著者
伊澤 宏毅 刑部 正博 守屋 成一 土田 聡
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.205-208, 1996-08-25
被引用文献数
5 16

交配実験で得られたチュウゴクオナガコバチ(Ts)とクリマモリオナガコバチ(早期羽化型(TbE)および晩期羽化型(TbL))の種間雑種におけるマリックエンザイム(<i>ME</i>)の分離パターンを明らかにするとともに,この遺伝的指標をもとに野外での種間雑種出現の可能性について検討した。<br>1) TbL×TsのF<sub>1</sub>はすべて<i>SS</i>であったが,TbE×TsのF<sub>1</sub>の<i>ME</i>はすべて<i>FS</i>であった。これらのことから,TbEとTsの交配雑種については<i>ME</i>により判定できると考えられた.しかし,TbLとTsとの交配雑種は<i>ME</i>では判定できなかった。<br>2) 安芸津および大栄個体群のO/T値はすべて1.3以下で,<i>ME</i>もすべて<i>FF</i>であった。一方,つくば個体群では種々のO/T値を示す個体が混在しており,<i>ME</i>は<i>SS</i>, <i>FS</i>および<i>FF</i>の3タイプに分かれ,TbEとTsの交配雑種の存在が確認された。