著者
坂井 康広
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.71-80,109, 2004-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本稿の目的は、電鉄会社あるいは電鉄会社の関連企業が設置経営した野球場が戦前期におけるわが国の野球界に占めた重要性を考察することである。電鉄会社が旅客誘致や住宅地開発の一環として沿線に野球場を設置したことは全国的にみられる傾向であった。公営の野球場がまだほとんど存在しなかった戦前において、中等学校優勝野球大会の地方大会の多くが学校のグラウンドを使用しているのに対して、スタンド設備も整った電鉄会社系野球場は野球界に先駆的存在であったといえよう。また、中等学校野球や少年野球などの野球大会は、電鉄会社にとって旅客収入を上げる優秀なアイテムであった。電鉄会社が野球場を所有していたということはプロ野球の誕生にも大きく貢献した。プロ野球結成当時、東京にはまだプロ野球が利用できる野球場がなかったのに対し、関西と名古屋に電鉄会社系野球場が存在していたことは特筆すべきことである。戦前期のプロ野球では公式戦の半数以上が電鉄会社系野球場で開催されたこともまたその重要性が伺える。