著者
永田 紘樹 小松 俊文 シュリージン ボリス 石田 直人 佐藤 正
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.59-69, 2015-02-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
74
被引用文献数
2 2

島根県西部に分布する下部ジュラ系樋口層群の調査を行い,樋口層群を新たに下位より尾路地谷層と樋口谷層に区分した.尾路地谷層は,礫岩,砂岩,泥岩からなり,二枚貝化石のOxytoma sp.や“Pleuromya” sp.を産出する.樋口谷層は,軟体動物化石を含む暗灰色泥岩を主体とする.樋口谷層からは,6属6種の二枚貝化石,Kolymonectes staeschei,Palmoxytoma cygnipes,Ryderia texturata,Pseudomytiloides matsumotoi,Oxytoma sp., “Pleuromya” sp.が産出する.本層群の二枚貝化石群は,ロシアやカナダ北部に分布する下部ジュラ系から産する北方系のフォーナであるK. staescheiやP. cygnipesを含み,典型的なテチス系の種を含まない特徴がある.
著者
小松 俊文 北村 健治
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.72, pp.48-50, 2002-09-20

「あった〜, アンモナイトだ〜」子供達の声が急峻なアルプスの斜面に木霊する.「戸台の化石」学習会も昨年で46回目を重ねた.「南アルプス戸台」.年配のアルピニストにとっては馴染みの地名である.標高1000m.原生林と高山植物, 静かな谷合に響く渓流の調は谷間の孤島を思わせる.しかし, 「戸台」を知る者は, なにもアルピニストばかりではない.動物, 植物, 昆虫学者や地質学者, 特に化石愛好家にとっては馴染み深い地名である.この地域には, 一億年以上昔の白亜紀の地層(戸台層)があり, 中生代を代表する二枚貝化石の"三角貝"やアンモナイトの産地がある(佐藤, 1919;江原, 1931;前田ほか, 1965;北村ほか, 1979;田代ほか1983, 1986;小畠, 1987;図1-3).戸台の"三角貝"の研究は古く, 信州の鉱物や化石の採集家として有名な保科(五無齋)百助が明治30年ごろに"三角貝"化石を初めて採集し, 明治32(1899)年に脇水鉄五郎が, この標本を日本で2番目の"三角貝"化石の産出記録として地質学雑誌に報告した(脇水, 1899).その後, 北村健治(現明星高校教諭)によって, 多くのアンモナイトや二枚貝, ウニ, ウミユリ, サンゴなどの化石が発見され, 最近では南アルプスの化石産地として良く知られるようになった(北村, 1966, 1978, 1987, 1992).
著者
小松 俊文 四宮 義昭 石田 啓祐
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.73, pp.61-63, 2003-03-20
被引用文献数
1

2時間ちょっと.四国がこんなに近いことが信じられなかった.京都で10時のバスに乗り, 淡路島を経由して鳴門に着いたのが12時半.確かに時刻表どおり.しかし, 本当に2時間そこそこで着いてしまうとは….以前, 徳島を訪ねた時は, JRで瀬戸大橋を渡り, 初日は移動日で翌日からが化石採集.徳島の化石産地を訪ねるのは, それなりの準備と覚悟が必要だった.ところが, 今では京都・大阪在住の化石愛好家にとって, 車さえあれば十分日帰りの地域になっている.徳島県には白亜系の地層が広く分布する.勝浦盆地周辺にはアンモナイトや二枚貝, 植物化石などを豊富に産出する主に白亜系下部の堆積物が広がり(沼野・中野, 1964;Nakai and Matsumoto, 1968;小川, 1971;前田他, 1987;松川・江藤, 1987;石田・橋本, 1991;石田ほか, 1992), 瀬戸内周辺には, 白亜系上部の和泉層群が露出する.また, 古生代や中生代三畳紀, ジュラ紀の化石を含む地層もあり, 化石の種類や産出量は申し分ない.多くの化石愛好家が育つのはあたり前の環境である.今回, 著者の一人である小松は勝浦盆地の傍示(ぼうじ)層・藤川層の化石産地を案内してもらう目的で, 徳島化石同好会の方々にお会いした.なお, この記事はその時の体験にもとづいて記されている.