著者
坂本 佑太朗 柴山 直
出版者
日本分類学会
雑誌
データ分析の理論と応用 (ISSN:21864195)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-45, 2017-03-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
37

テストが測定すべき心理学的な特性が多様化してくるにしたがって,「テスト(項目)はそもそも何を測っているのか」という構成概念に関する精緻な検証が求められている.最近では,その手段として多次元IRTが注目されてきており,これまでそれほど測定論的な関心が注がれてこなかったテストの下位領域についての定量的な検証の必要性も指摘されている.そこで本研究では,わが国の学習指導要領に則って作成された平成18年度新潟県全県学力調査における中学校2年生数学データ (N=9,102)に対して,多次元IRTを使って下位領域特有の影響について定量的に検証した例を示す.その結果,テスト全体が測定する「数学力」よりも下位領域特有の影響を強く受けている項目は25項目中2項目存在し,その内容は定性的な観点からも妥当であることが確認できた.つまり,多次元IRTを用いることにより,テスト項目の測定内容に関して項目レベルで次元に応じた情報が得られることを意味し,今後のテストデータ分析においても,単にIRTモデルを適用するだけではなく,多次元IRT分析にもとづくより精緻な妥当性検証が可能であることが示された.
著者
坂本 佑太朗
出版者
日本テスト学会
雑誌
日本テスト学会誌 (ISSN:18809618)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.95-109, 2023 (Released:2023-06-30)
参考文献数
34

本研究の目的は,学力テストに設定される下位領域に着目し,学力テストの結果をどのように捉え,それを活用していくことが望ましいかについての指針を得ることであった。実証的に検証するため,わが国におけるTIMSS2003中学校2年生理科データを用いて,下位領域に焦点を当てたマルチレベル分析を行いながら検討した。その結果,下位領域特有の学力に対する規定要因からの影響は限定的であった。このことから,当該テスト結果の解釈では一次元の学力の存在を前提に,それに加えて下位領域ごとの特徴を参考程度に参照することが心理測定学的に支持されることが明らかになった。本研究での結果は,心理測定技術と教育社会学的なアプローチをハイブリッドしてはじめて得られるものであり,下位領域が設定されるさまざまなテスト活用場面における検証アプローチとしての有効性を示し,本研究の意義として議論された。