著者
佐藤 茂 和気 慶介
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.173-177, 2006-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
8

カーネーションの ACC 合成酵素遺伝子 <i>DC-ACS1</i> は,花の老化時に雌ずいで少量発現し,花弁で大量に発現する.カーネーションの花の老化時には,雌ずいで生成したエチレンが花弁に作用して <i>DC-ACS1</i> と <i>DC-ACO1</i>(ACC 酸化酵素遺伝子)の発現を誘導し,花弁から大量のエチレンが生成する.<i>DC-ACS1</i> cDNA を導入した遺伝子組換えカーネーション(16-0-66系統)では,エチレン処理によって <i>DC-ACO1</i> 転写産物が雌ずいと花弁の両方で増加したが,<i>DC-ACS1</i> 転写産物は検出されず導入遺伝子による内生 <i>DC-ACS1</i> 遺伝子の発現抑制(コサプレッション)が推測された.他方,16-0-66 系統では花の老化時にエチレンが生成せず,同時に,雌ずいと花弁で <i>DC-ACS1</i> 転写産物が検出されなかった.また,<i>DC-ACO1</i> 転写産物は,雌ずいで検出されたが花弁では検出されなかった.これらの知見から,カーネーション花弁の老化時のエチレン生成において,雌ずいにおける <i>DC-ACS1</i> の発現が重要な役割を果たしていることが推測された.<br>