- 著者
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四釜 綾子
- 雑誌
- 玉川大学経営学部紀要
- 巻号頁・発行日
- no.31, pp.1-16, 2020-03-20
少子高齢化社会へと突き進む日本では,近年働き手の不足から事業の発展が危ぶまれる分野を中心に外国人労働者が求められ,2019年4月から入国管理法を改正して「特定技能」資格での外国人労働者の導入が始まった。滞在期限もなく家族の帯同も許可された新しい在留資格を設けてもなお,日本は「移民の導入ではない」と主張し,彼らの社会的統合を進める政策は打ち出していない。今回,受け入れ側が入国する外国人労働者の支援計画を作成し,日常生活のサポート,あるいは日本語教育の機会を義務付けるという新しい支援体制を策定した。しかしこれは政府主導ではなく,あくまで受け入れ側に任されている。社会的統合政策の一部とも言える支援体制は,在留外国人のニーズに近づいたとも言え,現在外国人労働者が抱える問題を解決する糸口になり得るが,受け入れ側の負担は大きい。また身近な外食店や介護の場,自分の職場で実際に外国人労働者に接する機会が増えるにつれ,日本社会は「どこかにいる外国人」ではなく「近所の外国人」や「同僚」に変わり,より身近な存在になっていくことは間違いない。しかし,政府が彼らは母国に帰る一時滞在者という主張と政策を続ける限り,受け入れ側の日本社会の意識も大きく影響される。日本と同様に血統主義を重んじ移民との共生を拒んできた歴史のあるドイツは,移民を社会的に統合する方針へと大きく変換した。本稿では政府と外国人労働者,そして日本の人々を3 つの視点から捉え,それらがどの程度重なるのかを考えた。それぞれがより近づき,互いのニーズと協力点を重視しなければならない。日本で働く外国人と受け入れ側の日本人社会との間に溝を作らぬよう,改正された入管法がどう機能するのか注視したい。