著者
萩谷 英大 國米 由美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.405-411, 2012
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;院内感染対策活動において職業感染防止策の徹底は,医療従事者を感染症から守るという意味において非常に重要である.医療従事者は日常的に感染症に曝露する可能性が高く,ワクチン予防可能疾患に対しては積極的にワクチン接種を行い,予防することが推奨されている.<br> &nbsp;&nbsp;集中治療室における汎発性帯状疱疹患者の発生,手術室における流行性耳下腺炎患者の緊急手術事例をきっかけに,当院関連施設の全職員を対象としたワクチン接種活動を行うこととなった.対象疾患は麻疹,風疹,流行性耳下腺炎,水痘帯状疱疹の4疾患,対象人数は984人であった.発案・計画から抗体価測定,抗体陰性者に対する2回のワクチン接種の完了まで約7ヶ月という短期間で終了し,抗体価低値者全体におけるワクチン接種率は麻疹81.9%,風疹76.9%,流行性耳下腺炎76.2%,水痘帯状疱疹60%であった.<br> &nbsp;&nbsp;院内でワクチン予防可能疾患の発症事例が続いたこと,Infection Control Teamだけでなく業務改善など他の事業と関連付けて他部署と協力して活動したこと,抗体価検査の全額とワクチン接種費用の半額を病院負担としたこと,ワクチンの同時接種を院内コンセンサスとして認めたこと,などが短期間で多数の職員に対して高い接種率でワクチン接種を完遂できた要因と考えられた.<br>