著者
坂井 教郎
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

亜熱帯島嶼条件下にある沖縄農業において経営間の連携を進めていくためには,耕地面積の約半数を占めておりながら,他部門との連携が非常に希薄なさとうきび経営の連携構築が必要である。本研究では,さとうきび作における連携の主体を借地型の大規模経営と想定し,それが零細さとうきび農家や園芸・畜産経営と連携していくための課題や条件について検討する。ここでは大規模さとうきび経営が,作業の受委託を媒介にして零細経営と連携するための条件を明らかにするために,佐敷町のさとうきび農家の収穫方法,収穫規模に関する個別データを用いて,収穫方法別の生産実績の推移,農家の性格の違いを分析し,同地域における収穫委託の特徴と位置づけを明らかにした。結果は次のとおりである。1.零細生産者と中規模以上の生産者では収穫委託の位置づけが異なる。収穫を委託する零細な生産者は全ての収穫を委託する傾向があり,中規模以上の生産者は可能な限り委託を減らし,手刈できない部分のみを委託する。2.収穫を全委託する零細生産者の多くは5年以内でさとうきび作を廃止しており,多くの小規模農家にとって,収穫委託はさとうきび廃止の契機となつている。一方,さとうきびを廃止する生産者は,(収穫委託を経ず)手刈から直接辞める人が大半である。つまり収穫作業の委託とは関係なくさとうきび作を廃止している。このように収穫の受委託の推進によるさとうきび生産者数の維持の効果は限定的である。3.今後,高齢世代のリタイヤによる生産者の急激な減少が予想されるなかで,さとうきびの生産量を確保しなければならない状況にある。このようなかで収穫の作業受委託が前向きな意義を持つのは,収穫量の一部を委託する中規模以上の生産者に対してである。