著者
國分 篤志
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.276, pp.97-121, 2014-02-28

原始・古代の日本列島で実修された占いとして、『古事記』・『日本書紀』などにみえる「太占」(ふとまに)がある。これは、例えば『古事記』神代巻天岩屋戸条において、「天の香山の眞男鹿の肩を内抜きに抜きて、天の香山の天の朱桜を取りて、占合いまかなはしめて...」とあるように、シカなどの肩胛骨を素材に、火箸状のもので焦げ目を付け(焼灼)、その罅を観て占うものであり、占いに用いた痕跡の残る獣骨が「卜骨」である。卜骨は、弥生時代から平安時代前期に至るまで、手法・形態・素材を変えつつも考古遺物として存在を確認できる。その消長を大局的にみると、帰属時期は弥生時代前期~古墳時代初頭と、古墳時代後期~奈良・平安時代の2つの時期に大別でき、中間に当たる古墳時代前~中期に帰属する事例は僅少である。本稿ではこのうち、より資料点数が多く分布範囲も広い前者の時期を中心に、型式学的な見地から扱うこととする。弥生時代~古墳時代初頭の卜骨は、全国で20都府県54遺跡での出土が報告されている(第1図・第1表)。当該期における時期差・地域差などを明らかにしたい。なお、引用した卜骨の実測図のうち、肩胛骨を素材としたものでは、関節窩が下になるように配置させていただいていることをお断りしておく。千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第276集 『型式論の実践的研究II』柳澤 清一 編"Pratical Study of Typology II", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.276