のツキノワグマから6つのハプロタイプを同定した。これらは先行研究により東日本に生息するツキノワグマで同定された38ハプロタイプのうち,E01, E06, E10, E11, E31, E34に該当した。ハプロタイプの地理的分布および集団構造解析から,群馬県では南西部集団,中之条集団,北東部集団の3集団が存在する可能性が示唆された。群馬県中央部から南東部にかけては平野が広がっており,ツキノワグマの生息は確認されていない。よって群馬県のツキノワグマ3集団は群馬県の西から東へ南西部集団,中之条集団,北東部集団の順に並んで存在していると思われる。つまり,中之条集団の西側で南西部集団と分かれる境界線があり,東側で北東部集団と分かれる境界線が本研究によって想定された。これらは適正管理計画のもとで人為的に設定された地域個体群(越後・三国地域個体群と関東山地個体群)とは異なる境界分布を示しており,今後ツキノワグマの自然集団を繁栄した適切な保全計画を実施するためにも現在の分布境界線を見直していく必要があることを本研究は提唱する。
著者
新津 富央 伊豫 雅臣 橋本 謙二 橋本 佐 佐々木 剛 小田 靖典 木村 敦史 畑 達記 井手本 啓太
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

注意障害を伴う精神疾患(気分障害、注意欠如/多動性障害:ADHD)患者を対象に、生体サンプル採取と注意機能測定とを行い、血液中のグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)濃度と注意機能との関連を探索した。その結果、血清中GDNFは成人ADHDにおける注意障害の病態に関連している可能性が示唆された。また、血清中GDNFはうつ病と双極性障害における臨床的重症度と関連していた。血清中GDNFは、ADHDや気分障害のバイオマーカーになる可能性が示唆された。
著者
和木 美玲 佐々木 剛
出版者
東京海洋大学水圏環境教育学研究室
雑誌
水圏環境教育研究誌 (ISSN:21882851)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.78-114, 2011-03-15

平成23 年度より施行される新しい小学校学習指導要領はPISA の結果等を受け,これからの理科の科目は,学習者が主体となり経験や体験に基づき問題に取り組むことを通して,科学的に考える力を養い,理科を学ぶことの意義や有用性を実感することが重要視されている。また,水圏環境教育学研究室では,地域の自然を活用した水圏環境教育に取り組んでおり,大森のふるさとの浜辺公園において体験活動とテキスト学習を複合したプログラムを行うことで,児童に地域自然への興味関心が高まり,環境への意識の芽生えが確認された。さらに,魚類図鑑作成のプログラムでは,魚類調査を通して地域の自然を学ぶ活動を通して,地域の市民が参加して生物を調査することには,環境啓発に重要な道徳教育ならびに自然科学教育の機会があることが確かめられた。このような結果をふまえ,本研究では,「地域の自然を調べまとめる「生きものカード」作りを通して,主体的な学びの意識と科学的な考え方の育成をはかる」ことを目的とした継続的な水圏環境教育プログラムを実施し,アンケート調査やワークシートの記述,及び会話による分析から,参加児童の科学的思考の変化を検証した。平成22 年5 月23 日から6 月13 日の1 ヶ月間毎週日曜日全4 回,名称を「ふるはま生きものクラブ」とし,大田区立大森海苔のふるさと館と協働して大森ふるさとの浜辺公園にて,近隣の小学校4 年生から6 年生を対象に水圏環境教育プログラムを実施した。実施にあたり,近隣の小学校6 校の協力により4 年生から6 年生にチラシを配布したところ,2 年生から6 年生まで13 名の参加児童を得た。ワークシートの記述やアンケート調査の結果から、参加児童が主体的に学ぼうとする様子や,本プログラムを通して次の探究心の芽生えが確認された。また、本プログラムが児童の次の探究心への土台づくりとなったことが推測された。今後は,科学的概念の定着の様子や学びのきっかけを得た児童が自ら定めた課題に取り組む様子について明らかにしていくとともに,地域の教育施設と連携した水圏環境教育プログラムの取り組みを持続的に行っていくことを課題とし研究を重ねていきたい。
著者
佐々木 剛志 銭 智定 浅井 大輔
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1235-1240, 2021 (Released:2021-10-22)
参考文献数
10

自動運転の高度化により予期しない動作の解析が困難となるため,多様な走行シーンのデータをクラウドで収集するニーズが高い。収集データの効率的な解析には事前にシーン分類することが有効だが,膨大な工数を要する。そこで,車載カメラ画像から走行シーンを把握するために,自車両周辺の対象物の距離計測手法を提案する。
著者
井門 彩織 足立 樹 楠田 哲士 谷口 敦 唐沢 瑞樹 近藤 奈津子 清水 泰輔 野本 寛二 佐々木 悠太 伊藤 武明 土井 守 安藤 元一 佐々木 剛 小川 博
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.257-264, 2014 (Released:2015-01-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

チーター(Acinonyx jubatus)において,種を保存するうえで飼育下個体の繁殖は極めて重要である.しかし,飼育下での繁殖は困難とされ,繁殖生理の解明が重要となっている.本研究では,飼育下での環境変化がチーターの発情に与える影響と要因を探ることを目的として,4頭の飼育下雌チーターの行動観察及び糞中エストラジオール-17β含量の測定を行った.各放飼場には,1日に2~3個体を交代で放飼し,雄の臭いや鳴き声などが雌の行動と生理にどのような影響を与えるのか調べた.その結果,4頭中1頭で,放飼方法を雌2頭交代から雌雄2頭交代に変化させることによって,行動の増加と糞中エストラジオール-17β含量の上昇が見られた.また,一部の雌の繁殖状況が同時に飼育されている他の雌の発情に影響を与えるのかを調査するため,育子中個体の有無で期間を分け,各期間で行動数と糞中エストラジオール-17β含量を比較した.その結果,同時飼育の雌に育子中個体がいた期間では,行動数と糞中エストラジオール-17β含量が発情と共に増加した.しかし,育子中個体の育子が終了した後の期間では,糞中エストラジオール-17β含量の変化と関係なく行動数に増減が見られた.以上のことから,雌チーターにおいては雄との嗅覚的接触が発情を誘発するとともに,同一施設で飼育される雌の繁殖状況が他雌個体の繁殖生理と行動に影響を与えている可能性が考えられた.
著者
佐々木 剛 田澤 大 長谷井 嬢 国定 俊之 吉田 晶 橋本 悠里 矢野 修也 吉田 亮介 宇野 太 香川 俊輔 森本 裕樹 浦田 泰生 藤原 俊義 尾﨑 敏文
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.105-110, 2012-08-01 (Released:2012-09-03)
参考文献数
15

骨・軟部肉腫は, 一部に治療抵抗性で予後の悪い症例が存在するため, 新たな治療法の確立が重要な課題である. 我々は, 5型アデノウイルスを基本骨格として, テロメラーゼ活性に依存して増殖する腫瘍融解ウイルス(OBP-301)や, coxsackie and adenovirus receptor(CAR)陰性の腫瘍細胞に感染するファイバー改変型ウイルス(OBP-405)を用い, 骨・軟部肉腫細胞に対する抗腫瘍効果を検討した. 14種類の骨・軟部肉腫細胞株に対してOBP-301の細胞障害活性を検討し, 12種類の細胞株でOBP-301に感受性を認めた. また, OBP-301の細胞障害活性はCARの発現と相関していた. さらに, テロメラーゼ活性の低い細胞に対しても, 5型アデノウイルスの複製に必須のE1Aによりテロメラーゼ活性の増強効果がおこり, 強い抗腫瘍活性を示すことを明らかにした. 次に, 骨肉腫脛骨同所性移植動物モデルを作成しOBP-301を投与したところ, OBP-301投与群では対象群と比べて有意に腫瘍増殖を抑制した. 最後に, OBP-301に感受性を認めなかったCAR陰性細胞株に対してOBP-405を用いて検討し, OBP-405が有効に作用することを確認した. OBP-301やOBP-405を用いたウイルス療法は, 骨・軟部肉腫に対する新たな治療法となる可能性がある.
著者
佐藤 祐介 太田 嘉英 倉林 宏考 佐々木 剛史 伊澤 和三 山崎 浩史
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.149-155, 2010-12-15 (Released:2011-10-20)
参考文献数
29

今回われわれは,頸動脈間隙の高位に発生した頸部迷走神経鞘腫の1例を報告する。症例は,71歳,女性。咽頭部違和感を主訴として来院した。口腔内所見として,左口蓋咽頭弓に約50×60mm大,無痛性腫瘤を認めた。腫瘤は,CTおよびMRにて左頸動脈間隙を占拠していた。また,腫瘤は総頸動脈および内頸静脈を解離させ,頭蓋底まで及んでいた。われわれは,subcutaneous mandibulotomy approachを用いて切除し得た。病理組織学的診断は,神経鞘腫であった。術後,嚥下障害および嗄声を認めたが,リハビリテーションを行い,経口摂取可能な状態まで改善した。術後,約2年経過した現在,再発は認めていない。
著者
佐々木 剛 猿渡 敏郎 渡邊 精一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.141-150, 2003

遡河回遊型ワカサギの産卵生態を調べるために, 1995年から1998年の産卵期に閉伊川において調査を実施し, 河川の水温, 水量等の環境要因, 体サイズ, 性比に関して考察した。調査の結果, 水温が約10度を越えると遡上が開始し, 遡上のピークは常に雪融けによる濁り水が治まってから始まった。その後, 半月周期的にピークが確認された。4年間にわたり, 性比は雄に偏っているが, 雌が多くなるのは新月の前後であった。体サイズは年変動し奇数年は大きく, 偶数年は小さい。これに対し, 遡上期間は奇数年が短く, 偶数年は長い。また, 体サイズが大きい年は雌の体サイズは雄より大きいが, 体サイズが小さい年は雄雌の差は認められなかった。