著者
鹿野 勘次 國光 正宏 杉山 政広
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.329-338, 2001-11-25 (Released:2017-07-14)

岐阜県白川村の手取層群から産出した恐竜の足跡化石について足痕学的研究を行い,堆積学的検討を加えた.白川村大白川上流地域には,手取層群の石徹白亜層群と赤岩亜層群が2,200m以上の厚さで分布する.足跡化石は石徹白亜層群のカギ谷砂岩層最上部にあたる層準において,漣痕が発達した細粒砂岩層の上面に見出された.足跡の可能性のある36個の窪みのうち恐竜の足印と判定できたものは17個である.足印の一部は明瞭に3指性を示すことと,その形態的な特徴から,鳥脚類の恐竜により印跡されたものと推定される.足印の多くは判別できる範囲において類似した形態をもち,ほぼ西から東への移動を示す2組の行跡が識別され,また多くの足印が同じ方向を向いていることから,集団で流路を横断していたことが判明した.