著者
坂井 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

中山間過疎地域の住民の高齢化に伴う作業の容易な転換作物、耕作放棄地への対策として大豆、ヒマワリ、エゴマ、ツバキ等の油料作物の栽培、搾油が試みられている。しかしながら地域住民などが少人数、小規模で活動している場合は、栽培はともかく搾油作業や採れた油の精製、品質管理に問題があり、製品油の成分分析などもほとんど行われていない。本研究は、このような村おこし活動としての小規模、萌芽的な植物油生産活動に関して、有機機器分析によるその製品油の分析を通して、それぞれの油種の特性を確認し、品種、栽培方法、搾油、精製条件等による差異について科学的なデータを提供する事を目的とした。分析は試料として、産地別にのエゴマ8種類(内、市販品1種類)、落花生油2種、ツバキ油(ヤブツバキ系8種類:内市販品4種類、ユキツバキ系:10種類)を用い、搾油法、精製法、保存期間の別に種々の分析を行った。その結果、構成脂肪酸分析(メチルエステル誘導体化法)では、県内産のエゴマ油は心疾患低減効果が謳われているω3脂肪酸であるα-リノレン酸が85%程度含まれ、中国産と思われる市販エゴマ油(80%)より高い価を示した。ツバキ油では本県特産のユキツバキから搾油した雪椿油にもヤブツバキ由来の市販椿油と同程度(80~85%)のオレイン酸(悪玉LDL低減作用)を含有することを確認し、地場産植物油の特性を科学的に確認することができた。この他に吸着剤による精製の有無によるビタミンE(トコフェロール類)の含有量の差異や、原料種子の保存期間、搾油後の保存期間による品質低下の有無について検討を続けている。
著者
坂井 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

新潟県特産ユキツバキ(Camellia rusticana)の資源としての可能性を検討するため、その種子オイルからの搾油、精製、構成脂肪酸、抗酸化性物質などの含有成分の分析を行い、"雪椿オイル"としての可能性を検証した。合わせて、ヤブツバキ(Camellia japonica L.)の成分検索の報告を参考にしながら搾油滓について、サポニン類等含有成分の検索、単離を行い、搾油滓の有効利用を検討した。原材料となる雪椿種子については、新潟県東蒲原郡阿賀町役場の協力により、同町鹿瀬地区の角神原生種雪椿園(面積約5,000m^2)から種子の採取を行った。その結果、ユキツバキ果実22.9Kg、同乾燥種子4.0Kgを得ることが出来た。この種子を圧搾法による搾油を行った所、粗油0.5Lを得ることができた。一方、採取ならびに搾油データを比較するため、本学五十嵐キャンパスに植栽されているヤブツバキからも同様に採取を行い、果実41.8Kg、同乾燥種子9.8Kgを得、これからヤブツバキ粗油2.6Lを得た。先行してこのヤブツバキ粗油を用いて種々精製方法を検討した結果、吸着剤(白土、シリカゲル等)を用いず、荒ろ過とメンブランフィルターを用いる精密ろ過により、粗油の香りやα-トコフェロール(ビタミンE)を損なうこと無く精製できることがわかった。この結果を雪椿粗油についても同様に適用して精製を行ない、成分分析、試供用サンプルに供した。分析の結果、雪椿精製油はヤブ椿由来の市販椿油と同等以上のオレイン酸を含有し、α-トコフェロールの存在も確認した。一方、雪椿搾油残渣3.43Kgについてはそのメタノール分画からサポニン類混合物130.9gを得ており、ODSカラムクロマト、HPLC分取によりこれまでに8種類の存在を確認した。現在も単離、同定を続けており、今後、生理活性等の試験に供する予定である。