著者
山本 博徳 菅野 健太郎 喜多 宏人 砂田 圭二郎
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ダブルバルーン内視鏡を用い、臨床使用経験を増やし、平成18年3月までにはダブルバルーン内視鏡を用いた小腸内視鏡検査は530件以上となった。これらの経験によりダブルバルーン内視鏡挿入手技が確立され、小腸における止血術、ポリペクトミー、狭窄拡張術、ステント留置、異物回収などの治療手技も確立した。また、独協医科大学との共同研究の形でカプセル内視鏡との比較も行い、今後の小腸疾患に対するアプローチ法の確立に努めた。ダブルバルーン内視鏡の応用として従来の方法では内視鏡挿入が出来なかった術後バイパス腸管や、ビルロートII法やRoux-en-Y吻合などの輸入脚に対する内視鏡観察、処置を積極的に経験し、これら術後腸管に対する胆道疾患の治療法も確立した。平成15年度に立ち上げた小腸内視鏡研究会内に世話人の施設を中心に、自治医科大学、日本医科大学、名古屋大学、京都大学、広島大学、九州大学、福岡大学の7施設でワーキンググループを立ち上げ、小腸疾患に関する多施設共同研究を行った。海外におけるダブルバルーン内視鏡の教育、普及にも努め、その結果世界33カ国以上で導入されている。既にヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアの諸国からその有用性、安全性の報告が多数見られており、世界レベルにおいてダブルバルーン内視鏡が小腸内視鏡検査のスタンダードとして認められてきている。国際的な経験の共有、技術の均一化、知識の向上のために日本、アメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ、中国、韓国の代表者を世話人とした1st International Workshop on Double-Balloon Endoscopyを平成18年8月に東京で開催する予定で準備を進めている。ダブルバルーン内視鏡を用いた小腸の基礎的研究として腸内細菌叢の研究を自治医科大学の細菌学教室と共同で行っている。この研究には消化器内科から大学院生を専属で細菌学教室に派遣し、腸内容物を嫌気性条件で採取し、定量培養その他の手法を用いて細菌叢を定量的に同定するという手法で進めている。