著者
坂井田 麻祐子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.366-370, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
8
被引用文献数
5

ピーナッツなどの乾燥豆類による気道異物事故は,乳幼児に多く,毎年一定数起こっている。保護者への教育が肝要であるが,そもそも,保護者がどの程度気道異物の危険性を認識しているかを把握したいと考えた。2011年 6 月,ある幼稚園にて気道異物に関する講演会を行い,園児保護者46名に対し,気道異物に関する 7 項目のアンケートを実施し集計した。  保護者の65.9%が「気道異物」という言葉を知っており,65.2%が,乾燥豆類は気道異物の原因となり危険だと認識していた。しかし,危険性を認識していた保護者の50%,危険性を認識していなかった保護者の75%が,子供に乾燥豆類を与えていた。講演終了後は,ほとんどの保護者が,乾燥豆類を与えないようにすると回答した。  保護者への十分な教育によって気道異物事故が予防できる可能性がある。地域の耳鼻咽喉科医は,様々な形で乳幼児を持つ保護者に地道に啓発する責務があると考える。
著者
坂井田 麻祐子 莊司 邦夫
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.323-328, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
11

小児反復性中耳炎の治療法は,鼓膜換気チューブ挿入術,外来抗菌薬静注療法が一般的だが,近年,免疫力向上効果をもつ漢方薬,十全大補湯の有効性が報告されている。今回,小児反復性中耳炎例25例(平均月齢12.5カ月)に約 3 カ月間の十全大補湯内服を指示(0.15 g/kgBW/day)し,投与前後における急性中耳炎罹患頻度,重症度,鼻咽腔細菌検査結果について検討した。投与前の急性中耳炎罹患頻度(平均1.8回/月)と比較し,投与中,投与終了後は平均0.39回/月(p<0.0001)と有意に減少した。重症度は,投与前後で改善する例や不変例など,症例により異なる傾向を示した。鼻咽腔細菌検査結果は特に変化を認めなかった。PRSP の保有率は約75%であった。投与終了後再燃した 3 症例に再投与を行った。うち 2 例は再投与後の経過は良好であったが,1 例は再発を繰り返し,最終的に外来抗菌薬静注療法を選択した。
著者
坂井田 麻祐子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.26-31, 2019 (Released:2019-08-21)
参考文献数
8

三重県内の幼稚園・保育園の教諭や保護者を対象に,主に講演を通じて小児気道異物の啓発を行っている。継続的かつ効果的に啓発するため,2017年11月に啓発絵本「つぶっこちゃん」を作成した。絵本を用いた啓発の有効性を検証するため,三重県内国公立幼稚園で研究協力の得られた79園を対象とし,絵本を配布・閲覧後,園教諭に対してアンケート調査を実施した(回収率94.9%)。節分時の豆まき実施園は,絵本配布前85.3%,配布直後69.3%,翌年度以降の実施予定園42.7%,福豆摂取実施園は,絵本配布前52.0%,配布直後49.2%,翌年度以降17.3%と減少した。園児の食事や玩具類に関する指導・対策は,絵本配布後に実施園が増加した。保護者への啓発,教員間での研修に関しては,実施をしない園が減少する傾向が見られた。絵本は気道異物の怖さや予防の大切さを印象的に伝える,有効な啓発ツールであると考える。