著者
小松 俊文 四宮 義昭 石田 啓祐
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.73, pp.61-63, 2003-03-20
被引用文献数
1

2時間ちょっと.四国がこんなに近いことが信じられなかった.京都で10時のバスに乗り, 淡路島を経由して鳴門に着いたのが12時半.確かに時刻表どおり.しかし, 本当に2時間そこそこで着いてしまうとは….以前, 徳島を訪ねた時は, JRで瀬戸大橋を渡り, 初日は移動日で翌日からが化石採集.徳島の化石産地を訪ねるのは, それなりの準備と覚悟が必要だった.ところが, 今では京都・大阪在住の化石愛好家にとって, 車さえあれば十分日帰りの地域になっている.徳島県には白亜系の地層が広く分布する.勝浦盆地周辺にはアンモナイトや二枚貝, 植物化石などを豊富に産出する主に白亜系下部の堆積物が広がり(沼野・中野, 1964;Nakai and Matsumoto, 1968;小川, 1971;前田他, 1987;松川・江藤, 1987;石田・橋本, 1991;石田ほか, 1992), 瀬戸内周辺には, 白亜系上部の和泉層群が露出する.また, 古生代や中生代三畳紀, ジュラ紀の化石を含む地層もあり, 化石の種類や産出量は申し分ない.多くの化石愛好家が育つのはあたり前の環境である.今回, 著者の一人である小松は勝浦盆地の傍示(ぼうじ)層・藤川層の化石産地を案内してもらう目的で, 徳島化石同好会の方々にお会いした.なお, この記事はその時の体験にもとづいて記されている.