著者
大鳥 精司 中村 伸一郎 高橋 弦 鮫田 寛明 村田 泰章 花岡 英二 守屋 秀繁 高橋 和久
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.55-60, 2006
被引用文献数
1

われわれはラットL5/6椎間板を支配する神経がL2後根神経節に入ることを示してきた. 今回, ヒト腰椎椎間板性腰痛に対し, L2ルートブロックの効果について検討した. 1995年 : 症例はL4/5, L5/S1の椎間板性腰痛を呈する33例であった. 全例, L2ルートブロック (1%リドカイン1.5m<i>l</i> ) を行った. 2000年 : 症例はL4/5, L5/S1の椎間板性腰痛を呈する68例であった. ランダムにL2ルートブロックとL4またはL5ルートブロックを行った. 結果, 1995年 : 注射前のVASは5.0に対し15分後のVASは0.8と有意差を認めた. 効果時間は平均20.7日であった. 2000年 : L2ルートブロック前VASは8.0に対し15分後VASは4.3, L4またはL5ルートブロック前VASは7.8に対し15分後VASは3.4と両ブロックともに同様に有意差を認めた. L4またはL5ルートブロックの効果期間は平均8日であるのに対しL2ルートブロックの効果時間は平均13日であり有意にL2ルートブロックの効果時間が長かった. 椎間板性疼痛に対するL2ルートブロックは有効であることが示された. L4またはL5ルートブロックも短期的には有効であるが, (1) 麻酔薬が直接椎間板に効いてしまっている, (2) 椎間板支配の神経が同高位の後根神経根に支配されている可能性が示唆された.

1 0 0 0 OA 妊婦の腰痛

著者
田代 俊之 久野 木順 蓮江 光男 真光 雄一郎 鎌田 浩史 星川 吉光
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛研究会雑誌 (ISSN:13417355)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-26, 1996-12-11 (Released:2010-06-28)
参考文献数
6
被引用文献数
2

妊娠時に腰痛を発症する女性は多い.そこで妊娠時腰痛の発症率, 臨床像, 危険因子などを調べるために, 分娩後10日以内の褥婦175例に対し, 入院中直接腰痛に対する問診および診察を行った.その結果妊娠中68%に腰痛を認めたが, その77.3%が31週までに発症していた.また30歳未満を若年群, 30歳以上を高齢群と分けると, 各群間の腰痛出現率に有意差は見られなかった.さらに, 分娩歴, 腰痛歴, 妊娠前後の体重差, 妊娠前肥満度, 新生児体重についても腰痛出現率に有意差は見られなかった.しかし, 初産婦では若年群で有意に腰痛出現率が高かった.また, 分娩直後の診察より仙腸関節部痛が18%に認められたが, 追跡調査の結果80%は1カ月以内に痛みが消失していた.
著者
土居 通泰 佐野 茂夫
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛研究会雑誌 (ISSN:13417355)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.48-54, 1998-10-12 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

急性腰痛を即時的に軽快させることを目的に考案した新しい牽引療法の効果を検討した.牽引法は腰椎前彎を保持しながら背臥位にて両下肢を下垂させるもので, 7分後術者の首につかまらせながらゆっくり起こす.腰痛はほぼ全例で牽引開始後間もなく一時的に再現し, 次第に軽快した.対象は111例 (平均43歳) で, 85%にギックリ腰の既往歴があり, 全例根性坐骨神経痛を認めなかった.治療回数は1回35%, 2回22%, 3回9%, 4回以上34%で平均4.4回だった.投薬と注射は一切行わなかった.ペインスコアで治療成績を判定した.結果は著効42%, 有効50%, やや有効7%, 無効1%であった.筆者は本法を椎間関節性腰痛に有効と考えており, 好結果の原因は罹患椎間関節に適当な牽引力が加わり, 関節面の適合性の改善が得られたためと考える.薬や注射を用いず, 急性腰痛に即効する点で, 患者志向性の高い有効な治療法と考えた.
著者
遠藤 健司 駒形 正志 西山 誠 池上 仁志 田中 恵 山本 謙吾
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.115-120, 2005

画像診断にて原因不明な腰・下肢痛の中には,脊髄終糸の過緊張によって発症するものも存在する.今回,25例のTight filum terminale(以下TFT)に対して,終糸の切離を行った症例の術後経過を検討した.TFTの診断は,腰痛または下肢痛,膀胱直腸障害,脊椎不橈性,非髄節性神経障害,TFT誘発テストにより臨床診断を行った.手術は,終糸切離をS1高位で行った.術後の症状は全症例中,腰下肢痛の改善が96%に,筋力の回復が68%,知覚異常の改善が68%,膀胱直腸障害の改善は79%,体幹前屈制限の改善は80%で認められた.疼痛の経過は,VAS(Visual Analog Scale)で評価したが,術前の最大疼痛を10とすると,術後平均は3.3(0~7)であった.TFTは腰椎椎間板ヘルニアと鑑別を要するが,膀胱直腸障害の存在,MRI所見,誘発テストが陽性であることが異なる点である.画像診断で神経圧迫症状のない腰痛,下肢痛の鑑別診断としてtight filum terminaleを考慮する必要があると考える.
著者
齊藤 文則 高橋 啓介 鳥尾 哲矢 桑沢 安行 野本 智永
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.85-90, 2006

【目的】骨粗鬆性椎体偽関節に対する経皮的骨セメント椎体形成術の治療報告. 【対象】症例は15例16椎体, 罹患高位は胸腰椎 (T11~L2) 15椎体, 腰椎 (L3) 1椎体. 男性2例, 女性13例, 平均年齢73歳. 経過観察期間は平均29カ月. 遅発性脊髄麻痺を7例に認めた. 【結果】手術時間は平均42分. 術中, 術後の全身合併症はない. 術直後, 全例腰背部痛は改善. 遅発性麻痺例も全例軽快 (MMT 1~2→3~5). 経過中, 隣接椎の圧潰を63%に認めた. 1年以上の経過観察例で, 注入椎は隣接椎体間で架橋形成を認めた. 【考察】本法は手術時間も短く, 疼痛も劇的に改善し有用である. しかし, 多くの症例で隣接椎の圧潰を認め問題である. また, 骨セメントに骨親和性がなくとも注入椎は周囲の架橋形成で安定化した. 遅発性麻痺例では椎体形成術のみで麻痺の改善が得られることから, 麻痺の発生には偽関節部の動的圧迫の要素が強いと考えられた.
著者
伊藤 友一
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-44, 2009
被引用文献数
1 3

これまでアンケート調査および腰痛検診にて介護士における腰痛の実態調査を行い,日常生活動作(ADL)に支障をきたすほどの器質的疾患を有する腰痛はなかったこと,一部の介護作業姿勢が腰椎に影響を及ぼしていることを報告した.今回,同じ施設でRoland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)日本語版を用いて腰痛の調査を行った.対象は,男性319人,女性575人,年齢は19歳から60歳であった.回答が得られたのは,892人(99.8%)であった.RDQ 0点が598人(全体の67.0%),1~2点が149人(16.7%),3~4点が70人(7.8%),5点以上が75人(7.3%)であった.質問の項目別にみると,腰痛を和らげるために,何回も姿勢を変えるが162人,腰痛のため家の仕事をするときは力仕事をしないようにしているが103人,ほとんどいつも腰が痛いが94人,腰痛のため,いつもより横になって休むことが多いが74人,腰痛のためいつもよりゆっくり階段を上るが74人,腰痛のため寝返りが打ちにくいが73人,腰痛のため靴下やストッキングをはくとき苦労するが68人と多かった.これに対し,腰痛のため,服を着るのを誰かに手伝ってもらうが2人,腰痛のためあまり食欲がないが4人,腰痛のため1日大半を座って過ごすが5人,腰痛のため,大半の間,ベッド(布団)の中にいるが6人,腰痛のため,いつもより人に対していらいらしたり腹が立ったりするが7人と少なかった.2次検診を希望したのが42人(4.7%)であった.調査の結果,QOLにかなりの支障をきたすほどの腰痛を有する者は少ないことがわかった.