著者
和田 弥恵子
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-57, 1998-12

日本語の発音指導において、学習者の母語の音声に関する知識は非常に重要である。音声を表記するためには、国際音声字母(IPA)が現在世界で使用されているが、語学書や辞書の中にはIPAと一部異なる記号で発音表記されているものもあり、複数の言語の発音比較の際や、教師が精通しない文字の発音を調べる際に不便である。また、仮名習得を必要としない学習者に対する日本語教育では一般にローマ字表記が用いられているが、日本語ローマ字表記の文字と音声の対応関係が、学習者の母語と異なることもあり、その場合には学習者に誤った発音を想起させる結果を招くこともある。より効率よく日本語の発音を把握させるためには、学習者の母語の文字表記習慣に則った音声表記が有用であろう。本稿では、スラヴ語の中からポーランド語を取り上げ、まずスラヴ語全般に関する背景知識について述べた後に、ポーランド語の音をIPAで確認し、音声的特徴をまとめた。最後に、ポーランド語話者のための日本語音声表記を試みた。