- 著者
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土田 隆政
真野 行生
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.3, pp.231-233, 2003-05-25 (Released:2011-02-24)
- 参考文献数
- 3
- 被引用文献数
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パーキンソン病通院患者のアンケート調査および療養型医療施設入所者における転倒調査を踏まえ, 転倒の要因について検討した.パーキンソン病患者ではその重症度の進行に伴い日常生活での歩行頻度は減少していたが, 転倒回数はむしろ増加し, 骨折に至る頻度も増していた. 転倒予防には環境整備による対策が重要であるが, 実際に家屋調整を行っていた患者は半数に至っておらず, とくに転倒頻度の最も多い居間に関する調整不足が示唆された. パーキンソン病患者の転倒予防には従来から行っていたトイレ, 廊下・階段, 浴室, 玄関などの環境整備以外に, 1日の大半を過ごす場所にも関心を向け生活指導することが必要である.療養型医療施設入所者の転倒, 重傷例の発生率に大きな変化はなく, 環境要因のうち対策が可能と思われる因子が散見され, 引続き転倒予防の介入が必要と思われた. 看護サイドの予防対策により夜間帯から午前中の転倒頻度が減少していた. 転倒報告例, 重傷例とも痴呆症の割合が高くなっていたが, 痴呆症の転倒予防は今後の課題と考える.転倒の要因は身体的要因を主とする内的要因と, 生活環境要因を主とする外的要因の二つに分けられ, 内的要因はさらに感覚要因, 高次要因, 運動要因に分けられる. 高齢者ではこれら一つ一つの障害が直接転倒を引き起こすこともあるが, 慢性疾患の罹患や加齢, 薬物服用などによって, それぞれの障害が著明でなくても幾つかの要因が併さることで転倒に結び付くことが特徴とされている. 転倒の要因が主に環境要因のみのことも決して少なくはなく, 対応が可能ならば大きな介入効果が期待される. したがって常に外的要因の関与に気を配ることが重要である.