- 著者
-
唐沢 孝一
- 出版者
- The Ornithological Society of Japan
- 雑誌
- 鳥 (ISSN:00409480)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.100, pp.94-100, 1976-12-30 (Released:2007-09-28)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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1975年9月から1976年3月まで,東京の北東部にある水元公園で,モズのハヤニエの季節的消長について調査を行なった.1)観察したハヤニエ129個体のうち,120個体(92%)が11月~1月の3ヶ月間に集中してつくられた.ハヤニエ消失時期は,12月~2月で,特に2月が多く,45個体が消失した.2) 10月~11月には,コオロギ,イナゴなどの昆虫類やウシガエルなどが多く,12月~2月には,魚類(モツゴ,タイリクバラタナゴ)や甲殼類のような水中動物,あるいはミミズのような土壌動物が増加する傾向がみられた.3) ハヤニエがつくられてから消失するまでの期間は,1~2ヶ月以内が最も多く,全体の93.7%であった.3ヶ月以上たったハヤニエは固くなり,あるいは変色したりして,食用に適さない状態であった. 4) モズの個体数の季節変化とハヤニエ数の関係は,Fig.2に示したように,秋の高鳴きの激しい9月~10月にモズの個体数は1日あたりの最大値22羽に達したが,ハヤニエ数は3個体であった.冬期テリトリーの確立した11月~2月には,モズの個体数は4羽に減少したまま安定し,ハヤニエ数は急増した.5) 公園内に分散したモズの冬期テリトリーは4つで,各テリトリー内にはハヤニエを集中的につくる場所がみられた.この集中場所は.ハヤニエのつくりやすい場所(有刺鉄線,樹枝)の分布とほぼ一致していた.6) 冬期,ハヤニエがテリトリー内で利用される可能性について多少考察した.