著者
大国 千尋 清水 祥子 木村 紘美 藤澤 義久 堀江 稔 宮平 良満 九嶋 亮治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.679-684, 2016-05-25 (Released:2017-01-10)
参考文献数
12

アンダーセン・タウィル症候群(Andersen-Tawil syndrome; ATS)は,(1)U波を伴う心室性不整脈,(2)周期性四肢麻痺,(3)外表小奇形を3徴とするまれな遺伝性疾患である。内向き整流性カリウムチャネルであるKir2.1蛋白をコードしているKCNJ2遺伝子の変異が原因で発症する。心電図所見としてQU延長を伴う著明なU波と頻発する心室期外収縮(PVC),2方向性心室頻拍を認め,治療にはIc群抗不整脈薬であるフレカイニドの有用性が報告されている。症例は50代女性,ATSの3徴全てを満たし,QU延長(723 msec)を伴う著明なU波,PVC頻発を認め,遺伝子検索にてKCNJ2遺伝子変異陽性であった。ホルター心電図では総心拍の24%のPVC,2方向性心室頻拍を認め,フレカイニドの導入により9%までPVCが減少,動悸症状も改善した。ATSでは,増高したU波や2方向性心室頻拍が重要な所見となるため,心電図検査,ホルター心電図の解析では,QU時間,U波高,U波幅,PVCの極性などの情報にも着目する必要がある。
著者
園田 桂子 大野 聖子 堀江 稔
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.5-15, 2020-03-05 (Released:2020-09-12)
参考文献数
17

SCN5Aは心臓ナトリウムチャネルをコードする遺伝子である.Brugada症候群(BrS)の遺伝子変異同定率は20%程度でしかないが,SCN5A変異はその大部分を占める.一方,様々な疾患とコピー数多型(CNV)との関連性が報告されているが,BrSでは2例の報告しかなく,アジア人では検討されていない.そこで,われわれは有症候性もしくは家族歴のある日本人BrS患者151人を対象とし,SCN5Aのサンガー法によるシークエンス解析とMLPA法によるCNVの検出を施行した.サンガー法により,20人の発端者にSCN5A変異を同定した.MLPA法は140人で結果を得ることができ,そのうち4人に各々異なるCNVを同定した(欠失3人,重複1人).4人中3人は致死性不整脈イベントを有しており,平均診断年齢は23±14歳と若年であった.安静時12誘導心電図では4人ともPQ時間は延長し,QRS幅は正常上限であった.これら4人の臨床像は,蛋白生成が減少するtruncating変異や,ナトリウム電流が著明に減少するミスセンス変異を有する患者群と類似していた.SCN5AのCNVは,有症候性もしくは家族歴のあるBrS発端者の2.9%に同定され,臨床像も重症であり,スクリーニングされるべき変異と考えられる.
著者
林 秀樹 内貴 乃生 宮本 証 川口 民郎 杉本 喜久 伊藤 誠 Joel Q. Xue 村上 義孝 堀江 稔
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.368-376, 2015 (Released:2015-07-27)
参考文献数
10

近年,早期再分極が致死性不整脈発生の新たな心電図所見として注目されている.しかし,早期再分極のすべてが致死性不整脈の原因になっているわけではなく,良性と悪性が存在する.両者の鑑別は極めて重要である.われわれは,病院を受診した症例から構成された心電図データベースを用いて,様々なコホートにおいて早期再分極と致死性不整脈の関係を調べた.早期再分極は,思春期に頻度が高いことが認められ,Brugada症候群・QT短縮症候群・デバイス植込みの症例において,早期再分極と致死性不整脈発生の関係が認められた.今後,早期再分極と治療効果の関連を検討する必要があると考えられた.
著者
大国 千尋 清水 祥子 木村 紘美 藤澤 義久 堀江 稔 宮平 良満 九嶋 亮治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.679-684, 2016

<p>アンダーセン・タウィル症候群(Andersen-Tawil syndrome; ATS)は,(1)U波を伴う心室性不整脈,(2)周期性四肢麻痺,(3)外表小奇形を3徴とするまれな遺伝性疾患である。内向き整流性カリウムチャネルであるKir2.1蛋白をコードしている<i>KCNJ2</i>遺伝子の変異が原因で発症する。心電図所見としてQU延長を伴う著明なU波と頻発する心室期外収縮(PVC),2方向性心室頻拍を認め,治療にはIc群抗不整脈薬であるフレカイニドの有用性が報告されている。症例は50代女性,ATSの3徴全てを満たし,QU延長(723 msec)を伴う著明なU波,PVC頻発を認め,遺伝子検索にて<i>KCNJ2</i>遺伝子変異陽性であった。ホルター心電図では総心拍の24%のPVC,2方向性心室頻拍を認め,フレカイニドの導入により9%までPVCが減少,動悸症状も改善した。ATSでは,増高したU波や2方向性心室頻拍が重要な所見となるため,心電図検査,ホルター心電図の解析では,QU時間,U波高,U波幅,PVCの極性などの情報にも着目する必要がある。</p>
著者
堀江 稔
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.459-464, 2003-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

ブルガダ(Burugada)症候群は,1992年,Brugada兄弟により報告された8例の右側前胸部誘導(V1-V3)の特異的なST上昇と右脚ブロックを示す特発性心室細動の臨床像から,広く知られるようになった.その後の多くの臨床研究から,発症は男性が多いこと,約20%に失神や突然死などの家族歴を有すること,NaチャネルブロッカーによりST上昇のパターンや程度が変化すること,対症療法ではあるが植え込み型除細動器が奏功すること(逆に言うと多くの薬物療法が悲観的である)などが,明らかとされてきた.さて,1998年になって,Naチャネルのαサブユニットをコードする遺伝子(SCN5A)の塩基レベルの変化(変異)がブルガダ患者に発見され,その変異チャネル蛋白の機能解析から,本症候群が,いわゆるイオンチャネル病である可能性を報告された.このNature誌での発表のあと,多くの施設で,本症疾患のSCN5A遺伝子検索が精力的に行われ,現在,20個以上の変異が発見されている.しかしながら,この検出率はPrioriらの報告でも,20%にみたない.本研究会では,まず本症候群の臨床像を紹介し,その一部に認めるSCN5A変異における機能解析との関連を検討する.