著者
坂井田 麻祐子 莊司 邦夫
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.323-328, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
11

小児反復性中耳炎の治療法は,鼓膜換気チューブ挿入術,外来抗菌薬静注療法が一般的だが,近年,免疫力向上効果をもつ漢方薬,十全大補湯の有効性が報告されている。今回,小児反復性中耳炎例25例(平均月齢12.5カ月)に約 3 カ月間の十全大補湯内服を指示(0.15 g/kgBW/day)し,投与前後における急性中耳炎罹患頻度,重症度,鼻咽腔細菌検査結果について検討した。投与前の急性中耳炎罹患頻度(平均1.8回/月)と比較し,投与中,投与終了後は平均0.39回/月(p<0.0001)と有意に減少した。重症度は,投与前後で改善する例や不変例など,症例により異なる傾向を示した。鼻咽腔細菌検査結果は特に変化を認めなかった。PRSP の保有率は約75%であった。投与終了後再燃した 3 症例に再投与を行った。うち 2 例は再投与後の経過は良好であったが,1 例は再発を繰り返し,最終的に外来抗菌薬静注療法を選択した。