著者
土肥 宏志 山田 明央 圓通 茂喜 福川 胎一郎
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.474-480, 1997-05-25
被引用文献数
3

オーチャードグラス(Dactylis glomerata L. cv. Akimidori),ペレニアルグラス(Lolium perenne L., CV. Friend),トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb. cv. Lubrette)トメドーフェスク(Festuca pratensis L. cv. Tolnosakae)のエーテル抽出物から,コールドとラップ法を用い揮発性の化学物質を捕集した.その揮発性物質について,ガスクロマトグラフとガスクロマトグラフー質量分析計を用い分析を行った.その結果,緑の葉の特有なにおいを示し,また,広く植物界に存在することが知られている,シス-3-ヘキセノール(青葉アルコール)とトランス-2-ヘキセナール(青葉アルデヒド)が調べたどの牧草においても多量に検出された.そこで,この青葉を示すにおい物質を乾草に3段階の異なる濃度(50μg,5mgと100mg)で添加し,ヤギの採食に及ぼす影響を調べた.シス-3-ヘキセノールを100mgと5mgを添加した乾草に対するヤギの採食は,無添加の乾草に対する採食に比べ有意に抑制され,50μgの添加では有意でにはないが採食が抑制された.しかし,トランス-2-ヘキセナールは,どの濃度においても採食に影響を示さなかった.これらの結果により,草食家畜の採食する牧草に念まれている,青葉特有のにおいを示すシス-3-ヘキセノールが,ヤギの採食行動を抑制する作用のあることが示唆された.
著者
圓通 茂喜
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.542-547, 1989-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
17

牛の視力検査法を開発する目的で,試視力用のランドルト環を用いた牛の図形識別学習を,左右に飼槽が配置されたY字型迷路で実施した.学習させた図形は,ランドルト環とその「切れ目」を無くした図形である.前者を正のパネルとして餌の摂取できる飼槽に,後者を負のパネルとして餌の摂取できない飼槽に,それぞれ配置した.ただし,左右の飼槽の正負は,どちらか一方に中蓋をするという方法で無作為に変化させた.選択反応は,10試行を1セッションとして正反応数と誤反応数を調査した.識別の判定は,連続した3セッション(30試行)における正反応数が24回(適合度の検定,p<0.01)以上であることを基準にした.ただし,学習では,この基準が3回以上連続して連成されるまで訓練を続けた.まず,正のパネルのみを配置して予備学習をさせたのち,正と負のパネルを対比させた学習を行なった.その結果,供試牛は正のパネルの飼槽を識別するようにこなった.この学習が図形の「切れ目」以外の刺激によるものでないことを確認するため以下の実験を行なった.パネルを全く配置しない場合の実験においては,供試牛は餌の摂取できる飼槽を識別できなかった.今までのパネルを正から負,負から正に相互に改造したパネルでの選択反応の実験では,供試牛は改造後のパネルの図形に対応して正しく飼槽を選択した.これらの結果は,供試牛が「切れ目」を識別の刺激として受けとめていることを示していた.最後に,視力検査で「切れ目」が見分けられなくなった状況を想定して,いずれの飼槽にも「切れ目」の無い図形を配置したところ,供試牛は餌の摂取できる飼槽を選択できなかったが,追われなければ,なかなか選択路に進入しないという問題が生じた.この問題を避けるためには,「切れ目」の無い図形を正刺激として学習させるべきであると考えられた.