著者
土居 通泰 佐野 茂夫
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛研究会雑誌 (ISSN:13417355)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.48-54, 1998-10-12 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

急性腰痛を即時的に軽快させることを目的に考案した新しい牽引療法の効果を検討した.牽引法は腰椎前彎を保持しながら背臥位にて両下肢を下垂させるもので, 7分後術者の首につかまらせながらゆっくり起こす.腰痛はほぼ全例で牽引開始後間もなく一時的に再現し, 次第に軽快した.対象は111例 (平均43歳) で, 85%にギックリ腰の既往歴があり, 全例根性坐骨神経痛を認めなかった.治療回数は1回35%, 2回22%, 3回9%, 4回以上34%で平均4.4回だった.投薬と注射は一切行わなかった.ペインスコアで治療成績を判定した.結果は著効42%, 有効50%, やや有効7%, 無効1%であった.筆者は本法を椎間関節性腰痛に有効と考えており, 好結果の原因は罹患椎間関節に適当な牽引力が加わり, 関節面の適合性の改善が得られたためと考える.薬や注射を用いず, 急性腰痛に即効する点で, 患者志向性の高い有効な治療法と考えた.