著者
斉藤 英一 渡部 英 国井 康弘 土谷 昇ニ 山崎 忠光 榊原 宣
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.189-194, 1998-03
被引用文献数
7 4

症例は79歳の女性で,1996年4月26日,下痢と腹痛を主訴に当院を受診腹部は膨満しており,腹部単純X線写真で多発性の鏡面像を認めた.腸閉塞の診断で同日入院.入院後直ちにイレウスチューブを挿入,3日後大量の排便を認め,腹部単純X線写真でも鏡面像は消失していた.イレウスチューブの先端はS状結腸に達しており,抜去しながらの造影で横行結腸肝弯曲部に蟹爪状陰影を認めた.大腸内視鏡検査で腸重積を整復,盲腸に2'型大腸癌を認めた.生検結果はGroup Vで,盲腸癌を先進部とした横行結腸の腸重積と診断した,5月8日右半結腸切除術を施行した.上行結腸は後腹膜より遊離し,小腸と共通の腸間膜を有していた.病理組織学的には中分化腺癌で,深達度はss,リンパ節転移は認あられなかった.大腸癌による成人大腸腸重積は,回盲部とS状結腸が好発部位とされ,総腸間膜症を伴った横行結腸の腸重積は検索しえた範囲ではこれまで2例が報告されているのみである.