著者
嘉手納 志乃
出版者
The Kyorin Medical Society
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.85-92, 2007

自閉性障害,アスペルガー障害および特定不能の広汎性発達障害における記憶機能の異同を,標準化された記憶機能検査(Wechsler Memory Scale-Revised以下,WMS-R)を用いて検討した。その結果,「言語性記憶」「一般的記憶」「遅延再生」において有意な主効果が認められ,自閉性障害では3指標とも他の2群に比して有意に劣っていた。さらに,広汎性発達障害に特異的に認められる記憶想起現象であるtime slip現象について,記憶機能との関係を検討した。time slip現象の出現率は3群間で有意差は認められなかった。さらに記憶指標とtime slip現象の関係を検討したところ,「遅延再生」が高いほどtime slip現象が起こりやすく,また「言語性記憶」が高いほどtime slip現象は抑制されやすいという結果を得た。