著者
園田 桂子 大野 聖子 堀江 稔
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.5-15, 2020-03-05 (Released:2020-09-12)
参考文献数
17

SCN5Aは心臓ナトリウムチャネルをコードする遺伝子である.Brugada症候群(BrS)の遺伝子変異同定率は20%程度でしかないが,SCN5A変異はその大部分を占める.一方,様々な疾患とコピー数多型(CNV)との関連性が報告されているが,BrSでは2例の報告しかなく,アジア人では検討されていない.そこで,われわれは有症候性もしくは家族歴のある日本人BrS患者151人を対象とし,SCN5Aのサンガー法によるシークエンス解析とMLPA法によるCNVの検出を施行した.サンガー法により,20人の発端者にSCN5A変異を同定した.MLPA法は140人で結果を得ることができ,そのうち4人に各々異なるCNVを同定した(欠失3人,重複1人).4人中3人は致死性不整脈イベントを有しており,平均診断年齢は23±14歳と若年であった.安静時12誘導心電図では4人ともPQ時間は延長し,QRS幅は正常上限であった.これら4人の臨床像は,蛋白生成が減少するtruncating変異や,ナトリウム電流が著明に減少するミスセンス変異を有する患者群と類似していた.SCN5AのCNVは,有症候性もしくは家族歴のあるBrS発端者の2.9%に同定され,臨床像も重症であり,スクリーニングされるべき変異と考えられる.