著者
緒方 泰子 和泉 由貴子 北池 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.480-492, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
35

目的 自分専用の携帯電話を所有している高校生の携帯電話のメール機能(以下,携帯メール)の利用頻度と友人とのネットワークや携帯電話利用における利点や欠点(以下,携帯電話の利点・欠点)に対する認識,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすること,孤独感と携帯メールの利用,友人とのネットワーク,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすることを目的とした。方法 関東地区の A 高等学校の各学年 2 クラス計227人を対象に無記名で自記式調査を行った。調査内容は,孤独感,携帯電話の利用状況,1 日あたりの平均メール利用回数(以下,携帯メール回数),友人とのネットワーク(友人数や課外活動への参加程度等),携帯電話の利点・欠点である。孤独感の測定には,UCLA 孤独感尺度邦訳版20項目を用い,「決して感じない」から「度々感じる」までの 4 段階の選択肢を設け,孤独感の低い方から高い方へ 1~4 点を与えて合計した(以下,孤独感得点)。携帯電話の利点・欠点は,先行研究等から20項目を設定し,「全くそう思わない」から「よくそう思う」の 4 件法で尋ね,因子分析を行い,各因子を分析に用いた。結果 回答者220人は,男子57.5%,女子42.0%で,各学年ほぼ同人数であり,携帯電話所有率は94.1%であった。孤独感20項目のクロンバックの α 係数は0.87,孤独感得点の平均値は先行研究に近似していた。携帯電話の利点・欠点20項目の因子分析により 5 因子が抽出された。メール回数を従属変数とした重回帰分析の結果,学年,通話回数,授業中の通話・メールの確認,着信・メールの頻繁なチェック,伝達の困難性,夜間利用による睡眠不足により,メール回数の分散の42.9%が説明された。孤独感に有意差のみられた,性別,友人とのネットワーク(友人数等),携帯メール回数等を独立変数,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析の結果,性別,友人数,恋人の有無,携帯メール回数により孤独感の分散の24.4%が説明された。結論 携帯メールの利用は,友人とのネットワークと同様に,高校生の孤独感に低減効果をもたらし,その利用回数は,携帯電話の利用頻度や,携帯電話の利点や欠点を高校生がどのように感じているかによって影響を受けていた。また,高校生が,携帯電話の利便性や限界を認識しつつ,苛立ちや束縛感を感じながらも友人との関係性強化に携帯メールを利用していることが明らかになった。