著者
伊藤 晴康 野田 健太郎 平井 健一郎 浮地 太郎 古谷 裕和 黒坂 大太郎
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.145-149, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 or 0

症例は15歳の女性.20XX年8月と9月に2価Human papillomavirus(HPV)ワクチンの接種を行った.2回目の接種後から全身の疼痛,顔面の日光過敏と両側肘部に多発する紫斑を認めた.11月頃より持続する37℃台の発熱と全身倦怠が出現した.20XX+1年1月上旬には39℃以上の発熱と全身の疼痛に加えて関節痛が出現した為,精査目的に入院となった.入院後,Systemic Lupus International Collaborative Clinics(SLICC)2012の分類基準のうち,臨床的項目の頬部紅斑,光線過敏症,関節炎,リンパ球減少と免疫学的項目の抗核抗体陽性,抗ds-DNA抗体陽性,抗Sm抗体陽性を認め,SLEと分類した.その他,筋膜炎の合併を認めた.本症例を含め今までに報告されている症例を検討したところHPVワクチン摂取後にSLEを発症する症例は,自己免疫性疾患の既往歴や家族歴のある患者が多かった. また,SLEの症状は2回目の接種後に出現することが多かった.
著者
國松 淳和 前田 淳子 渡邊 梨里 加藤 温 岸田 大 矢崎 正英 中村 昭則
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.130-139, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
28

背景:家族性地中海熱(FMF)は不明熱の原因としては稀であるが,近年本邦でも疾患認知が高まり,診断数が増加してきている.著者らは「短期間で終息する発熱エピソードが反復する」という発熱パターンに注目することによって,一般内科外来で多くのFMFを診断してきた.当科FMF30例の臨床データを解析することにより,診断のための注意点について論ずることを本調査研究の目的とした.対象:2012年9月02015年8月までの3年間に当科でFMFとして診療された全患者を対象とした.Tel-Hashomer基準を満たさないものは除外した.結果:対象となったのは38例で,このうちTel-Hashomer基準を満たしていたのは30例だった.14例でMEFV遺伝子変異が見いだされ,変異の有る例が少ない傾向にあった.平均発症年齢は27.8歳と高かったが,典型発作を有する例は17例(56.7%),コルヒチン抵抗性例は3例(10.7%)と既報とほぼ同等だった.結論:FMFは外来に多く潜在し得る.発熱するが数日で自然軽快し,それを周期性に反復する病像に注目すべきである.
著者
笹原 洋二 土屋 滋
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.140-147, 2005 (Released:2005-06-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2 or 0

Wiskott-Aldrich症候群(WAS)は,WASP遺伝子変異により発症するX染色体連鎖性原発性免疫不全症である.WASPは主に造血細胞に発現しており,様々な細胞刺激,特にT細胞受容体シグナル伝達系刺激に反応してアクチン細胞骨格系を司る分子であり,T細胞-抗原提示細胞間やNK細胞-標的細胞間の免疫学的シナプスに局在する分子である.近年のWASの基礎的,臨床的な研究の蓄積によって,WASPとその関連分子群,結合分子群や,細胞骨格系の制御,WAS患者での免疫不全の病態や臨床的予後の予測に果たす役割についてより深く理解されるようになってきた.特に,筆者らはWIP (WASP-interacting protein)がWASPの分子制御に重要な役割を果たすことを報告した.ここでは,これらの最近の知見を総説し,加えてWASに対する遺伝子治療の最近の基礎的研究の現況について概説する.
著者
山崎 雅英
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.357-364, 2005 (Released:2005-12-31)
参考文献数
11
被引用文献数
4 or 2

反復性血栓症と不育症を特徴とする自己免疫性血栓性疾患である抗リン脂質抗体症候群の中に,微小血栓により短期間に多臓器不全をきたす予後不良の一群があり近年注目されている.このような疾患群を「劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)」という.CAPSは感染症や抗血栓療法の変更,手術(抜歯などの小手術を含む)を契機に,SLEや原発性抗リン脂質抗体症候群症例に多く発症し,脳血管系・呼吸器系・腎臓・皮膚などのほか,全身のすべての臓器に微小血栓をきたす.確立した治療法は無いが,強力な抗凝固療法と大量ステロイド療法がおこなわれるほか,血漿交換も併用されることが多い.我々の経験では,抗リン脂質抗体や抗二重鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体),補体などを選択的に吸着する血漿吸着療法を血漿交換の代わりに用いることにより良好な成績が得られている.血漿吸着療法は血漿交換と比較して新鮮凍結血漿などの血液製剤の補充が不要であり,輸血関連合併症もないことからCAPSを含む抗リン脂質抗体症候群に対し考慮すべき治療法の1つと考えられる.
著者
横田 俊平 黒岩 義之 西岡 久寿樹
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.288a-288a, 2015 (Released:2015-10-25)

ヒト・パピローマウイルス(HPV)は一般的な感染因子であり,子宮頸部基底細胞への感染は部分的には癌発症の契機になる.子宮頸癌を予防する目的でHPVワクチンが開発され(CervarixとGardasil),約340万人の若年女性に接種が行われた.しかし,HPVワクチン接種後より全身痛,頭痛,生理異常,病的だるさ・脱力・不随意運動,立ちくらみ・繰り返す便秘・下痢,光過敏・音過敏,集中力低下・計算力と書字力の低下・記憶障害などを呈する思春期女性が増加している.「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と仮称し,当科外来を受診した51例の臨床症状の把握とその体系化を行った.すべての症例は,HPVワクチン接種前は良好な健康状態・知的状態にあり,接種後,全例が一様に一連の症候の重層化,すなわち,疼痛性障害,不随意運動を含む運動器機能障害,感覚障害,生理異常,自律神経障害,高次脳機能障害と進展することを確認した.このように幅広いスペクトラムの疾患の記載はこれまでになく,これらの症候を同時に呈する中枢神経障害部位についての検討をすすめ,「視床下部 下垂体病変」と捉えられることが判明した.病態形成にはミクログリアが関わる自然免疫,HPVワクチン抗原のペプチドと特異なHLAが関わる適応免疫の両者が,強力なアジバントの刺激を受けて視床下部の炎症を繰り返し誘導していると考えている.治療にはramelteon(circadian rhythmの回復),memantine(シナプス伝達の改善),theophylin(phosphodiesterase inhibitorの抑制)を用い対症的には対応が可能となったが,病態に根本的に介入できる薬剤はいまだ手にしていない.
著者
坊垣 暁之 渥美 達也
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.125-132, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
78

細胞死は,発生,分化,炎症,自己免疫,発癌等,さまざまな現象に関わっている.細胞死の分子レベルの研究は,アポトーシスを中心に行われてきたが,アポトーシス以外にもプログラムされたさまざまな細胞死が哺乳類細胞で認められる.非アポトーシス型細胞死機構の中でオートファジーとネクロプトーシスにおいて分子機構が解明されつつあり注目される.オートファジーは,酵母から哺乳類に至るまで進化的に保存された機構であり生体の恒常性維持に必要である.オートファジーとヒト疾患との関係が示されており,本稿では,オートファジーの自己免疫疾患における位置づけについて概説した.
著者
向野 晃弘 中根 俊成 樋口 理 中村 英樹 川上 純 松尾 秀徳
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.334b-334b, 2014 (Released:2014-10-07)

【背景】抗ganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)抗体は自律神経節に存在するgAChRを標的とし,一次性自律神経性ニューロパチーの約50%で検出されることが報告されている.一方,シェーグレン症候群(SS)に認められる自律神経障害の原因は未解明である.今回我々は著明な自律神経症状を合併したSSにおける抗gAChR抗体陽性例と陰性例間の臨床症状について比較検討を行った.【対象】SSと臨床診断された11症例の血清および各種臨床情報を対象とした.【方法】ルシフェラーゼ免疫沈降法(LIPS法)を用いて抗gAChR抗体測定を行った.また,提供された各種臨床情報をもとに抗gAChR抗体陽性例と陰性例の自律神経症状等を比較検討した.【結果】SSを合併した検体11例中,5例(45.5%)で当該抗体が陽性であった.抗体陽性群5症例では先行感染ありが3例(60%)で,全例で起立性低血圧を合併していた.陰性群6症例では起立性低血圧4例(66.7%)見られた.両群とも消化器症状,排尿障害を合併していた.【考察】著明な自律神経障害を呈するSSのうち45.5%もの症例で本抗体が陽性であったことは,この抗体の病態における役割を考える上で興味深い数値である.抗体陽性と陰性の臨床像の違いを見出すには今後更に症例を蓄積し,他の検査所見や合併症の確認や免疫治療の有効性を検討する必要がある.
著者
松下 貴史 佐藤 伸一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.333-342, 2005 (Released:2005-11-05)
参考文献数
64
被引用文献数
4 or 0

B細胞の生存・分化・抗体産生に重要な役割を果たすBAFF (B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)はTNFファミリーに属する分子で単球,マクロファージ,樹状細胞の細胞膜上に発現され,可溶型として分泌される.BAFFの受容体にはBAFF-R (BAFF receptor), BCMA (B-cell maturation antigen)およびTACI (transmembrane activator and calcium-modulator and cyclophilin ligand interactor)の3種類が知られておりいずれもB細胞の広範な分化段階において発現がみられる.BAFFシグナルは主にBAFF-Rを介して伝えられ,TACIは抑制性のシグナルを伝達している.BAFFはB細胞上の受容体との結合により未熟B細胞の生存と分化,成熟B細胞の増殖,自己反応性B細胞の生存を制御する.BAFF過剰発現マウスでは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)やSjögren症候群に類似した症状を呈する.さらにSLE自然発症モデルマウスや関節リウマチ(rheumatoid arthritis ; RA)モデルマウスであるコラーゲン誘導関節炎においてBAFFアンタゴニストの投与にて症状が改善することが明らかにされた.そしてSLEやRA,Sjögren症候群,全身性強皮症の患者において血清BAFF濃度の上昇が報告されている.BAFFは末梢性B細胞の分化・生存に影響することから,BAFF/BAFF受容体の異常が末梢性トレランスの破綻を来たし,リウマチ性疾患の発症に関与していると推測される.近年SLEやRAにおいてB細胞をターゲットした治療が脚光を浴びており, BAFFが有望な治療標的となることが期待されている.

4 0 0 0 OA B細胞

著者
長谷川 稔
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.300-308, 2005 (Released:2005-11-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2 or 0

近年の研究は,B細胞が自己抗体の産生,サイトカインの分泌,抗原提示,共刺激作用などを介して自己免疫とその発症に重要な役割を果たしていることを明らかにした.CD20に対するキメラモノクローナル抗体(リツキシマブ)が作成され,これを用いることにより,B細胞をターゲットとした選択的治療が可能になった.関節リウマチや全身性エリテマトーデスを含むいくつかの自己免疫疾患において,この抗体の有用性が続々と報告されてきている.リツキシマブは,B細胞を消失させることにより長い期間症状の寛解を誘導する.自己免疫におけるB細胞の役割を明らかにすることは,B細胞をターゲットとした治療の開発に重要である.また,逆にB細胞をターゲットとした実際の治療から,自己免疫の病態解明につながる鍵が得られる可能性がある.この総説では,自己免疫疾患におけるB細胞の役割に関する最新の研究知見とリツキシマブによる自己免疫疾患の治療効果を中心に概説する.
著者
崎山 幸雄 小宮山 淳 白木 和夫 谷口 昂 鳥居 新平 馬場 駿吉 矢田 純一 松本 脩三
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.70-79, 1998-04-30 (Released:2009-02-13)
参考文献数
11
被引用文献数
1 or 3

急性中耳炎,急性下気道炎を反復するIgG2欠乏症の乳幼児を対象に静注用免疫グロブリン製剤(IVIG; GB-0998)による感染予防効果を多施設共同研究で検討した.初回300mg/kg体重, 2回目以降は200mg/kg体重, 4週毎, 6回投与のIVIG療法はIgG2欠乏,抗肺炎球菌特異IgG2抗体欠乏を呈して急性中耳炎,気管支炎もしくは肺炎を反復する乳幼児の感染予防に有用であることが示された.
著者
畠山 昌則
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.132-140, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
2 or 0

胃癌は全世界人口における部位別癌死亡の第二位を占める.近年の研究から,cagA遺伝子を保有するヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の持続感染が胃癌発症に決定的な役割を担うことが明らかになってきた.cagA遺伝子産物であるCagAタンパク質はピロリ菌が保有するミクロの注射針(IV型分泌機構)を通して菌体内から胃上皮細胞内へと直接注入される.細胞内に侵入したCagAはSHP-2癌タンパク質に代表される細胞内シグナル伝達分子と特異的に結合しそれらの機能を脱制御することにより,細胞増殖・細胞運動にかかわる多彩な細胞内シグナル伝達系を撹乱する.同時に,CagAは上皮細胞の極性制御を担うPAR1b/MARK2キナーゼと結合し不活化する結果,消化管粘膜構築を崩壊させる.一連のこうした生物活性から,CagAは胃癌発症に深くかかわることが推察されてきた.ごく最近,ピロリ菌CagAを全身性に発現するトランスジェニックマウスにおいて胃癌,小腸癌さらには骨髄性白血病,B細胞リンパ腫が発症することが明らかとなり,CagAが生体内で直接の発癌活性を示す細菌由来の初の癌タンパク質(bacterial oncoprotein)であることが示された.
著者
中島 友紀
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-25, 2015 (Released:2015-03-10)
参考文献数
32

骨は,脊椎動物特有な運動支持の器官であると共に,生命維持に必須なカルシウムなどミネラルの代謝器官であり,免疫系細胞の分化増殖の場となる造血器官でもある.骨と免疫系は,骨髄微小環境をはじめ,サイトカイン・受容体・転写因子などの制御分子を共有し緊密な関係にある.関節リウマチにおける炎症性骨破壊の研究は,両者の融合領域である骨免疫学に光を当てた.破骨細胞分化因子RANKLのクローニングに加え,種々の免疫制御分子の遺伝子改変マウスに骨の異常が見いだされ,骨免疫学の発展を加速させた.近年では,骨の細胞と造血幹細胞の関係も解明され,骨免疫学がさまざまな疾患の制御に重要な知見を提供するようになった.
著者
川村 龍吉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.70-75, 2011 (Released:2011-05-31)
参考文献数
30

世界における新規ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の約8割は異性間の性的接触による.粘膜・皮膚表皮内ランゲルハンス細胞(LC)は,HIV感染初期においてHIVに対する初期免疫応答の誘導に重要な役割を担っている.さらに,LCに発現されるLangerinに捕獲されたHIVは不活化を受けることが最近明らかとなり,LCはHIVの侵入を防ぐバリアーとしても機能する.一方,Langerinによる不活化を免れたHIVは,CD4/CCR5を介してLCに感染し,これを足がかりとして生体内に侵入する(LCのPrimary gate keeper model).このように,LCはHIV感染初期に宿主にとって功罪様々な役割を担う.近年,世界的なHIVの流行を阻止するために,コンドーム以外の方法で性行為HIV感染を予防する外用マイクロビサイドの開発が試みられている.また,HIV以外の性感染症(STD)保有者のHIV感染リスクが数倍~数十倍高くなることから,STD治療も予防戦略の主軸となっている.最近,これらのHIV感染予防戦略がLCを介したHIVの生体内侵入に密接に関与していることが明らかとなりつつある.
著者
谷川 真理 東 賢一 宇野 賀津子 東 実千代 萬羽 郁子 高野 裕久 内山 巌雄 吉川 敏一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.414a-414a, 2013 (Released:2013-10-31)

【背景と目的】いわゆる化学物質過敏症(Multiple chemical sensitivity : MCS)は現代の環境がひきおこした後天的疾患である.日常的にさまざまな化学物資に曝されることに反応して神経系,免疫系,内分泌系をはじめ全身の多様な症状が起こり,通常の社会生活にも支障をきたすようになる.しかしその病態の詳細は解明されておらずMCS有訴者は診断を受けることも困難な状況に置かれている.MCSの病態解明を目的として免疫学的機能検査を実施し解析した. 【方法】2009年10月以来百万遍クリニックのシックハウス外来に通院するいわゆる化学物質過敏症の有訴者(患者)の協力を得て,一般的な血液検査と多種の免疫機能検査を測定し解析した. 【結果】18人のMCS有訴者と17人の健常成人の比較の結果,MCSではNK活性が統計学的有意に高かった.リンパ球サブセットではMCSではNKT細胞の割合が高く,CD3とCD4が低かった.多種のサイトカイン産生能の測定ではIL-2,IL-4,IL-13,GM-CSFが有意に低かった. 【結論】MCS患者では自然免疫系が高めに保持されている一方,Th2型サイトカインが低い傾向で,アレルギーとは異なる病態と考えられる.
著者
渡辺 守
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.295-302, 2006 (Released:2006-10-31)
参考文献数
14

消化器関連領域の臨床医にしか持ち得ない臨床情報に基づいた研究課題を抽出し,臨床材料を用いて研究を展開し,臨床の現場に還元することを目的とした,我々が提唱する概念である「クリニカル・サイエンス」が,いかにこれまでの基礎医学にインパクトを与えたかを我々の実例を挙げて議論した.我々は潰瘍性大腸炎患者の中で胸部X線上,胸腺が肥大している患者が見つかったという臨床情報より,患者の血清中にIL-7を証明した.更に,大腸内視鏡にて得た臨床材料を用いることにより,IL-7が腸管上皮細胞から分泌され,周囲のIL-7受容体を持ったリンパ球の増殖を調節していることを初めて示した.その研究の過程で,IL-7受容体が腸上皮細胞にも発現することを見出し,腸管上皮細胞の傷害時には骨髄由来細胞が入ってきて再生過程をレスキューする可能性を発見した.更に,ヒト骨髄由来腸上皮細胞が再生時に分化の方向が変化して,分泌型腸上皮細胞に変化すること,IL-7の産生機構の解析にて分泌型上皮細胞からのIL-7が極めて特殊な分泌機構になっていることを見出した.最近の腸管免疫,炎症性腸疾患に関する研究の発展は基礎医学と臨床医学を両輪とし,病態解明とそれに基づく疾患治療法の開発が完全に併走した極めて特殊な形態で進んでいる.臨床研究者が大きなアドバンテージを持って研究に参加可能な領域であり,事実,臨床研究者の貢献は非常に大きいことを強調したい.
著者
中澤 徹 西田 幸二
出版者
日本臨床免疫学会
巻号頁・発行日
pp.60-60, 2007 (Released:2007-10-12)

[目的] 網膜剥離は罹患率の高い眼疾患で、視細胞のアポトーシスが視力障害の原因となる。しかし、その機序は殆ど分かっていない。一方、網膜剥離患者の眼内で炎症性サイトカイン、ケモカインが増加していると報告されている。本研究では、視細胞変性と炎症性サイトカイン、ケモカインの因果関係を調べた。 [方法] 成体マウスに網膜剥離を誘導し、サイトカインの発現変化をRT-PCR、ELISA、免疫染色にて調べた。MCP-1中和抗体とノックアウトマウスを使用し、TUNEL法でMCP-1抑制の細胞死に対する効果を評価した。 [結果] 網膜剥離によりIL-1beta、TNFalpha、MCP-1、bFGFが増加し、特にMCP-1は100倍近い増加を示した。MCP-1を抑制すると著明に網膜剥離による視細胞死が抑制された。MCP-1は網膜グリア細胞の一つである、ミューラー細胞に発現し、CD11b陽性白血球(マクロファージやマイクログリア)を眼内に遊走させ、活性化されたCD11b陽性白血球が、活性酸素を介して視細胞を障害していることが明らかとなった。 [結論] マウスの網膜剥離による視細胞変性には、グリア細胞と白血球の相互作用が重要であることが示唆された。また、白血球の遊走に関わるケモカインMCP-1や活性酸素の抑制は、網膜剥離の視細胞変性に新規の神経保護治療となる可能性がある。
著者
岩永 希 原田 康平 辻 良香 川原 知瑛子 黒濱 大和 和泉 泰衛 吉田 真一郎 藤川 敬太 伊藤 正博 川上 純 右田 清志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.478-484, 2016 (Released:2016-10-30)
参考文献数
21

症例は25歳女性.2013年6月前医で原発性シェーグレン症候群と診断.2014年7月発熱,著明な炎症反応,全身リンパ節腫脹,肝脾腫を認め前医に入院.抗生剤(ceftriaxone,meropenem)を投与,ステロイドを増量(PSL 50mg)するも無効で,急速に進行する全身浮腫を認め当院へ転院.リンパ節生検では好中球浸潤を認め,骨髄穿刺では巨核球増加と線維化を認めた.minomycinを併用したところ,発熱・全身浮腫・炎症反応は徐々に改善したが,貧血・血小板減少を認めていた.感染症を疑いステロイドを減量したところ,再び発熱,浮腫・胸腹水の出現,血小板減少・貧血の増悪を認めた.ステロイドパルス,ステロイド再増量を行うも治療抵抗性で,cyclosporin(CyA)を併用し軽快した.典型的なリンパ節の病理像を認めなかったが,本症例の臨床像はTAFRO症候群と酷似していた.TAFRO症候群は,Castleman病の一亜型と考えられているが,感染,リウマチ性疾患,悪性腫瘍などによる高サイトカイン血症により二次的に生じ得るとされている.本症例では原発性シェーグレン症候群を背景に発症し,化膿性リンパ節炎様のリンパ節病理像を認めた点が興味深いと考え報告する
著者
中野 和久 松下 祥 齋藤 和義 山岡 邦宏 田中 良哉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-6, 2009 (Released:2009-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5 or 0

ドパミンD2様受容体の過剰反応が主原因とされる統合失調症においては,関節リウマチ(RA)の発症率が顕著に低下することが知られるが,その原因は不詳である.神経伝達物質はリンパ球表面の受容体を介して免疫修飾作用を発揮する.脳内の主要な神経伝達物質であるドパミンは,D1~D5のサブタイプを持つ7回膜貫通型のGPCRを介してシグナルを転送する.   我々はこれまでに樹状細胞(DC)でのドパミン合成・貯蔵とナイーブT細胞への放出機構,およびヘルパーT細胞サブセット分化への影響を解明した.RAにおいてもDCは関節内抗原をT細胞に提示し病態形成の初期から重要な役割を果たすことから,RA滑膜組織におけるドパミン・ドパミン受容体の機能的役割を評価した.本稿ではこの一連の解析を概説し,ドパミン受容体を標的とした創薬の可能性についても述べる.
著者
野澤 智 原 良紀 木下 順平 佐野 史絵 宮前 多佳子 今川 智之 森 雅亮 廣門 未知子 高橋 一夫 稲山 嘉明 横田 俊平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.454-459, 2008 (Released:2008-12-31)
参考文献数
9
被引用文献数
5 or 0

壊疸性膿皮症は,稀な原因不明の慢性皮膚潰瘍性疾患で小児例もわずか4%であるが存在する.クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患,大動脈炎症候群(高安病),関節リウマチなどに合併する例もあるが,本症単独発症例が約半数を占める.壊疽性膿皮症の標準的な治療であるステロイド薬,シクロスポリンに抵抗を示す難治例に対し,近年タクロリムス,マイコフェノレート・モフェチール,そして抗TNFαモノクローナル抗体の効果が報告されている.今回,壊疽性膿皮症の12歳女児例を経験した.合併する全身性疾患は認められなかったが,皮膚に多発する潰瘍性病変はプレドニゾロン,メチルプレドニゾロン・パルス,シクロスポリンなどの治療に抵抗性で長期の入院を余儀なくされていた.インフリキシマブの導入をしたところ潰瘍局面の著しい改善を認めた.最初の3回の投与で劇的な効果をみせ,投与開始1年3ヶ月後の現在,ステロイド薬の減量も順調に進み,過去のすべての皮膚潰瘍部は閉鎖し,新規皮膚病変の出現をみることはなく,経過は安定している.壊疽性膿皮症にインフリキシマブが奏効した小児例は本邦では初めての報告である.本症難治例に対するステロイドの長期大量投与は,小児にとっては成長障害が大きな問題であり,長期入院生活は患児のQOLを著しく阻害する.本報告により小児壊疽性膿皮症の難治例に対する治療に新しい局面を切り開く可能性が示唆された.