著者
水村 純子 吉本 照子 緒方 泰子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.150-158, 2014-04

目的:地域包括支援センター内でのケースカンファレンスが,多職種でケースの情報を共有し,支援の目標や方針を検討する場として機能していなかったことを背景とし,効果的・効率的なケースカンファレンスを実施することが課題であった.そこで,利用者に対する包括的ケアを行うために,職員各々の役割行動を規定したケースカンファレンス基準をつくることを目的とした.方法:センター長がリーダーとなり,看護師,社会福祉士,主任介護支援専門員を中心に社会福祉主事,介護支援専門員を加えた計6人の職員で基準試案を作成した.基準試案をもとに平成22年5月から8月にケースカンファレンスを実施し,職員の意見を反映させて基準試案を修正し,基準を完成させた.ケースカンファレンスの効果的・効率的な実施に向けて,事例選定,記録および評価に用いる書式を5種作成した.基準作成の目的とした効果的な包括的ケアの状況およびケースにおける基準使用の効果をもとに評価した.結果:作成した基準試案および5種のツールを使用しながら,全員がケースカンファレンスに参画し,ケースの情報,支援目標・方針を共有し,統一した支援をおこなうことができた.独居の看取りなど在宅生活の継続が困難であると予測された支援においても,各職種の意見を反映して支援目標を決め,ケースの情報,目標および支援方針を多職種で共有し,統一した方針で対応し,本人の意向に沿って在宅で看取れた.全員でその効果を評価し,同様なケースに関する今後の対応方法のルールを決めることができた.虐待支援の遅れもみられなくなった.結語:各職種の担当するケースの数の偏りを防ぎつつ専門性を発揮し,多職種協働による支援の必要なケースを効果的・効率的に選定し支援・評価できたと考えた.主担当を中心に多職種で支援を分担し,その効果を全員で評価・確認したことにより,各職員が多職種協働における専門職としての役割を自覚し,効果的な相互の役割行動を理解し,多職種協働の必要なケースの特性に応じた支援の実践知を共有できたと考えられた.制度創設4年目のセンターにおいて,多職種協働による包括的ケアを提供するには,各職員が専門職としての自己および他職種の役割を認識し,専門職として確実に協働できるようなツールの作成を含めた基準および実践の効果の共有が必要であり有効であったと考えられた.
著者
野田 京花 森脇 睦子 額賀 みのり 佐々木 美樹 山内 和志 林田 賢史 緒方 泰子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.88-98, 2022-07-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究は,誤嚥性肺炎で自宅から入院した高齢患者の自宅外退院に影響する要因を,Diagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて患者要因の視点から検討した。対象は2018年4月から2019年3月に入院した患者23,781例とした。患者背景因子は,χ2検定及びMann-WhitneyのU検定を用いて「自宅/自宅外」で群間比較した。次に看護必要度評価項目の要約のために因子分析を行い,退院先を従属変数,患者背景因子,病院背景因子,看護必要度の各因子の有無を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。自宅外退院に影響する患者要因は「75–84歳」,「85歳以上」,「Activity of Daily Living(ADL)」,「危険行動」,「経管栄養」,「中心静脈栄養」,「A項目因子1: 循環・呼吸の管理」,「ドレナージの管理」,「危険行動×経管栄養」,「循環・呼吸の管理×褥瘡」,「A項目悪化」であった。ADL能力と医療的処置が重要な要因であることが明らかになった。
著者
永野 みどり 緒方 泰子 徳永 恵子 石久保 雪江 石田 陽子
出版者
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.293-304, 2014 (Released:2021-04-30)
参考文献数
34

褥瘡対策体制における皮膚・排泄ケア認定看護師(以降WOCNと略す)の「病院全体の褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」と「褥瘡発生率」に関連する褥瘡対策の構造的な要件や効果的な取り組みを明らかにする目的で、同意を得た425病院に対し、WOCNとその直属上司である看護管理者宛に、質問紙調査を実施した。回答の欠損が少ない200床以上の急性期病院166施設を分析対象とした。 「WOCNの褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」に関連する要件として、「WOCNの臨床経験が21年以上」であるというWOCNの個人属性が強く関連していた。「院長の部門間調整」や「認定看護管理者として認定されている看護管理者」「看護管理者のWOCNへの評価」といった管理者の関与に関連があり、その重要性が示唆された。「WOCNの情報発信力」で「褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」が強まり、それにより病棟看護師の「医療関連機器圧迫創傷」や「褥瘡対策チームとの連携」の意識が高まると考えられた。 「褥瘡発生率」に有意に関連する取り組みは、「WOCNの褥瘡保有死亡患者の把握」「WOCNの褥瘡のケア技術への自信」「地域の開業医との信頼関係」であった。「十分なWOCNの数」「病棟看護師の医療関連機器圧迫創傷への認識」「OT/PTの関与」も関連していた。 WOCNの「病院全体の褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」を成果指標とすることで、「褥瘡発生率」には反映できない部分の褥瘡対策の質が把握できると推察された。
著者
大河原 知嘉子 森岡 典子 柏木 聖代 緒方 泰子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.85-91, 2019-06-20 (Released:2019-06-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的:訪問看護事業所の教育・研修内容の実態を可視化し,事業所規模により比較する.方法:2015年度介護サービス情報公表システムのデータを用い,東京都の訪問看護事業所を対象とした混合研究法を実施した.研修内容に関する自由記載から研修主催情報とテーマのカテゴリを作成し,事業所規模とのコレスポンディング分析と,各研修の実施割合と規模を量的に解析し結果を統合した.結果:311か所を分析対象とした.研修主催機関8カテゴリのうち,「医療機関」は中規模でより記載され,規模が小さいほど実施割合が高かった.研修テーマ38カテゴリのうち「精神科看護」「小児看護」などは中規模以上で記載されており,量的にも規模が大きいほど実施割合が高かった.結論:東京都の訪問看護事業所における教育・研修主催機関・テーマが明らかとなった.規模によらず様々な研修機関を活用していた一方,テーマは規模との関連が見られた.
著者
緒方 泰子 和泉 由貴子 北池 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.480-492, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
35

目的 自分専用の携帯電話を所有している高校生の携帯電話のメール機能(以下,携帯メール)の利用頻度と友人とのネットワークや携帯電話利用における利点や欠点(以下,携帯電話の利点・欠点)に対する認識,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすること,孤独感と携帯メールの利用,友人とのネットワーク,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすることを目的とした。方法 関東地区の A 高等学校の各学年 2 クラス計227人を対象に無記名で自記式調査を行った。調査内容は,孤独感,携帯電話の利用状況,1 日あたりの平均メール利用回数(以下,携帯メール回数),友人とのネットワーク(友人数や課外活動への参加程度等),携帯電話の利点・欠点である。孤独感の測定には,UCLA 孤独感尺度邦訳版20項目を用い,「決して感じない」から「度々感じる」までの 4 段階の選択肢を設け,孤独感の低い方から高い方へ 1~4 点を与えて合計した(以下,孤独感得点)。携帯電話の利点・欠点は,先行研究等から20項目を設定し,「全くそう思わない」から「よくそう思う」の 4 件法で尋ね,因子分析を行い,各因子を分析に用いた。結果 回答者220人は,男子57.5%,女子42.0%で,各学年ほぼ同人数であり,携帯電話所有率は94.1%であった。孤独感20項目のクロンバックの α 係数は0.87,孤独感得点の平均値は先行研究に近似していた。携帯電話の利点・欠点20項目の因子分析により 5 因子が抽出された。メール回数を従属変数とした重回帰分析の結果,学年,通話回数,授業中の通話・メールの確認,着信・メールの頻繁なチェック,伝達の困難性,夜間利用による睡眠不足により,メール回数の分散の42.9%が説明された。孤独感に有意差のみられた,性別,友人とのネットワーク(友人数等),携帯メール回数等を独立変数,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析の結果,性別,友人数,恋人の有無,携帯メール回数により孤独感の分散の24.4%が説明された。結論 携帯メールの利用は,友人とのネットワークと同様に,高校生の孤独感に低減効果をもたらし,その利用回数は,携帯電話の利用頻度や,携帯電話の利点や欠点を高校生がどのように感じているかによって影響を受けていた。また,高校生が,携帯電話の利便性や限界を認識しつつ,苛立ちや束縛感を感じながらも友人との関係性強化に携帯メールを利用していることが明らかになった。