著者
四元 真弓 餅原 尚子 久留 一郎
出版者
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科
雑誌
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科紀要 (ISSN:18809944)
巻号頁・発行日
no.8, pp.39-47, 2013-03

現代社会において,感情労働という用語は,医療・福祉・教育など, さまざまな分野で用いられるようになってきた。 しかしながら,心理学の分野における研究は少なく,臨床心理士を研究協力者としたものは,いまだ蓄積されていない。そのため,本稿では,精神科医療で働く臨床心理士を対象にしてインタビュー調査を実施し,臨床心理士の感情労働について臨床心理学的視点から検討をした。その結果,臨床心理士の感情労働は,"人間性"と"専門性"から成立しており,臨床心理士はその両者のバランス感覚を保持することが大切であることが明らかになった。また,今回の調査より,臨床心理士の感情労働は、 日常の場面においても「自己一致」が(完全ではないが)得られていた。これは,臨床心理士の職務における訓練と技能のたまものであり,「自己一致」について理解と認識をもつ臨床心理士の専門性における特色が示唆された。
著者
中園 博文
出版者
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科
雑誌
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科紀要 (ISSN:18809944)
巻号頁・発行日
no.13, pp.13-21, 2018-03

本研究では,保育士から「気になる子ども」として支援が必要と思われた子どもへの支援とその保護者に対する対応について,発達検査を用いた保育園での取り組みである。保育士は日ごろの保育の中で,視線が合わない,言葉でのやりとりが成立しにくい,新奇場面に弱い,集団に入れない,基本的生活習慣が身についていないなどの「気になる子ども」と認識していながらも,年齢相応の発達段階なのか,特別な発達支援を必要としている状態であるのかを判断することに日々悩み葛藤しながら保育にあたっていた。また,発達支援が必要となった場合に保護者にどのように説明したら良いのかを分からず,伝えられずに躊躇している例も多くみられていた。保護者に発達の遅れや発達支援の必要性を伝えたとき,怒りや拒否などの感情を表出したり,睨んだり,そっけない態度を示す保護者も見られ,保育士と保護者との間に亀裂が入ってしまい,なおいっそう悩みが深くなってしまうことも度々見られていた。そのような中,筆者は保育士が子どもの発達を主観的な判断ではなく,客観的な判断ができるように,発達検査を導入することにした。はじめての発達検査で検査方法や解釈などについて戸惑う保育士もいたが,検査結果と保育室での子どもの姿が重なり見えてくると,検査結果を元に日々の保育の申で子どもに対する発達課題と支援方法を考えるきっかけになったと話をする保育士もいた。保護者対応については,保護者にも発達検査をとってもらうことで納得して子どもの発達段階を受容できる可能性があることを知ることができた。発達検査をとることは保育士にも子どもにも保護者にもそれぞれにメリットがあることが感じた。保育士が発達検査を利用し,気になる子どもの支援や保護者対応した事例を振り返り,保育における発達検査の果たす役割を考察した。