著者
坂岡 庸子
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-44, 2004-03

本論文は1999年の調査時点に米国軍人と国際結婚をしてハワイ州オアフ島に居住している日本人妻19人の生活史について分析したものである.調査対象者は1925年生まれから1973年生まれの女性でほぼ半世紀の時間差がある.居住先のハワイ州はわが国の移民史という視点からは,日系人独自の歴史を持つ地域である.また,米国軍人の国際結婚はいわゆる戦争花嫁として,移民で成立したアメリカ合衆国においても独自の地位を占めている.最初に米国も主としてハワイにおける日本人移民史と戦争花嫁法の成立経過を概観した.結婚という個人的な選択が国境を越えた行為となる時,その背景にある近代国家の国策史や社会史と個人史が関連して形成される独自の価値観が生成されるという仮説をたてて,戦前の教育を受けた層と戦後の教育を受けた層で,定位家族や夫婦・親子関係などに差があるという知見を得た.この仮説を一層精緻にするために必要とされる実証的な作業課題を含め,更なる研究課題を提示した.