著者
和田淑子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.88-98, 1978
被引用文献数
4

マルチトールを主成分としたマルチットシラップを蔗糖のかわりに用いて,スポンジケーキ,エンゼルケーキを試作し,次の結果を得た。(1)マルチットシラップの甘味度はグラニュー糖100に対し45.5である。したがって蔗糖とほぼ同甘味とするには,蔗糖の2.2倍量用いるとよい。(2)スポンジケーキにおいて,蔗糖の30%,50%を固形物換算で同量のマルチットでおきかえ,いずれも生地水分量が同一となるよう加水量で調節したケーキを比較すると,マルチット添加ケーキは蔗糖ケーキに比べ,甘味は若干劣るがスポンジ生地がやわらかく,口あたりが良好となる。(3)マルチットスポンジケーキの良好な材料配合比は,小麦粉:卵:マルチットが30:35:56,または35:30:56である。このケーキのカロリーは蔗糖で良好な配合比をもつケーキカロリーにくらべ45%前後のカロリー低下となる。(4)マルチットエンゼルケーキの最も良好な材料配合比は卵白100,小麦粉50,マルチット132である。このケーキのカロリーは蔗糖で良好な配合比をもつケーキカロリーにくらべ50%程度のカロリー低下となる。(5)卵白の起泡性におよぼすマルチトールの影響を検討するため,卵白アルブミン溶液に蔗糖,マルチトール,マルトースをそれぞれ30%および80%添加して攪拌し,得られる泡の性状を比較した。攪拌温度30℃の場合,マルチトール添加は蔗糖よりも良好な起泡力を示した。また泡の安定度も高く,かたくてこしのある泡が得られる。終りに本研究につき御指導いただきました大妻女子大学教授山崎清子先生,国立栄養研究所応用食品室長高居百合子先生に厚く御礼申し上げます。また本稿をまとめるに当り,御助言を賜わりました国立栄養研究所応用食品部長岩尾裕之先生に深謝いたします。