著者
和田 精二 大谷 毅
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.37-46, 2005-01-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
26

1951(昭和26)年の松下幸之助の米国視察を機にわが国初の企業内デザイン部門が松下電器産業に設立されたこと, 帰国早々「これからはデザインの時代」と彼が語ったこと, 真野善一が初代課長として採用されたこと等はデザイン界ではよく知られた事実である。しかし, どのような経営的な視点からデザイン部門設立を決定したか等についてはあまり詳しく知られていない。本研究において, 幸之助という希代の経営者の米国視察等に関わる関連情報を調査することで, デザインがビジネスに極めて大きく関わり, 製品の価格をデザインでコントロールできると喝破した, その幸之助の経営的な先見性を確認できた。同時に, 工芸指導所や少数の企業にデザイン活動がすでに始動していた事実も確認できた。
著者
和田 精二 大谷 毅
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.47-54, 2005-01-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
9

本研究は, インハウスデザイン組織をMOD(Management of Design)の視点から考察することを目的としている。これまでの研究により, 松下電器産業のデザイン部門が, 松下幸之助のデザインに対する強い期待によって超短期間に設立されたこと, 課長としてスカウトされた真野善一による松下幸之助の意志の具現化に向けた努力により組織の強化と拡大が達成されたことが理解できた。本稿においては, 松下電器とは対照的に, 総合電機メー力一である三菱電機のデザイン部門設立が, 代々の経営幹部が時間をかけた基盤づくりを行った後, 20年の時間をかけ, 約15人のデザイナーによる地道な努力の結果として達成されたことが理解できた。
著者
和田 精二 大谷 毅
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.53-60, 2005-03-31
参考文献数
17

関連報告(研究1, 研究2)において, 松下電器と三菱電機のデザイン部門が成立するまでの経緯をMOD(Management of Design)[注1]の視点から調査した。本研究においては, 東芝のデザイン部門が成立するまでの経緯を扇風機のデザインを事例として調査した。その結果, 東芝のデザイン部門は, 松下電器や三菱電機と違った経緯で組織が成立したことが理解できた。東芝は, 家電製品に関し日本で最も長い歴史を持っている。その伝統が歴代の経営幹部によって引き継がれるとともに, 当該業界では日本初とも言える社外の公的機関である産業工芸試験所との強い連携, 同所からのデザイン指導, 外国人の嘱託採用などが同社デザイン部門の設立に寄与したことが理解できた。