著者
土田 英人
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.33-38, 2010 (Released:2017-02-15)
参考文献数
19

今日わが国では,薬物の多様化と薬物乱用の低年齢化が認められ,その問題は医学モデルのみに留まらず,社会経済や政策などの領域とも広く関わりを持っている。覚せい剤や PCP などは,統合失調症の疾患モデルとして解析が進められており,これらを手掛かりとした統合失調症の病態・病因の解明が期待される。本稿では,薬物依存の共通の基盤のひとつである脳内報酬系と,分子レベルでみた依存の形成過程について概説する。
著者
貝谷 久宣 土田 英人 巣山 晴菜 兼子 唯
出版者
日本不安障害学会
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.20-36, 2013-02-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
69
被引用文献数
1 2

不安障害全般についての最近の文献を展望した。不安障害はほかの不安障害と併発しやすく,また,気分障害とも併発しやすいことを疫学研究から述べた。不安障害の成因としては遺伝学的要因より環境的要因のほうが強いことを示した。脳内機構として扁桃体の過活動と腹内側前頭前皮質の抑制不全といったアンバランスを示す病態生理について述べた。不安障害の薬物療法と認知行動療法のメタ分析結果を示した。不安障害の精神薬理学としてドパミン仮説について述べた。これに関連して臨床的には不安障害に対するセロトニン・ドパミン拮抗薬の使用量が米国では増加傾向にあることを言及した。不安障害の予後については,慢性に経過し,長期の維持療法が必要であり,うつ病が併発すると治療抵抗性であることを示した。