著者
芦原 亘 井上 晃一 刑部 正博 逸見 尚
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.23-27, 1987
被引用文献数
1 2

ガラス室ブドウに発生するカンザワハダニとその天敵類の越冬場所と越冬後の増殖場所を岡山市一宮と果樹試験場安芸津支場内(広島県豊田郡安芸津町)で調査した。<br>カンザワハダニはガラス室内ではブドウの落ち葉や枯れ草,敷きわら,ブドウの粗皮下で越冬していた。越冬中の天敵としてはケナガカブリダニ,ヘヤカブリダニ,ミチノクカブリダニ,コブモチナガヒシダニ,オオヒメグモが発見された。これらは落ち葉や枯れ草,敷きわらなどから採集されたが,樹上で越冬しているものはなかった。<br>加温または保温後の調査では,5室のうち保温開始8日目のガラス室1室の粗皮と敷きわらからカンザワハダニの生存個体が発見された。その他のガラス室のブドウからは生存個体がほとんど採集されず,雑草や間作の作物にカンザワハダニの増殖個体が認められた。天敵類は発見されなかった。また,ハダニの越冬個体を鉢植えのブドウに接種し加温した場合,22日目には鉢内の雑草に寄生している個体が見られたが,ブドウにはまったく認められなくなった。したがってカンザワハダニの室内での越冬個体は活動開始後すぐにブドウに寄生することはなく,雑草もしくは間作でいったん増殖したものがブドウに移動して被害を及ぼすと考えられる。
著者
伊澤 宏毅 刑部 正博 守屋 成一 土田 聡
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.205-208, 1996-08-25
被引用文献数
5 16

交配実験で得られたチュウゴクオナガコバチ(Ts)とクリマモリオナガコバチ(早期羽化型(TbE)および晩期羽化型(TbL))の種間雑種におけるマリックエンザイム(<i>ME</i>)の分離パターンを明らかにするとともに,この遺伝的指標をもとに野外での種間雑種出現の可能性について検討した。<br>1) TbL×TsのF<sub>1</sub>はすべて<i>SS</i>であったが,TbE×TsのF<sub>1</sub>の<i>ME</i>はすべて<i>FS</i>であった。これらのことから,TbEとTsの交配雑種については<i>ME</i>により判定できると考えられた.しかし,TbLとTsとの交配雑種は<i>ME</i>では判定できなかった。<br>2) 安芸津および大栄個体群のO/T値はすべて1.3以下で,<i>ME</i>もすべて<i>FF</i>であった。一方,つくば個体群では種々のO/T値を示す個体が混在しており,<i>ME</i>は<i>SS</i>, <i>FS</i>および<i>FF</i>の3タイプに分かれ,TbEとTsの交配雑種の存在が確認された。
著者
伊澤 宏毅 刑部 正博 守屋 成一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.58-60, 1992
被引用文献数
7 14

Isozymes of esterase (<i>Est</i>) and malic enzyme (<i>ME</i>) are an effective hereditary index for discriminating between <i>Torymus sinensis</i> and <i>T. beneficus</i>. In particular, the <i>ME</i> zymogram pattern of <i>T. sinensis</i> has a single main band which is slower than that of <i>T. beneficus</i>. Morphologically-indistinguishable males of the two species can be distinguished by the <i>ME</i> zymogram.
著者
刑部 正博 吉田 正義 廿日出 正美
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.294-299, 1982-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ガスクロマトグラフィーを用いて,コガネムシ類の各ステージにおける呼吸量の測定と幼虫における皮膚呼吸の有無について検討した結果,以下のことが明らかとなった。1) オオサカスジコガネの卵のCO2呼出量は卵の発育に伴って上昇する傾向を示した。2) オオサカスジコガネとチビサクラコガネの幼虫期の単位体重当たりのCO2呼出量は1齢で最も多く,齢期が進むにつれて減少した。3) オオサカスジコガネとドウガネブイブイの越冬3齢幼虫で,気門を閉鎖したところ,CO2の呼出が認められ,皮膚呼吸の可能性が示唆された。4) 蛹期のCO2呼出量は蛹化後7∼9日目に最低となり,その後急増した。5) 成虫では,昼間活動性のものと夜間活動性のものとの間に,CO2呼出量で一定の関係が認められた。
著者
酒居 勇太 須藤 正彬 刑部 正博
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-6, 2012-05-25 (Released:2012-06-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

ナミハダニが寄主葉の上面を産卵場所として利用しないことは,風雨や太陽光紫外線による卵への悪影響を回避するための適応だと考えられている.一方で葉面の表裏における栄養条件の違い,および上下の葉面において虫体に掛かる重力方向の違いが,ナミハダニの適応度に与える影響は十分に検討されていなかった.本研究ではインゲンマメのリーフディスク(単一葉面)を用い,その表裏および上下がナミハダニの産卵数に与える影響を評価した.葉表では葉裏よりも,下面では上面よりもそれぞれ産卵数が増加する傾向が支持された.しかし「葉表かつ上面」と「葉裏かつ下面」のリーフディスク間では,これら2因子の影響が打ち消し合い産卵数は拮抗した.すなわち葉面の栄養条件ないし重力方向について,単独でのボトムアップ効果は認められるものの,ナミハダニがインゲンマメ葉の上面(葉表)に卵を産まない理由にはならないと考えられた.