著者
四元 真弓 餅原 尚子 久留 一郎
出版者
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科
雑誌
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科紀要 (ISSN:18809944)
巻号頁・発行日
no.8, pp.39-47, 2013-03

現代社会において,感情労働という用語は,医療・福祉・教育など, さまざまな分野で用いられるようになってきた。 しかしながら,心理学の分野における研究は少なく,臨床心理士を研究協力者としたものは,いまだ蓄積されていない。そのため,本稿では,精神科医療で働く臨床心理士を対象にしてインタビュー調査を実施し,臨床心理士の感情労働について臨床心理学的視点から検討をした。その結果,臨床心理士の感情労働は,"人間性"と"専門性"から成立しており,臨床心理士はその両者のバランス感覚を保持することが大切であることが明らかになった。また,今回の調査より,臨床心理士の感情労働は、 日常の場面においても「自己一致」が(完全ではないが)得られていた。これは,臨床心理士の職務における訓練と技能のたまものであり,「自己一致」について理解と認識をもつ臨床心理士の専門性における特色が示唆された。