著者
春木 祐人 萩谷 英大 佐久間 晶子 春木 麻衣 岡 泰江 杉山 哲大 川上 恭弘 近藤 祥代
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.8, pp.987-990, 2015 (Released:2015-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Intravenous azithromycin (AZM) was approved for use in December 2011 in Japan. In general, intravenous AZM injections are diluted to 1 mg/mL, with a total infusion volume of 500 mL to avoid phlebitis. Patients in intensive care units (ICUs) require small infusion volumes. We retrospectively evaluated the total AZM infusion volume in 65 ICU patients receiving AZM treatment from December 2011 to August 2014. Thirteen patients (20.0%) received a reduced volume [100 mL (5 mg/mL) or 250 mL (2 mg/mL)] using an infusion pump over 2 h. No peripheral phlebitis was observed in any patient. Based on this result, it is assumed that AZM can be safely administered to ICU patients even though the volume of solvent is reduced. AZM is widely recommended for the treatment of community-acquired respiratory infections and is used in patients with severe infections. Further investigation is required in additional patients to understand the effects of AZM volume reduction in greater detail.
著者
飯尾 耕治 後藤 和義 萩谷 英大 小川 寛人 三好 諒 大塚 文男 東影 明人
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.248-255, 2023-04-25 (Released:2023-04-25)
参考文献数
19

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミックにより,医療機関において新興感染症に対する検査体制を整備することの重要性が再認識された。特に短期間で変異を繰り返すSARS-CoV-2のモニタリングとして,次世代シークエンス(NGS)解析が非常に有効なツールであることが立証された。国内におけるCOVID-19に対するPCR検査体制は,迅速かつ操作性が簡便な自動PCR装置の普及により,早期診断と迅速な感染対策が可能となったものの,ゲノム解析実施数は世界的に見ても少なく,積極的疫学調査が十分行えているとは言えない。今後COVID-19を含めた新興感染症の流行を正確に把握し適切な感染対策を講じるためには,変異の発生や頻度を可能な限り早期に把握するため,ゲノム解析を通じたウイルス変異株の同定と分析を迅速に行う体制整備が求められている。今回,我々は院内臨床検査室でも実施可能な全ゲノム解析アプローチの手法を構築することを目的として,高性能でありながら低コスト・簡便性の特徴を持つOxford Nanopore社のMinIONを用いて,日常業務において実践可能な全ゲノム解析のためのプロトコール作成に取り組んだ。実験材料の入手や感染症遺伝子検査に精通した人材の育成などの課題はあるものの,臨床検査室の日常業務にシーケンシング技術を取り込むことにより,新興感染症の疫学解析に貢献するのみならず,細菌の同定や薬剤耐性菌の遺伝子学的解析など今後さらなる臨床微生物学への応用が期待される。
著者
萩谷 英大 國米 由美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.405-411, 2012
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;院内感染対策活動において職業感染防止策の徹底は,医療従事者を感染症から守るという意味において非常に重要である.医療従事者は日常的に感染症に曝露する可能性が高く,ワクチン予防可能疾患に対しては積極的にワクチン接種を行い,予防することが推奨されている.<br> &nbsp;&nbsp;集中治療室における汎発性帯状疱疹患者の発生,手術室における流行性耳下腺炎患者の緊急手術事例をきっかけに,当院関連施設の全職員を対象としたワクチン接種活動を行うこととなった.対象疾患は麻疹,風疹,流行性耳下腺炎,水痘帯状疱疹の4疾患,対象人数は984人であった.発案・計画から抗体価測定,抗体陰性者に対する2回のワクチン接種の完了まで約7ヶ月という短期間で終了し,抗体価低値者全体におけるワクチン接種率は麻疹81.9%,風疹76.9%,流行性耳下腺炎76.2%,水痘帯状疱疹60%であった.<br> &nbsp;&nbsp;院内でワクチン予防可能疾患の発症事例が続いたこと,Infection Control Teamだけでなく業務改善など他の事業と関連付けて他部署と協力して活動したこと,抗体価検査の全額とワクチン接種費用の半額を病院負担としたこと,ワクチンの同時接種を院内コンセンサスとして認めたこと,などが短期間で多数の職員に対して高い接種率でワクチン接種を完遂できた要因と考えられた.<br>
著者
萩谷 英大 小古山 学 赤堀 洋一郎 河原 義文 内藤 宏道 萩岡 信吾 森本 直樹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.431-436, 2013-07-15 (Released:2013-10-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

患者は慢性関節リウマチのため少量のプレドニゾロンとサラゾスルファピリジンを長期内服中の79歳の女性である。右大腿骨骨折に対する骨接合術のため入院中であったが,術後13日目に突然の腹痛が出現した。腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CTにて腹腔内に遊離ガスと液体貯留を認めたため消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎が疑われた。しかし同時に内部にガス産生を伴う腫大した子宮を認めたため経膣的ドレナージを施行すると大量の排膿があり,子宮留膿腫の穿孔に伴う汎発性腹膜炎の診断にて開腹手術となった。子宮底に穿孔部位を認め,子宮全摘術および両側付属器切除術を施行し,術後エンドトキシン吸着療法を含めた集学的治療により軽快した。子宮留膿腫は高齢女性にみられる予後良好の慢性疾患である。しかし稀に腹腔内に穿孔し汎発性腹膜炎の原因となり,致死的な疾患となり得ることが報告されている。腹腔内の遊離ガスと液体貯留を呈することが多いため,消化管穿孔の診断のもと開腹手術となり術中に診断されることが多く,術前診断率が低いことが指摘されている。本症例はステロイドと免疫抑制薬を長期併用する慢性関節リウマチ患者に発症した穿孔例であるが,急性腹症として発症する前に明らかな下腹部痛,異常帯下などは認めなかった。腹部CTにて子宮留膿腫の穿孔を疑ったことが,迅速な婦人科紹介,経膣的ドレナージ,適切な術式選択につながり救命できたものと考えられた。一般的に腹腔内の遊離ガスと液体貯留を伴う急性腹症の原因は消化管穿孔と考えられるが,高齢女性においては稀に子宮留膿腫の穿孔があることを救急医は認識しておくべきである。
著者
萩谷 英大 塩田 澄子 三好 伸一 黒江 泰利 野島 宏悦 大谷 晋吉 杉山 淳一 内藤 宏道 川西 進 萩岡 信吾 森本 直樹
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.35-39, 2013-04-01 (Released:2013-05-01)
参考文献数
22

A 68-year-old man with alcohol addiction, who lived in the suburbs of Tsuyama, an inland city located in northeast Okayama prefecture, was transported to the emergency unit of the Tsuyama Central Hospital in a state of cardiopulmonary arrest (CPA). Despite rigorous systemic investigation and treatment, the patient died 2 hours after arrival. After his death, Vibrio vulnificus was isolated from his blood culture. Vibrio vulnificus causes fatal infection in humans, usually only in areas located close to the sea where appropriate temperature and suitable salt concentration for its growth are available. Therefore, its occurrence is epidemiologically restricted ; in Japan, the western coastal areas, especially in summers, are reported to be the high-risk regions. This is a rare case because it occurred in a city approximately 50 kilometers from both the Sea of Japan and the Pacific coast of Okayama, and at the end of October in 2011. Economic development and distribution systems have made it possible to transport various food products from coastal areas or abroad to any place in a short time, such that these infections can potentially develop in areas other than expected. We should be aware of the increasing risk of Vibrio vulnificus infection during any season and at any place, especially in patients with abnormal liver function.