著者
沖 英次 園田 英人 佐伯 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

申請者らの研究グループはこれまでに、イヌの嗅覚応答を用いる(がん探知犬)ことで、大腸がんを感度・精度ともに高く診断可能であることを見出してきた。このように非侵襲にて採取可能な生体サンプルを用いた高感度・高精度ながん早期発見技術の確立は、まさに患者に優しいがん診断法となる。我々は、がんの匂いを利用して尿1滴でのがん検査を可能としがん検診の受診率と正診率の向上、健康寿命の増進に貢献し穏やかで健やかな社会の形成に資する。がんの発生は複数のがん関連遺伝子の変化に起因することが知られている。尿中代謝物によるがん細胞の発生の検知は、当該代謝物による遺伝子変異の検知の可能性を示していると考えられる。したがって私達は、尿代謝物でのがん遺伝子変異の特定の可能性を探ってきた。バイオマーカーとしての安定性と存在量を考慮して、中程度~難揮発性成分に着目し、乳がん細胞(MCF-7)培養液から直接カラム回収することで、中~難揮発性成分を網羅的に回収し、特定の中鎖不飽和脂肪酸群が乳がん細胞に特徴的な難揮発性代謝物であることを世界で初めて見出している(特願2018-53010、論文投稿準備中)。具体的には、乳がん細胞株MCF-7培養液中より、正常線維芽細胞株KMST-6培養液中にはほとんど存在しない特徴的な2種の低揮発性化合物(がん細胞特異的脂肪酸代謝中間物である中鎖不飽和脂肪酸類)をGC-MS分析により同定した。今後はこれを利用した癌の早期発見システムの開発が可能であるのか検討する。