著者
土居 信英 柳川 弘志 森 浩禎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

申請者らが独自に開発した「タンパク質C末端ラベル化法」を用いて、大腸菌の全タンパク質約4400を1枚のチップに固定化したプロテオームチップによる大規模なタンパク質問相互作用解析を行うために、(1)プローブとする大腸菌タンパク質のC末端蛍光ラベル化、(2)大腸菌全タンパク質約4400種類を固定化したプロテオームチップの作製、(3)タンパク質問相互作用の検出および解析の各ステップにおいてハイスループットに実験操作を行うための手順を確立した。具体的には、まず、相互作用既知の複数の大腸菌由来タンパク質のペアをモデルとして、スライドガラスへの固定化方法、ブロッキング剤、バッファー組成、蛍光標識タンパク質の濃度などの条件の最適化を行った。さらに、実験データの精度を維持したまま、実験操作をどこまで自動化・簡略化できるかについて検討した結果、高い検出感度と多数スライドの同時処理を可能とする系を構築することができた。そこで実際に、162種類のタンパク質について、96穴マイクロプレート・フォーマットでCy3-dC-ピューロマイシンを含む大腸菌抽出液由来の無細胞翻訳系における蛍光ラベル化を行った結果、145種類(90%)において全長タンパク質のラベル化が確認できた。このうち96種類についてFLAGタグを用いて精製し、DNAマイクロアレイのスポッティング技術を利用して大腸菌全タンパク質4400を高密度に固定化したスライド96枚とそれぞれ反応させたところ、1014の相互作用が得られた。得られた相互作用ネットワークはスケールフリーであったことから、生物学的に有意であることが示唆された。偽陽性の割合を調べるために、いくつかの候補タンパク質を選んでプルダウンアッセイによる検証を行った結果、約50%の相互作用について再現性が得られた。今後、タンパク質C末端ラベル化法とプロテオームチップの組み合わせにより、さまざまな生物種について大規模なタンパク質問相互作用解析を行うことが期待できる。