著者
土田 敬之
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.44-49, 2004-01-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

無水のアルコールはアルミニウムとアルコキシド反応を起こすことが知られている. しかし, 複数のアルコールが混在した場合の挙動は報告されていない. また, 微量の水の存在でアルコキシド反応を防止することが知られている. そこで筆者は (1) 共沸点近傍の混合アルコール溶液とアルミニウムの反応, (2) 混合アルコール溶液とアルミニウムとの反応を抑制する最低含水濃度の関係を調べることを目的とした. 353K, 373K, 393Kの各温度における72時間処理という条件で, 炭素数2~4のアルコールすなわちエタノール, ノルマルプロパノール, イソプロパノール, ノルマルブタノール, イソブタノールの5種類のアルコールを用い, 混合アルコール溶液50mlと純アルミニウム (JIS-A1085) 板片をSUS304製容器の中で反応させた. 試験の結果, 単体成分のアルコールに比べ混合アルコール溶液の場合, 反応温度が低下する傾向が見られた. また, 混合アルコール溶液の方が反応を抑制する最低含水濃度が高くなる傾向があることを発見した. これらの結果をアルコールの溶解現象の立場から考察を加え, 混合アルコール溶液中のアルコールクラスターのサイズ, 構造及び安定性が反応に大きく関与している可能性を示唆した.