著者
柳井 亮二 武田 篤信 吉村 武 園田 康平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.74-82, 2014
被引用文献数
2

ぶどう膜炎とは,狭義には「ぶどう膜組織の炎症」であるが,臨床的には「眼内の全ての炎症」を指す.ぶどう膜炎は単一の疾患概念ではなく,自己免疫疾患,感染症,造血器悪性腫瘍など多種多様な原因や背景をもとに発症する.ぶどう膜炎の多くは再発する可能性のある慢性病であり,姑息的に眼炎症をコントロールするだけでなく,長期的観点から患者の視機能の維持を考える必要がある.Behçét病は,放置すれば中途失明に至る重篤な全身疾患である.コルヒチン・シクロスポリンを中心とした従来の治療法に抵抗性の患者が多く,視機能予後の悪いぶどう膜炎の代表格であった.しかしながら,2007年から始まった生物学的製剤である抗TNF-α療法はBehçét病の治療に大きな変革をもたらしている.眼発作回数が激減したことで,患者が失明の恐怖から解放されたと言っても過言ではない.現在,Behçét病以外のぶどう膜炎では生物学的製剤の使用が認められていない.しかし,遷延化したVogt-小柳-原田病やサルコイドーシスの患者では副腎皮質ステロイドでの治療が難しく,新たな治療が求められている.本稿ではぶどう膜炎の病態について概説し,生物学的製剤を用いた新規治療についての現況を報告する.