著者
小川 仁 舟山 裕士 福島 浩平 柴田 近 高橋 賢一 長尾 宗紀 羽根田 祥 渡辺 和宏 工藤 克昌 佐々木 巌
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.455-459, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は23歳女性.5年前にスプレー缶の蓋を膣内に留置してしまったが医療機関を受診せず放置し,次第に月経周期に類似した下血と腰痛が出現したため近医を受診した.大腸内視鏡検査で膣内異物と直腸膣瘻を指摘され経肛門的に異物除去術が施行されたが,2カ月後も瘻孔が閉鎖しないため当科を紹介された.初診時2横指大の直腸膣瘻と膣狭窄を認めた.回腸にループ式人工肛門が増設されたが6カ月後も瘻孔は閉鎖せず,根治目的に手術が施行された.瘻孔周辺の直腸と膣は高度の線維化により強固に癒着しており直腸・膣の修復は不可能であったため,再手術により子宮摘出・直腸切除,結腸肛門吻合術が施行された.3年2カ月の間にこれらの手術を含む計6回の手術が行われ直腸膣瘻は根治した.膣内異物による直腸膣瘻はまれな病態であるが,治療に難渋した自験例を若干の文献的考察を加え報告する.
著者
種村 宏之 後藤 友彦 高塚 純 中崎 晴弘 寺本 龍生
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.91-95, 2006-02-01
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

結核性痔瘻は稀とされている.我々は1985年から2003年までの18年間に痔瘻の膿から結核菌が証明されたll例を経験したので,これを報告する.平均年齢は43.8歳でいずれの症例も男性であった.全例結核治療のため当院紹介された.痔瘻はIILSが10例,IIIBが1例であり,6~7時方向の痔瘻が7例,2~3時方向が3例,11時方向が1例であった.結核性の粘膜病変を認めなかったことから,いずれの症例も以前からある痔瘻に結核菌が2次感染をおこしたものと考えられた。結核治療を開始し,排菌が停止したことを確認したのち根治術を行った.現在までのところ再発を認めていない.
著者
Shlomo Yellinek Dimitri Krizzuk Juan J. Nogueras Steven D. Wexner
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
Journal of the Anus, Rectum and Colon (ISSN:24323853)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.71-76, 2018-07-25 (Released:2018-07-30)
参考文献数
24

Iatrogenic ureteral injury (IUI) is a dreaded complication of abdominopelvic surgery. Although rare, it is associated with severe consequences. This complication most commonly occurs during gynecological procedures but may also occur during colorectal surgeries. We present two cases of IUI in patients in whom the ureteric stents were electively placed. The first case was a 71-year-old male with no significant medical history. The patient underwent an elective laparoscopic sigmoidectomy for complicated diverticulitis. During the procedure, a proximal IUI occurred, and was recognized and repaired. The second case occurred in a 68-year-old male with a history of multiple complicated abdominal surgeries. The patient underwent a second redo low anterior resection for a long preanastomotic stricture. The IUI occurred in the right fibrosed presacral plane, approximately 3 cm proximal to the bladder. The ureter was reimplanted to the bladder during the same procedure. We will also present a literature review of IUI, including the risk factors, intraoperative prevention, and repair options.
著者
三浦 誠司 西岡 道人 野澤 慶次郎 藤田 正信 青木 久恭 和田 浩明 捨田利 外茂夫 三重野 寛治 小平 進
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.18-23, 1998-01
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

22歳,男性.主訴は入工膣からのガス・便の排出.1年10か月前に海外で膣造設術を含む性転換手術を受けている.造影および内視鏡検査では瘻孔は高位にあり,直腸膣中隔の膣側上皮は広汎に欠損していた.手術は経仙骨的アプローチで施行し,直視下に瘻孔を切除して層々に縫合閉鎖した.術後3年以上経過した現在,再発はない,本症例は腹部や大腿部に創痕が残るような術式を拒んだため,瘻孔を閉鎖できたが,膣を安全に使用できるような術式ではなかった.男性性転換手術者に発生する直腸膣瘻の治療は困難で,その理由として発生原因が人工膣の萎縮防止用ステントを長期間使用したための圧迫壊死であること,および造膣手術時に広範囲に剥離が行われていて周囲組織を瘻孔閉鎖手術時の修復に利用できないことなどがあげられている.欧米の報告では本症の発生率は低いが,観察期間が短いものが多いことから過小評価されている可能性が考えられる.
著者
小金井 一隆 木村 英明 篠崎 大 福島 恒男
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.409-414, 1999 (Released:2009-10-16)
参考文献数
16

ステロイドによる大腿骨頭壊死を合併した潰瘍性大腸炎 (UC) の3例を経験した.症例1は24歳, 女性, 症例2は30歳, 男性, 症例3は55歳, 女性.症例1, 2は全大腸炎型, 症例3は左側大腸炎型で, いずれも再燃緩解を繰り返し, ステロイド投与が行われた.UC発症後15, 31, 48カ月で大腿痛が出現し, 大腿骨頭壊死と診断された.症例1, 2はその後もステロイドが投与され, 総投与量は9.8g, 11gとなり, 当科初診時には歩行障害があった.大腸全摘, 回腸嚢肛門管吻合を行い, ステロイドを中止したが, 骨変化は非可逆で, 症例1は右側の人工骨頭置換術を行った.症例3は総投与量が30gであったが, 大腿骨頭壊死の診断後ステロイド投与を中止し, 現在までUC, 大腿骨頭壊死とも保存的に治療している.大腿骨頭壊死は患者のQOLを著しくそこなう疾患であり, ステロイド使用症例ではその発症に十分注意し, 発症後は速やかに治療法の変更が必要である.
著者
加川 隆三郎 斎藤 徹 宮岡 哲郎 黒川 彰夫 有竹 賀子 吉川 宣輝 西庄 勇 岩田 辰吾 竹林 正孝
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.505-512, 1998 (Released:2009-06-05)
参考文献数
25
被引用文献数
9 2

ヒトパピローマウイルス(HPV)は,子宮頚癌をはじめ各種扁平上皮癌組織にそのDNAが検出され,HPV感染による発癌機構の解明が進みつつある,諸外国では肛門管,直腸の扁平上皮癌にHPV-DNAを確認した報告がみられるが,本邦ではほとんどない。今回,HPV-DNAの検出に最も感度が高く,また型の同定も可能なPCR法により,日本人の肛門管,大腸の扁平上皮癌発癌におけるHPVの関与を研究した,方法:肛門管扁平上皮癌18例,その他の肛門管癌5例および大腸扁平上皮癌3例のパラフィン包埋標本より得られた検体のDNAをPCR法にて増幅,制限酵素にて処理後,消化パターンにより型判定をおこないHPV6,11,16,18,31,33,42,52,58について検討した.また肛門管扁平上皮癌症例で,HPV,p53に対する免疫組織化学的検討を行った.結果:肛門管扁平上皮癌症例のうち3例からHPV16,1例からHPV6のDNAが検出され,HPVによる発癌が示唆された。免疫染色では扁平上皮癌細胞の核が染色され,癌細胞核内のHPVの存在,mutantp53の蓄積が示された.欧米の成績と比較してHPVの種類には差はないものの,検出頻度は低かった.しかし,日本人の性習慣の変貌にともない,肛門管の扁平上皮癌の感染実態の変化が予想された。
著者
村上 三郎 中島 三恵 吉田 裕 橋本 大樹 辻 美隆 大久保 雄彦 浜田 節雄 平山 廉三
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-6, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
32
被引用文献数
6 3

血液透析治療中に繰り返し発症した宿便性大腸穿孔症例を経験したので,文献的検討を加えて報告する.症例は76歳,女性.慢性腎不全にて血液透析治療を受けている.3年前に宿便性S状結腸穿孔にてHartmann手術を施行されている.今回,突然の腹痛が出現し再入院となった.腹部X線写真および腹部CTで,freeairおよび多数の宿便を認め,宿便性大腸穿孔の再燃と判断し緊急手術を行った.S状結腸に穿孔を認め,その近傍に宿便を認めた.前回のストーマ造設部に新たなストーマを造設してHartmann手術を行った.水分摂取の制限を要した血液透析患者で宿便性大腸穿孔が発症したことを考えると,圧迫壊死という物理的因子以外に便塊表面の粘稠度の充進や腸粘液分泌減少などによって便塊が大腸粘膜へ強固に付着すること,さらに,それに続く大腸壁の局所循環血流障害などが本疾患の発症に関与している可能性がある.
著者
西森 武雄 金 友英
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.163-168, 2010-03-01

経肛門的直腸異物は自慰行為などにより突発的に生じることが多い.われわれは経肛門的直腸異物の3例を経験したので,報告する.症例1は59歳,男性.ゴム製の棒を自ら肛門より挿入し抜去不可となり,当院を受診した.外来での抜去は困難で,腰椎麻酔下に砕石位とし,腹部を愛護的に圧迫することにより,異物を把持でき,経肛門的に摘出した.症例2は65歳,男性.化粧水の容器を自ら肛門より挿入し抜去不可となり,当院を受診した.外来での抜去は困難で,症例1と同様の方法で経肛門的に摘出した.症例3は43歳,男性.コルク製のボールを自ら肛門より挿入し抜去不可となり,当院を受診した.外来での抜去は困難で,腰椎麻酔下に経肛門的に摘出した.腰椎麻酔下では肛門括約筋の弛緩が得られ,用手肛門的に摘出可能となることがあり,試みられるべき治療法の1つであると思われた.<br>
著者
藤田 昌久 石川 文彦 釜田 茂幸 山田 千寿
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.486-489, 2015

経肛門的直腸内異物の大部分は自慰行為や性的行為により生じるが,異物は多種多様である.今回,われわれは,経肛門的に直腸内に挿入された巨大なシリコン製玩具に対して,ミオームボーラーを用いて経肛門的に摘出した症例を経験した.症例は34歳男性.自慰行為にて肛門よりシリコン製玩具を挿入,摘出できなくなり当科を受診した.外来で無麻酔下には摘出できず,全身麻酔下に摘出を行った.各種鉗子では異物を把持,牽引できなかったがミオームボーラーを異物に刺入することで安全に摘出することができた.異物は円錐状で,大きさは30×10cmと巨大であった.異物の形状や材質により摘出の工夫が必要であるが,シリコン製玩具に対してはミオームボーラーが有用である.
著者
Ryuji Sakakibara Hirokazu Doi Shin Fukudo
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
Journal of the Anus, Rectum and Colon (ISSN:24323853)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.10-17, 2019-01-25 (Released:2019-01-29)
参考文献数
46
被引用文献数
2 4

We systematically reviewed literature regarding "Lewy body constipation", i.e., constipation due to Lewy body diseases (LBD), with minimal neurologic symptoms. Epidemiology and pathology studies showed that LBD can start with constipation alone, mostly due to neuronal loss and appearance of Lewy bodies in the myenteric plexus. Because LBD significantly increases with age, "Lewy body constipation" may also increase with age. Neuroimaging methods such as metaiodobenzylguanidine (MIBG) scintigraphy and dopamine transporter (DAT) scan provide a way to detect "Lewy body constipation." Key for "Lewy body constipation" includes minimal non-motor features such as REM sleep behavior disorder (night talking). Add-on therapy may be required to ameliorate constipation in patients. Diagnosis is not always easy; therefore, collaboration of gastroenterologists and neurologists is highly recommended to maximize patients' quality of life. In conclusion, "Lewy body constipation" might become a distinct category among geriatric constipation, regarding patients' follow-up and their management.
著者
松田 直樹 舟山 裕士 高橋 賢一
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.427-430, 2006 (Released:2009-06-05)
被引用文献数
1 1

肛門の「狭さ」や「ゆるさ」を客観的に捉えて計量化するための肛門伸展張力計(松田式)を開発した.本装置は長い柄の二弁式肛門鏡に圧力センサーを付けたもので,これにより肛門管を徐々に開大することにより,最初の痛みを感じたときの肛門伸展張力(kg)とその時の肛門直径(mm)を測定することで肛門の伸展性が測定できる.本器を用いて裂肛などの伸展不良例(N=56),無病変例(正常肛門,N=23),過伸展例(直腸脱,N=18)の症例を測定した.とくに伸展不良例を瘢痕性狭窄と筋緊張性狭窄とに分け検討すると,瘢痕性狭窄(内訳:慢性化裂肛18例・線維化した狭窄12例)(N=30)での肛門伸展張力は平均2.37kg,肛門直径は平均24.1mmと筋緊張性狭窄(N=26)でのそれぞれ4.35kg,28.0mmよりも有意に低値であった.本器は簡単でしかも客観的に肛門の伸展状態を測定できる有用な器械であると考えられた.【END】【引用文献】1) Gabriel WB : The principle and practice of Rectal Surgery. 5th ed. H.K. Lewis, London, 1948, p4262) Cho DY : Controlled lateral sphincterotomy for chronic anal fissure. Dis Colon Rectum 48 (5):1037-1041, 20053) 畑川幸生:裂肛治療におけるSSGの適応と肛門径測定の試み(会議録),日本大腸肛門病会誌 58(9):691,2005
著者
山崎 震一 山崎 健二 宮崎 高明 松岡 健司 丸山 寅巳 八木 禧徳 高桜 芳郎 伴野 昌厚
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-39, 1994 (Released:2009-06-05)
参考文献数
12
被引用文献数
6 3 10

注腸二重造影像に示された腸管に紙紐を使って盲腸,結腸の各部分,直腸の長さと内径を測定し,性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸下垂,S状結腸挙上,症状に対する統計学的分析を試みた.検査対象は男性120例,女性112例,平均年齢56.6歳であった.結果は大腸の長さは性と年齢に対して有意に関与するが,身長,体重,肥満度に対しては積極的関与はなかった.内径に対しては横行,S状結腸とも身長,体重に正の相関,年齢に負の相関があり,性差ではS状結腸の内径は女性の方が小であった.つぎに横行結腸下垂は性,年齢,身長,体重,肥満度,横行結腸大腸の長さに,S状結腸挙上は年齢,S状結腸,大腸の長さに,便秘は性,年齢身長,体重,横行結腸S状結腸大腸の長さに,便通異常は横行結腸大腸の長さに,出血は性に相関があり,腹痛はすべてに有為差を認めなかった.
著者
藤田 昌英 中野 陽典 太田 潤 熊西 康信 木本 安彦 大道 道大 薄金 眞雄 上田 進久 塚原 康生 藤原 彰 下妻 晃二郎 杉山 龍平 飯田 透志 梁 昌熙 稲葉 秀 奥山 也寸志 阪本 康夫 石井 泰介 田口 鐵男
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.187-192, 1986

わが国で大腸癌が急増しつつある現在,信頼性が高く,かつ検診効率のよい集団検診法の確立が急がれる.われわれは昭和52年以来試みてきた3種の検診結果に基づき,.昭和57年4月から2年間,地域団体,職域団体,個人の3グループの計12,520名に対し,グアヤックスライド(シオノギ)にて制限食下に3日間便潜血を調べる方法と問診とを併用した大腸癌集団検診を実施した。要精検は3,434名(27.4%)であり,その内訳は,便潜血が1枚以上陽性であった者2,602名,3親等以内の家族に大腸癌のみられたハイリスク者524名,大腸癌を疑う症状を訴えた者308名であった。要精検者の64.4%(2,214名)が直腸指診,直腸鏡検査をうけた.注腸X線検査は1,397名,大腸ファイバースコピ一は187名に実施した.728名は消化管に何らかの異常所見がみられ,大腸癌は18名(0.14%),カルチノイドは1名,大腸ポリープは303名にみられた.大腸癌18名中17名は便潜血陽性で,残る1名はハイリスクでスクリーニングされた.腫瘍の局在ではS状結腸が10名と多かった,Dukes Cの進行癌は3名にすぎず,Dukes Bは4名であり,早期癌は10名をかぞえた.この集検法は無症状のかなりの大集団に実施でき,大腸癌をより早期に発見しうる信頼度の高い方法であると考えられた.
著者
鳴海 裕行 今 充 阿保 優 高野 〓
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.275-280,365, 1973 (Released:2009-06-05)
参考文献数
17

肛門疾患に対する保存的療法の一つとして新しく開発されたゼロイドZeroidの臨床効果について検討する.これは長さ10cm,外径1.2cmのプラスチック製円筒状の器具で,中に冷却液が入っている.これを通常の冷蔵庫内で-4℃に凍結させ肛門部の局所的冷却を行なうものである.術前のもの30例,術後のもの20例,計50例に使用し,82.0%の症例に臨床症状の改善ないしは消失をみた.特に出血・疼痛に対して極めて有効であった.以上の詳細について述べるとともに,肛門疾患の保存的治療の一つとしてゼロイドは今後主要な地位を占めるものと予測するものである.
著者
中島 紳太郎 高尾 良彦 宇野 能子 藤田 明彦 諏訪 勝仁 岡本 友好 小川 雅彰 大塚 幸喜 柏木 秀幸 矢永 勝彦
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.414-422, 2011-06-01

症例は24歳女性でジェットスキーから転落し,外傷性ショックの状態で他院救急搬送となった.直腸膀胱腟壁損傷と診断され,損傷部の可及的な縫合閉鎖,ドレナージおよびS状結腸人工肛門造設術が施行された.膀胱機能は改善したものの括約筋断裂によって肛門機能は廃絶状態となり,受傷から3カ月後に当院紹介となった.排便造影で安静時に粘性造影剤の直腸内保持は不可能で完全便失禁であった.しかし恥骨直腸筋のわずかな動きと筋電図で断裂した括約筋の一部に収縮波を認めたため括約筋訓練を行った.2カ月後に最大随意圧の上昇を確認,また造影剤の直腸内保持が短時間ではあるが可能であり,恥骨直腸筋の収縮と超音波で断裂部の瘢痕組織への置換が確認された.受傷から6カ月後に瘢痕組織を用いた括約筋前方形成術,9カ月後に括約筋後方形成術と括約筋人工靭帯形成術を実施した.受傷から17カ月後に人工肛門を閉鎖し,便失禁もみられず経過は順調である. <br>
著者
鉢呂 芳一 國本 正雄 安部 達也 草野 真暢
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.317-321, 2006-06-01
被引用文献数
9 15

新しい内痔核硬化療法剤であるジオン注は,硫酸アルミニウムカリウムおよびタンニン酸を有効成分とする局所注射用配合剤で,現在手術療法に代わる内痔核根本治療薬として期待されている.当院では2005年4月より,内痔核症例を中心に200症例の肛門疾患に対しジオン注治療を施行した.合併症として1例にジオン注投与後に嵌頓痔核を発生し,結紮切除術を施行した.退院後の経過観察中8例に再発(脱出)を認め,3例においてすでに再ジオン注投与を施行した.ジオン注投与前後で肛門機能検査および肛門エコー検査を施行したが,肛門機能への影響は認めなかった.ジオン注治療では,脱出.出血による症状は投与直後より劇的に消失した.現時点における短期成績では,ジオン注硬化療法は十分満足できる結果であった.
著者
小西 尚巳 楠 正人
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.864-870, 2004-10-01
参考文献数
41
被引用文献数
4 3

家族性大腸腺腫症(FAP)は,常染色体優性遺伝疾患であり,若年から高率に大腸癌を発症するとともに,特徴的な大腸外病変を来たす.FAP家系のサーベイランスと予防的大腸切除術の普及により,大腸癌罹患率は減少し,死因に占める大腸癌の割合も減少してきている.反面,FAP患者の生存期間の延長とともに,大腸外病変の重要性が増加してきた.本稿では,デスモイド腫瘍に代表される腸管外病変について概説した.デスモイド腫瘍は,FAP患者の死因の第二位を占め,FAP患者の約10%に発症する.病因としては遺伝子的要因,手術,性ホルモンの関与が報告されている.腹壁のデスモイド腫瘍には切除術が第一選択とされるが,腹腔内のデスモイド腫瘍に対しては切除術よりも保存的治療が優先される.他の腸管外病変として,甲状腺腫瘍,網膜色素上皮肥大(CHRPE),肝芽腫,脳腫瘍などを取り上げ,若干の知見を紹介した.<BR>Familial adenomatous polyposis (FAP) is an autosomal, dominantly inherited disease predisposing to colon cancer. Surveillance of the pedigree and widespread use of prophylactic colectomy have resulted in a reduction in the incidence of colon cancer in FAP patients. Thus, a greater percentage of morbidity in FAP patients appears to be attributable to extracolonic manifestation of the disease. In this article, the characteristics of extra-intestinal manifestation, as represented by desmoid tumors, are reviewed. Desmoid disease is a second cause of death in FAP patients, and it is associated in approximately ten percent of cases. Trauma, sex steroids, and an inherited defect have been implicated in the etiology of desmoids. Surgery is accepted as the first-line treatment for abdominal wall desmoids, while intraabdominal desmoids should be treated medi-cally. We also reviewed extra-intestinal manifestations, such as thyroid tumors, congenital hypertrophy of retinal pigment epithelium (CHRPE), hepatoblastomas, and brain tumors.
著者
宮崎 道彦 黒水 丈次 豊原 敏光 竹尾 浩真 石橋 憲吾 皆川 紀剛 高野 正博
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.151-155, 2001-03
参考文献数
16
被引用文献数
2

平成4年12月から平成11年10月1日までに当院で手術を施行した「ホワイトヘッド肛門」16例の病態をretrospectiveに検討した.男女比は14:2,年齢は32~85歳(平均64.4歳).術前肛門管最大静止圧の平均値は60.8cmH<SUB>2</SUB>Oと低値であるが術前肛門管最大随意収縮圧の平均値は正常であった.観察期間は平均21カ月であった.年齢分布は60~69歳が最多で70~79歳がそれに続いて多かった.無症状期間は平均10.6年,病悩期間は平均26.6年であった.手術は16症例41病変に行った.そのうちわけはligation and excision,with sliding skin graft法(LE・SSG併用法)が21病変,ligation and excision法(LE法)10病変,sliding skin graft法(SSG法)4病変,McGivney rubber band ligation法(RBL法)6病変であった.術前症状としては出血,脱出,疼痛,分泌物付着の頻度が高かったがこれらの症状は手術治療により改善が認められた.しかし便失禁に関しては術後で症状の改善は認められなかった.
著者
千葉 満郎 鈴木 俊夫 長沼 裕子 正宗 研
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.235-242, 1991

薬物や抗生物質を投与せず,total parenteral nutrition(TPN),elemental diet (ED), home elemental enteral hyperalimentation (HEEH)の一連の栄養療法が極めて有効であった小児の重症Crohn病の1例を報告した.症例は14歳,女性.1989年6月,下痢,発熱,口腔内aphtha出現,7月末当科入院.身長161cm,体重39kg,ESR 1゜65mm,CRP 6.1mg/dl, Hb 7.4g/dl, albumin 2.9g/d1, IOIBD score 5.大腸X線・内視鏡検査では,不連続性に,結節の集簇,aphthoid様びらん,潰瘍などがみられた.上部消化管,小腸は正常であった.大腸Crohn病と診断しTPN(2100kcal/日)開始,10目後に自覚症状は全く消失した.その後ED(2100kcal/日),ついでHEEH(夜間 ED l500kca1/日)へ移行し,9.月27日退院(IOIBD score 1).その後もHEEH療法を継続,経過良好で,退院3カ月後のX線,内視鏡検査でも著明な改善がみられている.
著者
小澤 広太郎 金井 忠男 栗原 浩幸 山腰 英紀 石川 徹
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.293-296, 2002 (Released:2009-06-05)
参考文献数
8

酸化マグネシウムは副作用が比較的少なく安全な下剤であり,治療科目にとらわれず汎用される薬剤である.今回肛門狭窄を伴う便秘患者が酸化マグネシウムを大量服用することによって生じた直腸内巨大腸石症例を経験したので報告する.症例は69歳,女性.排便困難を主訴に来院した.肛門診察にて肛門狭窄を認めたため,10月8日入院し,肛門拡張術を施行した.退院後肛門指診にて,ざらざらした砂状の凝集塊と表面不整で非常に硬い腸石を認め,腹部X線を撮影したところ骨盤内に直径6cm大の腸石像を認めた.11月15日再入院し,直腸内腸石摘出術を行った.摘出標本は茶褐色で非常に硬く表面不整であった,腸石の成分は炭酸マグネシウムとして59.9%であり,酸化マグネシウムの大量常用による直腸内巨大腸石症と診断された.酸化マグネシウムは汎用される薬剤であるが安易に増量すべきでなく,他の薬剤を併用するなどの注意が必要と考えられた.