著者
貝谷 久宣 土田 英人 巣山 晴菜 兼子 唯
出版者
日本不安障害学会
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.20-36, 2013-02-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
69
被引用文献数
1 2

不安障害全般についての最近の文献を展望した。不安障害はほかの不安障害と併発しやすく,また,気分障害とも併発しやすいことを疫学研究から述べた。不安障害の成因としては遺伝学的要因より環境的要因のほうが強いことを示した。脳内機構として扁桃体の過活動と腹内側前頭前皮質の抑制不全といったアンバランスを示す病態生理について述べた。不安障害の薬物療法と認知行動療法のメタ分析結果を示した。不安障害の精神薬理学としてドパミン仮説について述べた。これに関連して臨床的には不安障害に対するセロトニン・ドパミン拮抗薬の使用量が米国では増加傾向にあることを言及した。不安障害の予後については,慢性に経過し,長期の維持療法が必要であり,うつ病が併発すると治療抵抗性であることを示した。
著者
伊藤 大輔 兼子 唯 小関 俊祐 清水 悠 中澤佳 奈子 田上 明日香 大月 友 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-129, 2010-06-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、近年の外傷後ストレス障害(PTSD)に対する認知行動療法の効果をメタ分析によって検証することと、PTSDの効果研究に関する今後の検討課題を明らかにすることであった。メタ分析の結果、PTSDに対する認知行動療法の有効性が明らかにされ、その適用範囲も拡張しつつあることが示された。さらに、今後の課題として、(1)対象者の症状プロフィールや状態像を考慮した介入法の検討を行うこと、(2)薬物療法と認知行動療法を組み合わせた際の効果について検証すること、(3)治療効果に作用する治療技法および要因を特定し、効率的かつ適切な介入法を検討すること、(4)治療効果に影響を及ぼす治療技法以外の要因について検討すること、などが指摘された。
著者
巣山 晴菜 大月 友 伊藤 大輔 兼子 唯 中澤 佳奈子 横山 仁史 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.35-45, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、パフォーマンスの解釈バイアス(以下、解釈バイアス)が社交不安に対するビデオフィードバック(以下、VFB)の効果を規定する要因の一つであるかを検討することであった。大学生27名を対象に、VFBを挟んだ2度の3分間スピーチからなる実験を行い、スピーチ前の主観的不安感、スピーチ中の主観的不安感、スピーチの自己評価および他者評価、心拍数を測定した。パフォーマンスの質については解釈バイアスの大小による差は見られなかった。しかし、解釈バイアスの大きい者ほどVFBを受けることで自己評価は改善し、スピーチ前およびスピーチ中の不安感は低下することが明らかにされた。本研究の結果から、解釈バイアスが大きい者の社交不安症状に対してVFBが一層有効である可能性が示唆された。
著者
伊藤 理紗 兼子 唯 巣山 晴菜 佐藤 秀樹 横山 仁史 国里 愛彦 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.237-246, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動(以下、SB)が治療効果に及ぼす影響性の差異について検討した。ゴキブリ恐怖の大学生(N=30)を対象に、対象者を三つの介入条件のいずれか一つに割り当てた:(a)SBなし群、(b)恐怖ピーク前SB群、(c)恐怖ピーク後SB群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖に関する変数を従属変数とした分散分析の結果、すべてのゴキブリ恐怖の変数において時期の主効果が有意であった。単純主効果の検定の結果、すべての群においてエクスポージャー直後とフォローアップ時のゴキブリ恐怖は、エクスポージャー前と比較して、有意に低かった。最後に、各群のエクスポージャー中の恐怖の推移もふまえて、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動が治療効果に及ぼす影響について、考察した。
著者
伊藤 理紗 巣山 晴菜 島田 真衣 兼子 唯 伊藤 大輔 横山 仁史 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-71, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17

本研究は,SAD患者の曖昧な場面の中性的・否定的解釈の関連の検討,および曖昧な場面の肯定的・中性的・否定的解釈がSAD症状の重症度に及ぼす影響について検討を行った。SAD患者50名を対象に,(1)Liebowitz Social Anxiety Scale(朝倉ら,2002),(2)曖昧な場面の解釈の質問紙について回答を求めた。相関分析の結果,曖昧な社会的場面の中性的解釈と否定的解釈の間に相関は認められず,曖昧な社会的場面の肯定的解釈と否定的解釈の間のみに負の相関が認められた(r=-.48, p<.001)。重回帰分析の結果,曖昧な社会的場面の否定的解釈(β=.34, p<.05)のSAD症状の重症度への影響が有意であった。本研究の結果から,曖昧な場面の否定的解釈の低減にあたり,肯定的解釈の活性化の有効性が示唆された。
著者
兼子 唯 中澤 佳奈子 大月 友 伊藤 大輔 巣山 晴菜 伊藤 理紗 山田 和夫 吉田 栄司 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.43-54, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、社交不安障害(SAD)を、全般型(GSAD)と非全般型(NGSAD)のみでなく、自覚された生理的覚醒の高低で分類し、社交不安症状、注意バイアスの違いを検討することであった。SAD者16名と健常者6名を対象に質問紙調査と修正ドット・プローブ課題を実施した。課題では、自動的/統制的処理段階における否定的評価、肯定的評価、生理的覚醒に対する注意バイアスを測定した。分散分析の結果、GSAD・NGSAD・健常者の比較、自覚している生理的覚醒の高・低・健常者の比較では有意な差は示されなかった。しかし注意バイアス得点を0と比較した結果、NGSAD群は自動的処理段階で肯定的評価に対して、自覚された生理的覚醒の高いSAD群は統制的処理段階で生理的覚醒に対して、注意バイアスが大きいことが示された。この結果から、SADの状態像を検討する必要性とそれぞれに有効な介入方法について考察された。
著者
小関 俊祐 巣山 晴菜 兼子 唯 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-44, 2014

Effects of interpersonal rejection sensitivity and automatic thoughts relating to social phobia, trait anxiety, and depression, in university students in a teacher education course were investigated to determine if these effects differed between pre- and post-practicum students. We administered questionnaires to first year students (<i>n</i>=84; 37 boys and 47 girls) with no practicum experience (no practicum group) and to fourth year students (<i>n</i>=82; 51 boys and 31 girls) with a practicum experience (practicum group). The results showed that in the no practicum group, "Dependence on Evaluation by Others" and "Negative Expectations for the Future" significantly affected interpersonal rejection sensitivity and automatic thoughts related to social phobia, whereas "Negative Expectation for the Future" had a significant effect on these variables in the practicum group. In addition, "Negative Thoughts about the Self" significantly affected trait anxiety. Furthermore, "Fear of Relationship Failure" and "Unassertive Interpersonal Behavior significantly affected the "Fear of Hurting Others" in the no practicum group, whereas there was a significant effect of "Fear of Criticism by Others" on these variables in the practicum group. In both groups, there was a significant effect of "Negative Expectation for the Future" on depression, whereas in the no practicum group, there was a significant effect of "Positive Automatic Thoughts" on depression.
著者
巣山 晴菜 横山 知加 小松 智賀 野口 恭子 兼子 唯 鈴木 伸一 貝谷 久宣
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 = Japanese journal of behavior therapy (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.87-97, 2013-05-31
参考文献数
19

本研究の目的は、「不安うつ病尺度(Anxious Depression Scale; ADS)」の開発であった。不安障害にうつ病を併発した患者114名、うつ病を併発していない不安障害患者153名、大うつ病患者80名、大学生97名を対象に質問紙調査を行った。ADSは「行動・情動症状」、「身体症状」、「攻撃的情動(動的情動)」、「非攻撃的情動(静的情動)」の4因子で構成され、内的整合性は高かった(α=0.72〜0.92)。また、ADSは他の対象者と比較して不安うつ病患者において有意に高得点であり、うつ症状評価尺度と中程度の正の相関関係にあった。以上の結果から、ADSは高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。