著者
横山 浩
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

家畜排泄物の処理、及び資源回収法として水素発酵が注目をされている。水素発酵には単離された水素生産菌を種菌として接種する純粋培養系と、堆肥や活性汚泥、嫌気性消化汚泥などを純化することなく種汚泥としてそれらに含まれている微生物群を利用する複合培養系がある。複合培養系では、原料の滅菌が不要である利点があり、家畜排泄物などを原料とした場合に適している。近年、分子生物学的手法による有力な菌叢解析法として、16SrDNA領域の多型を利用したDenaturing Gradient Gel Electrophoresis (DGGE)法が開発されている。本研究は、DGGE法による乳牛糞尿スラリーからの水素発酵に関与する微生物群の菌叢解析を実施して、その水素発生のメカニズム解明を検討する。60℃と75℃で嫌気培養した乳牛糞尿スラリーとコントロールとして、培養前のスラリーをDGGE解析の試料とした。その試料から16S rDNAのV3領域をGC-341Fと534RプライマーでPCR増幅した。そのPCR産物のDGGEで分離して、バンドに含まれているDNA配列を決定した。60℃発酵させたスラリーからは、Clostridium thermocellumやClostridium stereorariumに類似した細菌が検出された。これら細菌種は、高温水素発酵での種菌として使われる水素生産菌であることから、スラリーの60℃発酵における水素発生に関与する可能性が示唆された。また、75℃発酵させたスラリーからは、Caldanaerobaeter subterraneusに類似した細菌が検出された。C.subterraneusは、海底の熱水噴出口などの高度高温環境に生育する嫌気性高度好熱細菌であり、水素を発生することが知られている。従って、C.subterraneusに類似性を示す細菌がスラリーの75℃発酵における水素発生に関与する可能性が示唆された。本研究から、乳牛糞尿に水素を産生する有用細菌種が明らかとなった。家畜排泄物は発酵の汚泥として有用であり、また、微生物資源としても貴重であること考えられる。さらに、70℃以上に至適増殖温度を持つ嫌気性高度好熱細菌が家畜糞に含まれていることは想定されておらず、本研究結果は新規知見であると考えられる。
著者
福本 泰之
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

亜硝酸蓄積に起因する亜酸化窒素(N_2O)発生を抑制する亜硝酸酸化促進法の適応可能範囲を決定するため、ウシ、豚、鶏糞の堆肥化処理における窒素遷移と硝化細菌の動態を調査した。豚糞堆肥化では亜硝酸蓄積が生じ、亜硝酸酸化促進法によって効果的にN_2O発生量を削減できた。一方、牛糞では堆肥化の過程で完全な硝化が速やかに回復し、また、鶏糞では硝化作用自体が起こらず、そのため亜硝酸酸化促進法を適応してもこれらの家畜糞堆肥化ではN_2O抑制効果は小さいと考えられた。
著者
大倉 正敏
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

豚レンサ球菌は豚やヒトに重篤な疾病を引き起こす重要な人獣共通感染症起因菌であり、莢膜多糖の抗原性の違いにより30以上の多様な血清型に分類されている。本研究では現在、血清型別に使用されている全35血清型参照株の莢膜多糖合成に関わる遺伝子群[Capsular polysaccharide synthesis(cps)gene cluster]について比較・解析を行った。その結果、本菌の血清型は「cps gene clusterの交換による大規模な変異」及び「cps gene cluster内の少数の遺伝子の塩基配列置換や欠失・挿入などによる小規模な変異」の両方により多様性を創造していることが示唆された。さらに、解析により明らかとなった、複数血清型共通遺伝子及び血清型特異的遺伝子を利用し、2回のマルチプレックスPCRにより分離株の血清型を推定する型別法を開発した。
著者
西田 一也
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

当該年度は,全国スケールにおけるアブラハヤ・タカハヤのミトコンドリアDNA(mtDNA)Dloopの解析を行った.解析には33地点281個体の957bpを供した.ハプロタイプ(配列の種類)を基に系統樹を作成して,各地域で得られたハプロタイプ間の類縁関係を把握した.系統樹はまずタカハヤとアブラハヤに分かれ,両種間の平均塩基置換率は5.8%であった.タカハヤのハプロタイプは地理的にまとまったクレードを形成し,それらのクレード間の平均塩基置換率は1.1~2.4%であった.アブラハヤのハプロタイプにも地理的にまとまったクレードを形成するものが存在したが,なかには地理的にまとまらないハプロタイプもみられた.地理的にまとまったクレード間の平均塩基置換率は1.1~2.6%であった.仮に一般的な動物のミトコンドリアの進化速度とされる100万年当たり2%の塩基置換(Brown et al., 1979)を適用すると,アブラハヤとタカハヤはおよそ290万年前(鮮新世)に分化し,タカハヤとアブラハヤそれぞれのクレードはおよそ55~130万年前(更新世中期~前期)に分化したと推定された.関東地方で得られたタカハヤのハプロタイプは琵琶湖・淀川水系と同じクレードに属したことから,関東地方のタカハヤは同水系からの移植に由来する。と考えられた.また,アブラハヤについても,地理的に離れた東北地方と琵琶湖・淀川水系のハプロタイプが同じクレードに属したことから,同水系からの移植があった可能性も示唆された.なお,アブラハヤとタカハヤの共存水域で得たサンプリング個体の中には,ごく少数ではあるが,両種の交雑により生じたと考えられる個体が存在したことから,アブラハヤとタカハヤおよび交雑個体を簡便に判別する方法として,RAPD分析による両種および交雑個体の判別方法を開発した.
著者
江波戸 宗大
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.目的本研究では、畜種別にふん尿中に含まれる抗生物質の種類や量を把握し、堆肥化過程での抗生物質の消長、また抗生物質を含む堆肥が土壌に施用された場合の土壌への抗生物質残留性について明らかにする。今年度は、(1)畜種別の堆肥に含まれる抗生物質含量を測定した。また、(2)堆肥化過程での抗生物質の消長を調査するために、小型堆肥化装置で牛ふん尿を堆肥化し、抗生物質検定キットを用いて抗生物質含量を測定した。2.方法(1)牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、鶏ふん堆肥について抗生物質検定キットを用いて、抗生物質含量を測定した。(2)抗生物質の使用履歴がない肉牛より採取した牛ふん尿に麦藁を粉砕したものを水分調整の副資材として水分含量が70%程度になるように加え、市販されている小型堆肥化装置((株)富士平工業かぐやひめ)を用いて堆肥化した。この間、微生物による抗生物質生産の有無を調査するために、経時的にサンプルを採取し、抗生物質検定キットで抗生物質含量を測定した。3.結果(1)牛ふん堆肥からは抗生物質は検出されなかったが、同じ豚ふん堆肥および鶏ふん堆肥でも抗生物質が検出された場合と検出されなかった場合があり、定量的に抗生物質を測定するためには抽出方法を検討する必要があることが明らかになった。また、牛ふん堆肥で抗生物質が検出されなかったが、検出限界以下で含まれていることも想定できるため、抽出液の濃縮についても検討する必要があると考えられた。(2)小型堆肥化装置での発酵温度は外気温に大きく左右され、通常の堆肥化ほど温度が上昇せず、堆肥化条件としては検討の余地があったが、経時的にサンプルを採取し、抗生物質検定キットで抗生物質含量を測定した結果、抗生物質は検出されなかった。(1)の結果と同様に、この場合も検出限界以下である場合が想定されるため、抽出液の濃縮について検討する必要があると考えられた。
著者
中野 亮
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

モモ、クリ果実の主要害虫であるモモノゴマダラノメイガ(以下本種)において、オスが超音波からなる短いパルスと長いパルスを交尾に用いることを明らかにした。短いパルスは、食虫性のキクガシラコウモリが捕食時に発する超音波とパルス構造が極めて似ており、交尾の競合相手となる他個体のオスの接近を阻害した。また、短いパルスは多様なチョウ目害虫(アワノメイガ、ノシメマダラメイガ等)の飛翔をも効率よく抑制した。聴神経の電気生理実験の結果とあわせ、周波数40-60 kHz、パルス長20-30 ms、パルス間間隔(静音部)25-45 msの超音波が、チョウ目害虫の飛来を効果的に阻害することを突き止めた。
著者
永井 卓 KARJA Ni Wayan Kurniani
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

ブタ胚の効率的な体外生産では、体外成熟・受精卵子の胚盤胞期胚までの発生率およびその品質が極めて低いことが問題となっている。今回の研究課題によって、1)受精後二日間の培養液中へのグルコース添加によって、体外生産豚胚の発生率が低下する、2)培養液中にグルコースを添加した場合、受精後二日目の胚がグルタチオン濃度を対照区と同レベルに維持することが胚発生に有効であることが判明した。これにより、胚には活性酸素種を取り除こうとする機能が備わっているが、発生培養2日目までの培養液へのグルコースの添加は、3.5mMが上限であり、高濃度の添加は胚発生を促進しないことが明らかになった。また、発生培養液中へのDPIおよびDHEAの添加は、体外生産胚の胚盤胞期胚への発生を促進させなかったが、胚中のNADPH濃度が低下し胚が生産する活性酸素種のレベルが低下し、特に、DPIを1nM, DHEAを10および100μM添加した場合に、DPIおよびDHEAを添加しなかった対照区と比較して、得られた胚盤胞期胚の細胞数が有意に多くなり胚の品質が高くなった。従って、ブタ体外成熟・受精卵子を効率的に体外で発生させるには、発生培養2日までの発生培養液に添加するグルコースの濃度を3.5mMにおさえること、また、胚の品質を高めるには、胚発生を抑制する活性酸素種の発生を抑えるDPIおよびDHEAの添加が有効であるとことが判明した。
著者
岡田 和馬
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

リンゴ品種‘McIntosh’の枝変わりとして発見された‘Wijcik’は,節間が短く,側枝がほとんど発生しないため,細長い円柱状の樹形に生長する.この性質はカラムナー性と呼ばれ,単一の優性遺伝子Coに制御される.本研究では,高精度マッピングによりCo遺伝子と完全連鎖する3つのDNAマーカー(Mdo.chr10.12, 10.13, 10.14)を見出し,Mdo.chr10.12と10.14が信頼性の高いカラムナー性選抜マーカーとして利用できることを示した.また,Co遺伝子座乗領域をDNAマーカー11-1と14-3の間に絞り込み,Co遺伝子座乗領域に挿入変異が生じていることを明らかにした.
著者
森田 敏 野並 浩 和田 博史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日本型とインド型の多収品種の収量構成要素,乾物生産,光合成を比較解析するとともに,新たに考案した動的なメタボローム解析手法(炭素安定同位体解析とオービトラップ質量分析法とを組み合わせたブドウ糖のアイソトピック比の解析)により,茎の澱粉動態の品種間差を解析した.その結果,インド型品種の北陸193号が出穂後に茎から穂へ炭水化物が速やかに転流するのに対して,日本型品種モミロマンでは,出穂後も茎内の澱粉集積が継続しており,出穂後も茎がシンクとして機能していることが強く示唆された.以上のことから日本型多収品種では,茎での炭水化物の子実への分配遅れが収量制限要因になっている可能性が考えられた.
著者
林 茂彦 山本 聡史 手島 司
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イチゴの循環式移動栽培における効率的な栽培管理を目指し、非破壊非接触で群落の3次元情報、果実情報(数、大きさ)を推定し、栽培ベッド毎に個別管理可能な計測システムを開発した。各情報は、カラー画像と距離画像を組み合わせた画像処理アルゴリズムによって抽出を行った。イチゴ群落の3D再構築により任意の断面で草高や幅を推定でき、2.5ヶ月間経時的に計測した結果、推定値から経時変化の観察が可能であった。果実の情報に関しては、赤色果実同士の重なりを距離情報によって分離することで着果密度によらず約95%の精度で計数できた。さらに、果実の大きさを推定した結果、推定精度はRMSEP12%であった。
著者
森尾 昭文
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

色や食感などが現在主流の既存品種とは異なる特徴を持つ野菜新品種は、消費多様化に対応して開発されている。しかし、そのような野菜新品種は変わった特徴があるがために普及していない例が多い。そのような品種を普及させるために、農産物では不十分になりがちな販売促進を製品開発で補う方策を、ニッチマーケティングの視点から解明した。
著者
塚崎 光
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ネギとタマネギのゲノムシンテニーを利用した比較マッピングを行うために、タマネギにおいて11連鎖群からなる連鎖地図を構築した。地図上のマーカーの座乗染色体推定を通して、10連鎖群を8染色体に対応付け、染色体レベルではネギ連鎖群との矛盾は認められなかった。QTL解析により、葉身折径および抽苔株率に関するQTLは、対応するネギ連鎖群においても検出されていることから、両種に共通のQTLの存在が示唆された。また、球および葯の着色に関しては、Chr. 7上に主要なQTLが存在し、同領域に存在するアントシアニン合成に関与するDFRが原因遺伝子である可能性が強く示唆された。
著者
亀山 幸司
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

重金属汚染農地において栽培される農作物の重金属濃度を低く抑えるため,土壌から農作物への重金属の移行性を抑制することが重要である.バイオチャーは,重金属吸着能を有することが知られており,そのための資材として有望である.しかし,バイオチャーの理化学性は,原料等により異なる.そこで,原料の異なるバイオチャーのカドミウム汚染土壌への混入が農作物のカドミウム吸収に及ぼす影響について検討した.その結果,バイオチャー(特に,鶏糞を原料とするもの)をカドミウム汚染土壌に混入した場合,土壌のpH・リン酸含有量の増加によりカドミウムが不溶化し,農作物のカドミウム吸収が抑制されることが明らかとなった.
著者
グルゲ キールティ・シリ 山下 信義 秋庭 正人
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2014年にチェンナイより採集した河川水・底質試料について医薬品及び有害化学物質の分析を行った。先進国では過去50年以上にわたって汚染が進行している有機過フッ素化合物や有機シロキサンについては、インドの汚染は始まったばかりであることが柱状底質試料を用いた歴史的復元により明らかとなった。医薬品ではイブプロフェンの濃度が最も高く、薬剤耐性菌への関与が疑われるキノロン剤のオフロキサシン濃度が次いで高濃度であった。また、同じ底質試料の変異原性強度の空間的と鉛直分布を、コメットアッセイを用いて、多環芳香族炭化水素(PAHs)、およびそのハロゲン化物を指標として判定した。チェンナイ市・クーム川の底質は石油起源のPAHsによる高度な汚染が検証された。底質の変異原性の強さは、PAHsの汚染度に関連していた。また、4種類の下水汚泥の抽出物を雄性マウスに摂取させ、肝臓の遺伝子発現の変化をマイクロアレイ解析した。200以上の遺伝子について、それぞれの下水処理施設に特有な異なる誘導が見いだされ、排水の性質は排出元に大きく影響されることが示唆された。さらに、これまでに分離した446株の大腸菌のうち、セフォタキシムやイミペネムといった人の治療に汎用されるβ-ラクタム剤に耐性を示す169株(38%)の薬剤耐性因子等を詳細に解析した。12の抗菌剤に対する薬剤感受性を調べたところ2剤を除いて50%以上の耐性菌分布率を示した。また、全ての菌は3剤以上に耐性を示し、最も分布率が高かったのは10剤耐性菌(25%)であった。β-ラクタマーゼ遺伝子型別のうち、CTX-M型の分布率が66%と最も高く、次いでTEM、OXA、CIT型の分布率がそれぞれ約40%であった。無作為に選んだ36の環境水サンプルに由来する49プラスミドの全塩基配列を解読し、β-ラクタマーゼ遺伝子を含む各プラスミドの系統と薬剤耐性遺伝子の分布を明らかにした。
著者
佐藤 正寛 西尾 元秀
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

適切な制限付き選抜法を決めるため、まず選抜反応を予測するためのモンテカルロ法によるコンピュータシミュレーションプログラムを開発し、次に選抜候補個体の中から次世代の種畜を選抜するための制限付き選抜法のプログラムを開発した。両者のプログラムを組み合わせてすべての個体に制限を付加した制限付きBLUP法(AR-BLUP法)と選抜候補にのみ制限を付加したPR-BLUP法の選抜反応を比較した結果、PR-BLUP法は、選抜反応および近交係数の点でAR-BLUP法に比べ望ましい選抜結果の得られることが明らかとなった。さらに、制限付き選抜を行うための指標として、育種価の適切な重み付け値の算出方法を考案した。
著者
安藤 聡
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの全非必須遺伝子の破壊株セットおよび全必須遺伝子のmRNAを不安定化した株のセットを活用し、酸化ストレス耐性に関する全ゲノム網羅的表現型解析を行った。先行研究で同定した液胞酸性化関連遺伝子に加えて、RNAポリメラーゼやユビキチン・プロテアソーム系等に関連する遺伝子が酸化ストレス耐性において重要な役割を担っている可能性が示唆された。また、遺伝子過剰発現プラスミドライブラリを用いて遺伝子過剰発現株セットを構築し、酸化ストレス感受性あるいは耐性を示す過剰発現株のスクリーニングを行った。
著者
坂井 教郎
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

亜熱帯島嶼条件下にある沖縄農業において経営間の連携を進めていくためには,耕地面積の約半数を占めておりながら,他部門との連携が非常に希薄なさとうきび経営の連携構築が必要である。本研究では,さとうきび作における連携の主体を借地型の大規模経営と想定し,それが零細さとうきび農家や園芸・畜産経営と連携していくための課題や条件について検討する。ここでは大規模さとうきび経営が,作業の受委託を媒介にして零細経営と連携するための条件を明らかにするために,佐敷町のさとうきび農家の収穫方法,収穫規模に関する個別データを用いて,収穫方法別の生産実績の推移,農家の性格の違いを分析し,同地域における収穫委託の特徴と位置づけを明らかにした。結果は次のとおりである。1.零細生産者と中規模以上の生産者では収穫委託の位置づけが異なる。収穫を委託する零細な生産者は全ての収穫を委託する傾向があり,中規模以上の生産者は可能な限り委託を減らし,手刈できない部分のみを委託する。2.収穫を全委託する零細生産者の多くは5年以内でさとうきび作を廃止しており,多くの小規模農家にとって,収穫委託はさとうきび廃止の契機となつている。一方,さとうきびを廃止する生産者は,(収穫委託を経ず)手刈から直接辞める人が大半である。つまり収穫作業の委託とは関係なくさとうきび作を廃止している。このように収穫の受委託の推進によるさとうきび生産者数の維持の効果は限定的である。3.今後,高齢世代のリタイヤによる生産者の急激な減少が予想されるなかで,さとうきびの生産量を確保しなければならない状況にある。このようなかで収穫の作業受委託が前向きな意義を持つのは,収穫量の一部を委託する中規模以上の生産者に対してである。
著者
笹原 和哉
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

イタリアの稲作では平均的な農業経営(43ha規模)で費用合計が65円/kgである。圃場を平らにする手段をしろかきからレーザーレベラへ転換したことにより、圃場1筆の拡大が容易であること、第二次世界大戦後の農地解放がなかったことを背景として、大規模化と省力化が進んだ。大規模化以外に種子、肥料、農機具が日本国内より低価格なこと、高密度の直播栽培と管理法の省力化が低コスト化の要因である。なお、現地では高密度播種条件でも倒伏を生じていない。
著者
林 清忠
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LCA(ライフサイクルアセスメント)に基づく土地利用の影響評価手法を発展させるため、文献調査と現地調査により評価構造を明確化するとともに、土地利用および土地利用変化に関するモデル作成の際の留意点を明らかにした。また、収集したデータを加工することにより、これまでに開発したインベントリデータベースを拡張する形でデータベース化を行い、土地利用に関わる直接的・間接的影響を評価する方法論を検討した。以上を踏まえ、持続可能な食料・エネルギー生産システムがどのように設計できるかを考察した。
著者
後藤 一寿 井形 雅代 高橋 京子 井上 荘太朗 須田 文明
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

地域経済の成長と国民の健康福祉の向上を同時に実現する方策としては、健康や安全に資する先端科学バイオ技術開発と産業界・経済界への円滑な技術移転による新産業クラスターの創出が必要不可欠である。そこで、バイオ産業・企業と、機能性食品等の開発を行う食品産業・企業との融合による栄養・健康産業クラスターの構築に焦点を絞り、日本・ヨーロッパ・アジアの栄養・健康産業クラスター事例の発掘・評価ならびに国際比較を行った。その結果、オープンイノベーションの視点による研究開発支援の重要性や、機能性農産物、漢方・生薬の自給率向上による医療産業支援などの重要性が明らかとなった。