著者
坪井 聡 上原 里程 Tsogzolbaatar Enkh-Oyun 小谷 和彦 青山 泰子 中村 好一
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 = Jichi Medical University Journal (ISSN:1881252X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.63-69, 2013-03

目的 東日本大震災後の栃木県における自殺の動向を明らかにする。方法 2008年1月から2011年6月までの間に栃木県内で発生したすべての自殺者のデータ(警察データ)と,警察庁が公表している自殺統計を用いて記述疫学研究を行った。結果 2008-2010年の総自殺者数は栃木県で1,795人,全国で96,784人であり,2011年上半期では栃木県で281人,全国で15,906人であった。2011年上半期における栃木県の月別自殺率3月から5月にかけて増加していた。栃木県では,4月は45-64歳と65歳以上の男女で身体の病気の悩みによる自殺が多く,5月は20-44歳と45-64歳の男,20-44歳の女でうつ病の悩みによる自殺が多かった。結論 東日本大震災の後,全国と同様に栃木県においても自殺率の増加がみられた。被災地の周辺地域においても地域資源を活用した自殺予防を早期に開始するべきなのかもしれない。
著者
去川 俊二 吉村 浩太郎
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

免疫染色では凍結保存した脂肪組織の脂肪細胞はすべて死亡していることが明らかとなった。脂肪幹細胞についても、生存しているものの、割合は小さかった。さらに、脂肪移植の動物実験において、新鮮脂肪組織の移植と比較して、大きく劣ることがわかった。今回の研究によって、現存する脂肪組織の凍結保存方法では、一定の幹細胞は保存できるものの、脂肪細胞は不可能である。幹細胞についても細胞としての凍結保存に比べて、大きく劣ることが分かった。再生医療の重要な細胞源とされる脂肪組織の利用法の最適化について、新しい知見を与えた。組織としての凍結では効率が悪いため、何らかの方法を開発する必要があることが明らかとなった。
著者
望月 明見 小池 純子 成田 伸 田村 敦子 橋爪 祐美
出版者
自治医科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

初年度より2018年までで「受刑経験のある母親と子どもとの関係性再構築と女性の社会復帰後の体験」の調査に取り組み、質的分析に時間を要した。2019年は、「受刑経験のある母親と子どもとの関係性再構築と女性の社会復帰後の体験」研究の質的研究の分析から【受刑経験のある女性の社会復帰における子どもとの関係の問題】を明らかにした。その問題とは、①経済的な問題で自立して養育が困難②子どもと分離したことによる絆(つながり)の減少・複雑化③人への不信感からの社会的孤立:社会に助けを求めない④パートナーとの関係を重視するため社会復帰に影響する⑤(薬物依存者の場合)薬物との関係性のあるつながりを切ることが難しい、ということを明らかにした。また、この結果と先行研究との知見を合わせ、【受刑経験のある女性の養育に関する問題点】について、更に検討を重ねた。その結果、1.親子分離、親子分離継続による母子間の絆・愛着の希薄、2.親準備性の問題(知識と体験の欠如)、3.世代間伝達(モデルの欠如)、4.母親である者の心身の状況(精神疾患や依存症の回復)、5.孤立した養育環境(資源へのアクセス困難)、6.経済的自立(養育環境の準備)の困難、7.子ども側の問題、8.受刑中に子どもを養育していた者との感情的問題、9.新しいパートナーを得た場合の問題、があることを導き出した。これらの知見は、第60回日本母性衛生学会学術集会や、第75回助産師学会で発表を行った。さらに、これらの受刑経験のある女性の養育に関する問題をふまえて、「子どもを持つ女子受刑者の子どもとの関係性の実態とその支援ニーズに関する研究」で使用する自作の質問紙作成を行い、次年度の調査のための準備を行った。
著者
鈴木 達也 柴原 浩章
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

抗透明帯抗体が不妊症の原因となるとの報告がある。本研究では抗透明帯抗体を保有する不妊女性の不妊機序を明らかにすることを目的とした。その結果、体外受精予定患者70名中4名(6%)を抗透明帯抗体陽性と判定した。さらに抗透明帯抗体陽性血清を用いてウエスタンブロッティングを行い、3種類の透明帯糖タンパクのうち、1種類(ZPB)にのみ反応を示した。抗透明帯抗体陽性4例の受精率は78±12%、陰性66例の受精率は87±21%であり、有意差を認めなかった。
著者
佐藤 幹代 高橋 奈津子 濱 雄亮 城丸 瑞恵 本間 真理 佐藤 りか (佐久間 りか) 射場 典子 別府 宏圀
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、慢性の痛みを患う人や家族に面接調査を行い、わが国の文化、社会、保健医療福祉制度背景を踏まえた身体的・精神的・社会的苦悩の体験世界や疼痛対処および医療者-患者・家族の相互理解のありかたを探究する。「慢性の痛みの語りデータベース」を構築する(https://www.dipex-j.org/chronic-pain/)。これらは慢性痛に関する看護学、医学、社会学、保健福祉医療分野における教育および、研究資源として期待できる。
著者
江口 弘久 谷原 真一 中村 好一 柳川 洋
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(1)各県ごとの患者把握率Gは、疾病の種類に関係がない。(2)小児人口あたり突発性湿疹発生には地域変動がない。以上の仮定を設定し、小児あたり定点数地域格差および年末年始、連休などの受診への影響を調整した患者報告数の都道府県格差を比較するモデルを構築した。このとき、サーベイランスで報告されている定点あたりの患者数をPとすると、その県での小児人口あたり患者数T1とのあいだには、P×(定点数)=(小児人口)×T1×Gの関係が成り立つ。よって定点あたり患者数Pは、P=(小児人口)×T1×G÷(定点数)と表すことができる。突発性湿疹の定点当たりの患者数をESとすると、小児人口あたり患者数T2について、同様に、ES×(定点数)=(小児人口)×T2×Gであるから、ES=(小児人口)×T2×G÷(定点数)と表すことができる。よって、各都道府県についてP/ES=T1/T2となる。仮定から、突発性発疹の発生率T2は地域差がない定数としたので、P/ESの値を比較することで、地域格差を検討することが可能になる。実際に突発性発疹の定点あたり患者数を分母に用いた数値による検討では、麻疹の場合、1995年の北海道東北地域では第5週〜20週にかけてほぼ一定の値を示し、特続的な麻疹患者発生が考えられた。1996年では近畿、四国地域に前後の週と比較して著しく高い値が観察された週が存在し、サーベイランスシステムにおけるデータ入力ミスの可能性が考えられた。九州地域では福岡県で定点あたりの患者報告数では他の県と比較して高くなっていたが、この指標では大きな格差は認められなかった。各都道府県の小児あたり定点数の地域格差が是正されたために地域格差が観察されなかった可能性がある。
著者
栁田 浩己 安藤 明彦 岡田 健太 長坂 昌一郎 石橋 俊 小谷 和彦 長谷川 修 谷口 信行
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 = Jichi Medical University Journal
巻号頁・発行日
vol.38, pp.27-39, 2016-03

神経伝導検査は,糖尿病神経障害を含めた末梢神経障害の評価に極めて有用である。その測定値は年齢や身長の影響を受けやすいとされるが,こうした影響に関する本邦の健常者での検討は少ない。今回,健常者ボランティアで年齢・身長・性別と,神経伝導検査各指標との関連を検討し,併せて当院での神経伝導検査基準範囲の設定を行った。神経伝導速度のほか,振幅・潜時・持続時間及びF波に関する各指標の基準範囲を求めた。年齢は上下肢の活動電位振幅と負の相関,身長は上下肢の活動電位振幅と負の,潜時と正の相関を認めた。F波に関しては,身長と最小潜時との間に正の相関(相関係数:正中0.79,脛骨0.78),平均潜時との間に正の相関(相関係数:正中0.76,脛骨0.72),最大潜時との間に正の相関(相関係数:正中0.66,脛骨0.64)を認めた。性別において多指標で有意差を認めたが,性別間の身長差・体格・解剖学的特徴に伴う差異が考えられた。軸索障害の指標として振幅の評価は重要であり,年齢・身長・性別の影響に関する留意が必要だが,今回の基準範囲設定により今後の診療への寄与が期待される。
著者
八木 欽治
出版者
自治医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

Wistar系雄ラットを用いて以下の成績を得た。1.ドーパミン系:ドーパミンD1受容体アンタゴニストを用い、DI受容体は侵害刺激に対するバゾプレシンの分泌増強反応を伝達するが、条件恐怖刺激に対する分泌抑圧反応には関与しないことを発見した。2.不安を誘発する新奇環境刺激がバゾプレシン分泌を抑圧することを発見した。3.ヒスタミン系:ヒスタミンH2受容体に選択的なアンタゴニストを用いた実験を行い、H2受容体は、バゾプレシンの基礎的分泌を持続的に抑制している、新奇刺激に対するバゾプレシン分泌抑制反応を伝達する、新奇刺激に対するオキシトシン分泌増強反応を活動依存性に抑圧する、ことを発見した。4.ノルアドレナリン系:ノルアドレナリン神経を選択的に死滅させる神経毒5-ADMPを用い、ノルアドレナリン作動系は、条件恐怖刺激に対するバゾプレシン分泌とオキシトシンとプロラクチンの分泌増強反応を阻害するが、無条件恐怖刺激と不安誘発性新奇刺激に対する反応を阻害しないことを発見した。5.ベンゾジアゼピン受容体:ノルアドレナリン系の活動を修飾するベンゾジアゼピン・GABA-A受容体を活性化すると、無条件恐怖刺激及び条件恐怖刺激に対するバゾプレシンとオキシトシンの反応は阻害されるが不安誘発性新奇刺激に対する反応は阻害されないことを発見した。6.セロトニン系:5-HT_<1A>受容体は、条件恐怖刺激に対するバゾプレシンとオキシトシンの反応の発現に関与しているが不安誘発性新奇刺激に対する反応には関与していないことを発現した。
著者
青木 葉子 岩本 雅弘 木村 洋貴 長嶋 孝夫 吉尾 卓 岡崎 仁昭 簔田 清次
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 (ISSN:1881252X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.29-36, 2007

Objective Prednisolone has traditionally been tapered below 30 mg daily before patients are discharged from hospitals in Japan because of concerns regarding the development of infectious complications. We undertook this study to compare the incidence of infectious complications in patients taking more than 30 mg of prednisolone daily with those taking less than 30 mg. Patients and Methods The medical records of fifty-seven patients with systemic lupus erythematosus (SLE) were reviewed retrospectively, and divided into three groups based on the dose of glucocorticoids at the time of discharge: group A (n=13), newly-diagnosed SLE patients taking more than 30 mg of prednisolone daily; group B (n=22), newlydiagnosed SLE patients taking less than 30 mg; and group C (n=22), patients with an established diagnosis taking more than 30 mg daily for the treatment of an exacerbation of symptoms. The development of infectious complications within two months after discharge was identified from a review of the medical records to determine the effect of glucocorticoid dose at the time of discharge on the subsequent development of infectious complications. Results Two patients in group A and three in group C developed infectious complications within two months following discharge, while no patients in group B contracted an infection. These included herpes zoster in group A (n=2) and herpes zoster, urinary tract infection and Pneumocystis jirovecii pneumonia in group C (n=3, one each). However, the incidence of infectious complications comparing groups A and B, and groups A and C was not statistically significantly different( p>0.05). There was no correlation between the incidence of infection and the total dose of glucocorticoids given during admission.Conclusion Although this study was retrospective and involved only a small number of patients with SLE, there is no increased risk of developing infectious complications in pa-tients receiving more than 30 mg of prednisolone daily at the time of hospital discharge, compared to those taking less than 30 mg. Based on these results, prolonging hospitalization only to reduce the dose of prednisolone to less than 30 mg daily lacks justifiable grounds, even if it has been a tacit consensus in Japan.
著者
川上 潔 池田 啓子 尾仲 達史
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ジストニアは自分の意思に反して、筋肉の収縮や硬直が持続する病気である。遺伝性ジストニアであるDYT12はナトリウムポンプα3サブユニット遺伝子(ATP1A3)の機能喪失変異が原因である。DYT12の病態解明を目的にAtp1a3遺伝子欠損マウスを解析した。当該マウスはジストニアを引き起こしやすく、小脳の抑制性神経の伝達効率亢進が観察された。この結果から、Atp1a3の機能喪失が抑制性神経の機能に影響し、ジストニアを引き起こすと考えられた。
著者
鯉渕 晴美 藤井 康友
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

表皮ブドウ球菌が生成したバイオフィルムに対し超音波を照射すると、これまで報告されてきた超音波強度よりも弱い強度でも、24時間照射すればバイオフィルムは破壊されることがわかった。さらに、培養皿に表皮ブドウ球菌液と液体培地を混和し、ここに超音波を照射することによって、超音波照射はバイオフィルム生成阻害にも寄与することが判明した。また、バイオフィルム生成の初期段階に超音波を照射すれば、より短時間の照射でも(20分)バイオフィルム形成阻害効果があることが証明された。これらより、カテーテル関連バイオフィルム血流感染症の発症予防に超音波照射が有用でありさらに実現可能であることが示唆された。
著者
高柳 友紀
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

下垂体後葉ホルモンのオキシトシンとその受容体は、社会行動と親和行動に重要であることが示されている。オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスには母性行動低下が認められた。一方で幼若期のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、母親から隔離したときの超音波発声がほとんど認められなかった。これらの結果は母仔親和行動において、母仔共にオキシトシン受容体が重要な因子であることを示している。また一方で、仔の成長後の行動は幼若期に母親から受けた愛着行動に強く影響をうけることが知られている。そこで、本研究では(1)母仔愛着行動においてオキシトシン系が活性化される脳部位の同定を行うこと、(2)幼若期のオキシトシン系活性化が仔の将来の行動を形成するという仮説を検証することを目的とした。母性行動誘発時にオキシトシン系が機能する脳部位を明らかにする目的で、神経活動マーカーであるc-Fosの免疫組織化学による解析を行った。仔に曝露して母性行動誘発刺激を与えたオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、外側中隔野、内側視索前野における神経活動が野生型に比べて顕著に少なく、これが母性行動低下に影響していることが示唆された。また、母仔分離をして仔が母への求愛行動を示す時にオキシトシン系が機能する脳部位を同定する目的で、オキシトシンとc-Fosの二重免疫染色による解析を行った。母と同腹仔から隔離した生後七日目のC57BL/6Jマウスにおいて、視索上核で神経活動マーカー陽性のオキシトシン産生ニューロンが多い傾向が認められ、室傍核のオキシトシン産生ニューロンにその傾向は見られなかった。また、C57BL/6J仔マウスに対して出生日から生後5日目までオキシトシン受容体アンタゴニストを連続投与し、成熟後の行動を解析した。Vehicle投与群と比較して情動行動には差が見られなかったが、社会行動において差が認められた。
著者
永井 睦 岡田 尚巳
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

(目的)HSV-tk/GCVを用いた遣伝子治療と同時に各種サイトカイン遣伝子を導入することによる治療研究を行う。導入する遣伝子として炎症性サイトカインであるMCP-1を用いた。in vitroでヒト悪性神経膠腫細胞にヒトMCP-1遺伝子を遺伝子導入し、これを同じ悪性神経膠腫細胞の担癌マウスにワクチンとして接種したときの治療効果を検討した。平成13年度はヌードマウスを担癌マウスとした。結果は腫瘍の縮小を認めず、治癒には至らなかった。しかし組織学的に検討した結果ワクチン接種の部位にmacrophageの漫潤を強く認め腫瘍部位にNK細胞とmacrophage両者の浸潤を認めた。このことからMCP-1遣伝子導入腫瘍細胞を用いたワクチン接種は宿主の抗腫瘍免疫を賦活させるものと考えられた。平成14年度はSCIDマウスを担癌マウスとした。この実験では腫瘍増殖が抑制され、治療効果を認めた。組織学的検討ではNK細胞の局所浸潤を認めた。ヌードマウスとSCIDマウスの系統の違いによる免疫応答の差を考慮すると、担癌マウスとして使用するマウスの系統による治療効果の違いにはB-cell機能の有無が重要な因子の一つであると考え、さらに追試を行っている。(目的)SCIDマウス疑似ヒト環境モデルの作製。すでに報告されている通りに6週齢のSCIDマウスに2Gyの放射線照射を前処理として行った。その後ヒト末梢血から単核球を精製し、その1×10^7個をマトリゲルとともにSCIDマウスの腹腔内に投与し、経時的にマウス血液中のヒト単核球の割合をFACScanを用いて計測した。マウス血液中にヒト単核球が確認された。しかしマウスはヒト末梢血接種後10〜14日後に殆どが死亡するためこれをヒト環境モデルとして使用可能にするために放射線照射量を減量するなどの対策を講じている。
著者
渡部 圭一
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、歴史民俗学的な視点から「頭役帳」の特徴を明らかにすることで、これまで等閑視されてきた宮座組織における長期的な帳簿(記帳史料)に対する研究の進展を図った。
著者
門田 行史 柳橋 達彦 古川 理恵子 三谷 忠宏 中島 振一郎 大貫 良幸
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

小児注意欠如多動症(ADHD)は、脳内のドーパミン(DA)とノルエピネフリン(NE)機能低下が主病態と考えられているが詳細は未だ不明である。近年目覚ましい発展を遂げている脳機能検査を駆使して小児に対して非侵襲的に黒質のDA機能と青斑核のNE機能の定量化を行いADHDの病態に迫る。具体的には、ADHD群と健常者群を対象に黒質NM・青斑核NEの濃度の変化、機能的脳イメージング計測(fMRI/NIRS)による脳活動の変異、多型解析による遺伝子多型を検証し、ADHDのDA/NE機能低下の原因となる複合的な病態の解明と診断・治療の判断基準となるマーカーを開発する。
著者
紺野 啓
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

超音波が細胞に与えるメカニカルストレスが、 培養細胞にもたらす種々の促進的効果を得ながら培養が行い得るシステムを開発した。初期の基礎的照射実験では超音波照射部である振動子の、次段階の実験では照射対象の、いずれも予想を大きく上回る温度上昇が判明したため、これらを回避しつつ目的とする効果が得られるよう装置の改良を進め、照射におけるおおまかな安全域を決定し得た。この条件は現在の装置で単純に設定できる範囲を超えるため、今後、装置の改良をさらに進める必要がある。
著者
永井 良三 相澤 健一 苅尾 七臣 今井 靖
出版者
自治医科大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

新しい治療法やデバイス、バイオマーカーが相次いで臨床現場に導入されている。しかしその有効性と安全性は必ずしも評価されていない。これをリアルタイムに行うためには、大規模リアルワールドデータを欠かせない。申請者は最近、全国7拠点施設の異なる電子カルテ情報を連結して統合するデータ集積システムを完成した(CLIDAS)。また、申請者らはこれまで様々なクリニカル質量分析装置を活用し、トランスオミックス解析により、多くのバイオマーカーの測定系を開発してきた。そこで本研究では、臨床ビッグデータとトランスオミックス解析を統合し、新しい心臓病学パラダイムを構築する。
著者
岡崎 仁昭 長嶋 孝夫 佐藤 英智 平田 大介
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

【目的】スタチン類はHMG-CoA還元酵素抑制によるコレステロール低下作用以外にも様々な多面的効果(pleiotropic effect)を持ち、近年、免疫抑制作用を有することが注目されている。我々はスタチン類の免疫抑制作用の機序をアポトーシス誘導作用の観点から研究を進め、脂溶性スタチンのフルバスタチンは活性化T細胞と培養RA滑膜細胞に対してアポトーシス誘導能を有し、その機序としてprotein prenylation阻害に基づくことを見出した。今回はスタチン類がループスモデルマウス(MRL-lpr/lpr)に対して治療効果を示すか否かを検討した。【結果】既に自己免疫病を発症している生後4か月齢のMRL-lpr/lprマウス計60匹をコントロール群、フルバスタチン投与群(10mg/kg)、副腎皮質ステロイド投与群(10mg/kg)の3群に分け、週3回腹腔内継続投与した。(1)投与開始4か月後の生存率:コントロール(C)群(50%)、フルバスタチン(F)投与群(55%)、副腎皮質ステロイド(S)投与群(90%)(2)尿所見:C群1.3±0.4、F群0.4±0.2、S群0.6±0.2(3)血清抗ds-DNA抗体価(EU):C群62.9±24.9、F群178.6±88.6、S群17.7±5.3(4)血清INF-γ(ng/ml):C群45.1±12.7、F群34.4±5.7、S群16.0±3.9【考察】今回のフルバスタチン投与実験(投与量と期間)では蛋白尿減少作用を認めたが、長期的生存率は上昇させなかった。血清抗ds-DNA抗体価はフルバスタチン投与群では逆に上昇傾向であった。スタチンには薬剤誘発性ループスの症例報告もあり、全身性エリテマトーデス(SLE)患者に投与する場合には注意を要すると考えられた。【臨床への応用】リウマチ膠原病患者は動脈硬化を合併しやすいことが報告されている。スタチン類がその抗動脈硬化作用に加えて、免疫調節作用をも有していれば、リウマチ膠原病に対する新たな治療薬となり得ることが期待される。
著者
長嶋 雅子
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

注意欠如・多動障害(ADHD)治療薬の塩酸メチルフェニデート徐放剤(MPH)内服歴のないADHD児に関して、自閉症スペクトラム(ASD)の併存の有無別に、MPHの効果を近赤外線光トポグラフィー(fNIRS)を用いた無作為二重盲検試験を抑制機能課題で行った。右前頭前野で、ASD併存なし群では、MPH内服前には活動がなかったが、内服後に見られた。ASD併存あり群では、内服前に有意傾向の活動があったが、内服後にはなかった。行動評価では、MPH内服前、内服1ヵ月後の比較で両群とも有意に改善があった。MPH有効例でASD併存の有無により病態が異なることが示唆された。今後はMPH無効例において検証を行う。